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帰り道 皆での食事

 食堂では、デザートが届けられると、その見た目の美しさに見惚れる者がいる中、モンドとその妻は瑞希が作ったという事に期待感が上がり続けていた。

 モンドは早速大好物であるプリンに似ているというクレームブリュレから手を付けるが、表面の固さに驚いた。

 何度かコツコツと匙で叩くと、パリッと表面が割れ、中からはトロリとした柔らかな感触が手に伝わる。

 モンドは表面の硬質な膜と中のトロっとした部分を口に放り込み咀嚼すると、あまりの美味さに顔がにやけてしまうのであった――。


◇◇◇


 キアラは父親であるモンドに、デザートを届けた際に、自分達もこれから食事にすると伝えたので、今は厨房を離れ、別室にて厨房にいた全員で食卓を囲んでいた。

 

「お疲れさま~! 久々に活気のある厨房の仕事を楽しませて貰ったよ! 皆の食事を待たせて悪かった! じゃあ早速皆で食事を食べようか! 頂きます!」


「「「頂きまぁす!」」」


 各々の注文した料理とは別に、大皿に乗ったオムライスやハンバーグ等が積まれている。

 シャオ、チサ、クルル、キアラはミニオムライスセットという名の、お子様ランチを選択し、ドマル、ミミカ、アンナ、ジーニャ、サランはトルコライスを選択した。

 ミニオムライスセットとは名ばかりで、実際は瑞希がシャオに作ってあげたかったお子様ランチだ。

 お子様ランチには、オムライス、ナポリタン、エビフライ、ハンバーグ、サラダが一皿に乗っており、トルコライスにはカレーライス、トンカツ、ナポリタンが左から順に並んで乗っている。

 瑞希はお子様ランチという事で、ミニオムライスの頂点に楊枝に紙を旗の様に付けている。

 その旗には瑞希が手慰みで描いた本人達のデフォルメ絵がさらっと描いてある。


「待ちに待ったのじゃ~! ……くふふふ。この絵はわしなのじゃ?」


「……これはうち?」


「私なんな!」


「すっげ~! ちゃんと私ってわかるわ」


「お子様ランチと言えば旗付きのイメージがあるからな!」


「「ん?」」


 シャオ以外のお子様達は、瑞希の述べた料理名に疑問を浮かべる。

 厳密に言えばクルルはミミカと同い年に当たる十五歳なので成人を迎えているのだが、小柄なのと、瑞希の観点から言えばお子様なのだろう。

 シャオとチサはそういう料理名だと以前に聞いていたので疑問を持たずエクマフライとオムライスを口にしていた。


「卵がふわふわで美味いのじゃ!」


「……にへへ。エクマも美味しい」


「兄ちゃん、お子様ランチってどういう事だ? ミニおむらいすセットなんじゃないのか?」


「そんな名前のまま出したら誰も注文しないだろ? 量もトルコライスより少ないから女性向けにしたんだよ。でもその旗は付けてなかっただろ? お前等お子様には特別だぞ?」


 クルルは立ち上がり反論する。


「兄ちゃん! 少なくとも私はお子様じゃないぞ!?」


「一緒一緒! 俺の故郷じゃ成人は二十歳だったからな。その年まではお子様にしか見えないさ。それに可愛く描けてるだろ?」


「……それはそうだけどさ」


 クルルは自身の皿のオムライスに刺さっている旗を見て、毒気が抜けたのかストンと椅子に腰を下ろす。


「まぁ、冷めないうちに食えよ。オムライスは美味いんだぞ?」


「わかったよ!」


 クルルはそう言いながらオムライスに匙を突き刺し、口に運ぶ。


「うんめぇ~! やっぱりどんだけだよ兄ちゃん! あっ! はんばーぐも美味ぇ! シャオちゃんもすげぇな!」


「くふふふ。はんばーぐは偉大なのじゃ!」


 お子様達がお子様ランチを楽しんで食べている中、大人組もトルコライスを楽しんでいたが、ミミカだけは悔しそうにしていた。


「うぅ~……私もお子様ランチにすれば良かったぁ……」


 ミミカはどうやら料理の内容よりも、瑞希の手作りの旗に心惹かれている様だ。


「でもお嬢! このキアラちゃんが作ったかれーはやばいっすよ! めっちゃ美味いっす!」


「それにこのオークカツもミミカ様が好きな味ですよ絶対!」


 ミミカはジーニャとアンナに諭されながら、勧められた料理を口にして上機嫌になる。


「ミズキ、このとるこらいすはどういう料理なの?」


「お子様ランチもトルコライスも要は色んな料理の集合体なんだよ。お子様ランチは子供が好きな物を、トルコライスは米、トンカツ、麺料理が乗ってれば良いってぐらいで、どっちも店によって乗ってる物はバラバラなんだよ」


「へぇ〜……この細長い料理が麺料理? これはどうやって食べるの?」


「ナポリタンはフォークを刺して、くるくる巻いて食べれば食べやすいぞ? 麺料理ってこっちには無いのか?」


「どうなんだろ? ボアグリカ地方の方ではスープの中にカパ粉を練った物が入ってたりするけど、それとは全然違うしな~……」


 ドマルは考えながらナポリタンをフォークで回しながら絡め取り、口に運び咀嚼する。

 ポムの実好きのドマルが、ポムの実をたっぷり使ったケチャップの味に反応しないわけがなく……。


「美味しい~……これは前食べたぴざと並ぶよ! あ、もしかしてたばすこも合うんじゃない!?」


「そうだろそうだろ? もちろんタバスコも用意してるぞ! ちなみにこの料理を綺麗に食べれないとあぁなるからな?」


 瑞希はドマルにタバスコもどきを渡しながら、お子様達へ視線を促した。

 シャオやチサはもちろん、キアラやクルルも口の周りが黄色いケチャップの色をしていた。


「あははは。それは気を付けなきゃね」


「ミズキ! おかわりが欲しいのじゃ!」


「へいへい。とは言っても大皿から移すだけだぞ? ハンバーグは何個いる?」


「とりあえず二つ欲しいのじゃ! エクマふらいも欲しいのじゃ!」


「はいよ! タルタルソースはいるか?」


「勿論なのじゃ!」


 瑞希はシャオの皿にオムライス等を大皿から取り分け渡す。


「兄ちゃん! 私も!」


「私も食べるんな!」


「……うちも」


「おうおう。いっぱい食べて成長しろよお子様達」


「「「「お子様じゃない(のじゃ)(んな)(わ)!」」」」


 瑞希は笑いながらお子様達の皿に料理の盛り付けが終わると、さらさらっと紙に絵を描き、楊枝に付けると、ミミカの皿のオークカツに刺してやる。


「ミミカも欲しかったんだろ? ちゃんとチサにも謝ったしな。仲直りの印に……」


「え? え? 良いんですか!? ……でも何で怒り顔なんですかぁ!」


「わははは。ミミカは怒り顔のほうがらしいじゃねぇか?」


「もうっ! でもありがとうございます!」


「ミズキさん! うちも描いて欲しいっす!」


「わ、私も……その……」


「お前等はもう大人だろうに……ほら」


 瑞希はサラサラと書いて、二人に手渡す。


「おぉー! 凄いっすね!」


「ありがとうございます!(ふふふ。大事にしなきゃ……)」


「ミズキは絵まで描けるなんて器用だね」


「子供のお絵描きに毛が生えた程度だよ。それに飲食店で働いてる時にポップ……張り紙を作るのに描いてたしな」


 瑞希はそう言いながら食事を続ける。


「ミズキは自分の店はまだ持たないの? バラン様だって出資してくれるでしょ?」


「ん〜……やっぱまだ良いかな。シャオもこうやって人嫌いが薄れてきてるし、まだまだ色んな所に行ってみるよ」


「そっか。それにしてもなんだかだんだん賑やかになってくるね」


「シャオに友達が増えるなら良い事だ」


 瑞希達は歓談をしながら食事を進めて行き、食事が終わる頃に瑞希達がデザートを作りに厨房へ戻ると、モンド達が待ち構えており、デザートの追加を強請る。

 瑞希は想定内の事だったので、自分達の分のついでにモンド達の分も作り、最後に余ったチョコをシャオの魔法で冷やす。

 明日シャオに食べさせたらどんな顔をするか楽しみにしながら、瑞希の本日の調理は幕を閉じるのであった――。

 

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