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帰り道 タープル村

 瑞希達はペムイやトーチャ等の食材や、塩やジャル等の調味料、そしてチサという人材を乗せて馬車を走らせていた。

 その重さにドマルの愛馬であるボルボに負担がかかると思ったのだが、帰りはもう一頭のウェリーが一緒にいるので、ボルボの負担は軽かった。


「キュイキュイ」


「良かったねボルボ、恋人になるかもしれないね?」


「キュ、キュイ~」


「キュー!」


 前を見て走れと言わんばかりに、もう一頭のウェリーが一鳴きする。


「キュイ!」


「ボルボは尻に敷かれそうだけどな」


 御者台を覗いていた瑞希が二頭の光景を見て呟く。

 ボルボの横を走る一頭のウェリーはカエラに借り、ヤエハト村に走ってくれたウェリーである。

 瑞希達がマリジット地方から離れる日に、瑞希が城の厩舎にお別れを言いに会いに行くと、私も連れてけと言わんばかりに嘶き、瑞希の服を噛んで離さなかった。

 その状況を見たカエラが、大笑いしながら、瑞希へのプレゼントという事で一頭のウェリーを差し出してくれたのだ。


「モモ、あまり張り切り過ぎたら疲れるぞ?」


「キュー」


「モモは賢いのじゃ!」


 何故モモという名になったかと言うと、お尻の辺りに桃の様な形の痣があったので、カエラから名前はどうすると聞かれた瑞希がそのままモモという名前にした。

 懸念があるとすればシャオとの仲だったのだが、女の子同士シンパシーを感じるのか、モモはシャオにも良く懐いており、シャオもまた休憩の時にモモの背中に乗って休んだりしている内にモモの事が気に入ったのだ。


「あはは。ボルボもしっかりしなきゃね!」


「キュイ!」


「……ボルボも賢いなぁ」


「ボルボ君は男前ですよね!」


「そんな事言ったらモモもかわいいのじゃ!」


「(どっちもわからん……)」


 瑞希はウェリー論議に心の中で突っ込みを入れながら、帰り道に寄る予定であったタープル村に再び訪れた。

「やややっ! ミズキさん!? それにサランまで! どうしたんですか?」


 タープル村に到着し、ウェリーを宿に預けてから、サランの実家を目指し歩いていると、途中でサランの父親であるオラグに出会い、オラグは驚きながら瑞希達に近づいて来る。


「こんにちはオラグさん! 丁度今そちらにお伺いしようかと思ってたんですよ! シームカに合う食材を持って来ました!」


「シームカに!? ここで立ち話もなんですから我が家へどうぞ!」


 その言葉にシャオがげんなりとしている。


「……どないしたん?」


「サランの家には小童共が四人もおるのじゃ……」


「良いじゃねえか? 遊んでやれよ?」


「あやつらは魔法を見せろとうるさいのじゃ! チサが見せれば良いのじゃ!」


「……むぅ……まだ上手く使えへんのに……」


 ミーテルからタープル村への道中に、チサはシャオに魔法を教わりながら旅をしているのだが、何とかちょろちょろと水を出す事は出来る様になったのだが、まだまだ自衛手段や自在に使いこなせる訳ではなかった。


「わしは細かな詠唱までは覚えておらんからの。お主が水や土をどうしたいかというのを考えるのじゃ」


「……ミズキはどうしてるん?」


「ん~。魔法を使い始めた時にシャオからイメージが大切って言われたから、故郷にあった便利な道具なんかを想像してるな」


「……便利な道具」


「後は詠唱じゃなくても、言葉にするとイメージが固まりやすい気はするかな。例えば……」


 瑞希はシャオと手を繋ぎ、空いている手を指鉄砲の形に作り、空へ向ける。


「鉄砲!」


 指先集まった小さ目の水球が勢いよく空に放たれ、しばらくすると空から水球が落ちてきて、チサの頭を少し濡らす。


「……濡れた」


「これは俺の故郷に在った道具を想像したんだけど、勢いよく弾が飛び出す道具なんだよ。それを水球で想像したり……ドライヤー」


 瑞希の掌から温風が出始めると、そのままチサの髪の毛を乾かす。


「これも故郷に在った髪の毛を乾かす道具だな。でもまぁ俺は魔法使いから言わせるとめちゃくちゃな使い方してるみたいだから参考にしない方が良いぞ?」


「……難しい」


「それに俺にとっちゃ魔法はあれば助かるけど、無くて困るもんじゃないしな。テミルさんとかに聞いた方が分かるんじゃないか?」


「……誰それ?」


「ミミカっていう娘の魔法の師匠だよ」


「……でもうちはシャオやミズキみたいに魔法を使いたい」


「なら練習あるのみじゃな……ぬぬっ! ミズキ! 肩車するのじゃ!」


 シャオは慌ててミズキの背中をよじ登り、肩車の状態になると、サランの家から弟妹達が飛び出して来る。


「「「「シャオちゃーん!」」」」


「うるさいのじゃ! そんなに声を出さなくても聞こえとるのじゃ!」


「シャオちゃんあそぼー!」


「まずは魔法を見せて貰うんだろ!」


「違うよ! ミズキにアピーを剥いて貰うの!」


「なんか知らない人がいる」


 弟妹達はハイテンションで駆け寄って来ると、一人がチサに気付く。


「……チサ」


「チサちゃんだね! 一緒にあそぼー!」


「違うだろ! 魔法が先!」


「アピーが食べたい!」


「えっと……えっと……」


「貴方達少しは静かにしなさいっ!」


 サランが弟妹達を叱りつけると、チサはミズキの後ろに隠れる。


「「「「サラン姉ちゃんっ! 遊んでー!」」」」


「ちょ、貴方達っ!?」


「……よし! サランに任せよう!」


「それが良いのじゃ!」


「……サラン姉……ガンバ」


 ミズキ達はサランを置いて、オラグと共に家の中に入って行った――。

 瑞希はオラグに事情を説明し、ペムイの入った袋を渡す。


「これがペムイですか……これがシームカに合うんですか?」


「間違いなく合います! むしろ今日はそれが食べたくてシームカを分けて貰おうと思ってたんですよ!」


「ミズキさんがそこまで言うなら本当なんでしょうね。難しい料理ではないんですか?」


「シームカの白焼きは大丈夫ですよね? ペムイの炊き方とタレの作り方を覚えればすぐに食べれますよ! じゃあ今から作りましょうか!」


 瑞希はオラグとサランの母にペムイの炊き方を丁寧に教えていく。

「とまぁこんな感じです。ではペムイを炊いている間にシームカのタレを作りましょう! 用意するのはジャル、酒、砂糖です。まぁここが問題なんですよね……」


「さ、砂糖を使うんですか? それにこのジャルという調味料は?」


「そうなんですよ……ジャルはマリジット地方にある調味料で、この酒はさっきのペムイを使って作った酒です。甘めなので味醂代わりに使います。この二つはもう少し先にこの辺りでも買える様になるのですが……砂糖ですよね……」


「砂糖は高いからね~。うちでもそんなに使わないのよ」


「とりあえず、判断は食べてからお任せします! こちらではシームカは大量に取れますよね?」


「ええ、それはもう!」


「俺の故郷では逆にシームカが高級魚でしたので、今から作る料理も高くなっても食べたいという人がいるかもしれません。まずは作り方を教えます」


 瑞希は小鍋に砂糖と酒を入れシャオに頼んで火球を出して貰い、沸騰させる。


「この時にしっかりと加熱して、酒に含まれている酒精を飛ばしてください。酒精が飛んだらジャルを加えて煮詰めます……」


 小鍋の中でもくもくと泡が立つが、シャオに溢れないような火加減に調整してもらい、煮詰めていく。


「これで完成です。簡単でしょ?」


「あら~偉く簡単なんだね? その小さな壺に移す意味はあるのかい?」


「このタレは少なくなったら継ぎ足して貰うのですが、使い方に特徴があります。ペムイもそろそろ炊けますし、早速作りましょうか!」


 瑞希はオラグにシームカの白焼きを作る様にお願いするのであった――。

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[一言] 蒲焼きの香りを流すというえげつない暴力行為が行われようとしている。
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