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天ぷらと唐揚げ

 山から戻って来た瑞希達は籠に入れた物をチサとサランに見せる。


「……この葉っぱはスズの葉、こっちの茸はブマ茸……これは何?」


「あれ? これは食べないのか? 自然薯だと思うけど、芋の一種だよ」


「……知らん。どうやって食べるん?」


「今日はすり下ろしてとろろ汁にしよう。糠漬けにしても美味しいけど、まだ糠床が出来てないからな」


「……他の野菜はどうするん? そういえばこないだ教えて貰ったやり方で出汁をとったら美味しくなったで!」


「出汁があるのか……じゃあ野菜は天ぷらにしようか! スズの葉とブマ茸は軽く洗って、持ってきた荷物にカマチ(人参)マグム(さつまいも)があるからそれも天ぷらにしよう!」


「……天ぷら?」


「油で揚げるんだよ。シャオはこっちの自然薯を洗ってくれるか?」


「わかったのじゃ!」


 元気な返事を返したシャオだが、サランがこそこそと瑞希に話しかける。


「(シャオちゃんの目が赤いけどこけて泣いたりしたんですか?)」


「(大丈夫だよ。気付いてないふりしてやれ)」


 二人がこそこそと会話をしている近くで、チサは真っ向からシャオに声をかける。


「……シャオ。目が赤いで? 泣いたん?」


「な、泣いてなどおらんのじゃ!」


「……んふふ。そういう事にしとくわ」


「うぬぬ。ミズキ! 洗えたのじゃっ!」


 シャオは恥ずかしかったのか赤面しながら声を荒げて、瑞希に報告をする。


「お、おぅ。じゃあ次は皮を剥いてくれるか? 大きかったら先に切ってから剥いてくれ。ぬるぬるするから気をつけてな?」


 シャオは魔法を使い、スルスルと皮を剥いて行く。


「わしにかかればこんなもんじゃ!」


「シャオちゃんすごい! ミズキさんこっちの野菜も皮を剥きますか?」


「マグムはそのまま皮ごとで大丈夫だけど、少し大きいから一口大で厚い目に切ってくれ。カマチは皮を剥いてマグムと同じ様に切って行こう。チサがとった出汁は小鍋に移してジャル(醤油)と……甘目の酒はあるか?」


「……親父のペムイ酒ならあるで」


 チサは瓶に入った酒を瑞希に見せる。


「あぁ、やっぱりペムイの酒があるんだな! ちょっと味見を……おぉ! 美味いな! 日本酒よりかは少し甘めかな。じゃあこれも使って天つゆを作ろうか。小鍋に移した出汁にジャルと酒を入れて沸かしてアルコールを飛ばそう。味醂が無いからもし甘味が足したかったら少量の砂糖を入れても良いし、味が濃かったら水を足しても良い。シャオその芋は俺が引き継ぐからこっちの小鍋に火を点けて見ててくれ!」


「わかったのじゃ!」


 シャオは小鍋に火を点け沸騰するのを待つ。

 瑞希はシャオから受け取った芋をニードルタートルの甲羅を使って擦り下ろしていく。


「便利な甲羅ですよね~どこに売ってたんですか?」


「最初に寄った村で、ココナ村の雑貨屋にあったんだよ。武器にも防具にも出来ないって言ってたけど、調理器具には丁度良かったんだ! 粘りは自然薯並みに凄いな……出汁とジャルで伸ばしていくか……」


 瑞希は擦り終えた自然薯に出汁とジャルを加えて、練り混ぜて行く。


「良し。こんなもんかな。後は揚げ物つながりであの肉で唐揚げを作ろうか! オオグの実(にんにく)クルの根(生姜)、塩、胡椒でしっかりと揉んでから、酒とジャルで下味をつけて……」


 瑞希は切り分けた蛙肉をボウルに入れ、オオグの実とクルの根を擦りおろし、調味料と共に揉みながら混ぜ合わせて行く。


「……オオグの実って食べれるんや」


「私もそう思ってたけど、ミズキさんが料理すると美味しいんだよ!」


「このままじゃ匂いはきついけど、火を通せば良い香りになるんだよ! シャオ、天つゆは沸騰したら止めてくれて良いぞ。次は細かな氷を少しくれないか?」


 瑞希は新しいボウルを差し出し、シャオは魔法で氷を出す。


「これぐらいで良いのじゃ?」


「大丈夫だ! そしたら次はそっちの鉄鍋に油を半分ぐらいまで入れて中火で火を点けといてくれ! こっちのボウルにはここに卵と水を入れて、冷たい卵水を作ったらカパ粉を入れて軽く混ぜる……」


「全然混ざってないですけど良いんですか?」


「カパ粉は混ぜすぎると粘りが強くなるんだよ。その粘りが強い状態の衣を作ると歯切れが悪い不味い天ぷらになるから注意な」


「……こっちのお肉も同じ衣を使うん?」


「そっちは後でカパ粉と片栗粉を半々で混ぜた物をまぶすよ。片栗粉もちゃんと持って来てるしな!」


 瑞希はシャオが温めた油に、衣を少し垂らし温度を確認する。


「これは何をしてるんですか?」


「油の温度を確認してるんだよ。衣に使う液を垂らして底まで行ったら低すぎるし、沈まなかったら高すぎる。垂らしてから一度沈んで上がって来ると丁度良い温度だな! てわけで揚げて行こうか!」


 瑞希は水気が切れた野菜に打ち粉をして、衣を付け揚げて行く。


「一気に食材を入れすぎると油の温度が下がり過ぎるし、引っ付きもするから程々の量で揚げて行く。こういう葉っぱみたいな物を揚げる時は片面だけ衣を付けて揚げると重くならなくて良いんだ」


「衣を付けるのに先に粉を付ける意味があるんですか?」


「あぁ、打ち粉か? 衣が剥がれ難くなるんだよ。ただ、だまになると美味しくないから、打ち粉をしたらしっかりはたいて余計な粉は落とす事」


「……ただ揚げるだけやないんやな?」


「まぁ天ぷらは簡単そうに見えて難しいからな。でも、味は保証するよ……良し、野菜は揚げ終わったから次は唐揚げを揚げようか!」


「先に天ぷらから揚げたのは何故じゃ?」


「オオグの実とか、クルの根の香味が油に移るんだよ。今日の天ぷらは匂いが付く物は少ないだろ? だから先に天ぷらを揚げたんだ。唐揚げ用の粉を混ぜてっと……」


 瑞希はカパ粉と片栗粉を混ぜ、漬け込んでいた肉に粉を付けると再び揚げて行く。


「粉を混ぜる意味はあるんですか?」


「カパ粉はサクッとした食感で、片栗粉はカリッとした食感になる。これは好みだからどっちでも良いんだけど、今回は両方の中間の衣にしたんだよ! ……よし、こっちも出来た! シャオはさっき作った天つゆを深めの皿に人数分入れてくれるか?」


「これは飲むのじゃ?」


「天ぷらに付けて食べるんだよ! ついでにむかごも茹でとくか……シャオ、熱湯をこの小鍋に出してくれ」


「任せるのじゃ!」


 瑞希の差し出した小鍋に魔法で熱湯を入れ、シャオは深皿に天つゆを分け入れて行く。

 チサは用意しておいた、デエゴを短冊に切って出汁に入れて煮込んだ汁物を温め直し、瑞希に味見をしてもらうと、瑞希は親指を立ててチサに返答する。


「よっしゃ! じゃあ皆で居間に運ぼうか!」


 じゅうじゅうと小気味の良い音を立てる揚げ物を皿に盛り、カパを混ぜたペムイや皿等を全員で居間に運ぶ。

 居間にはチサの親父が座って待っており、いつもの風景とは全く違う豪華な食卓に驚きつつも、ごくりと唾を飲み込むのであった――。

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