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シャオとの散策

 ヤエハト村に到着した瑞希とシャオはチサの家に到着すると、二人の父娘とサランに出迎えられる。

 親父は瑞希と別れてからも糠を薬代わりに飲んでおり、体が徐々に楽になって来たらしい。

 瑞希はカパの入った袋を下ろすと、チサに説明をする。


「とりあえず糠漬けが出来るまでは、麦飯ならぬカパペムイにして食べて行こう。チサ、ペムイに対して三割ぐらいのカパを混ぜて炊いてくれるか? いきなり大量にカパを入れても美味しくないからな」


「……分かった。ミズキ、糠床を見て欲しい」


「どれどれ……」


 チサに差し出された糠床を混ぜながら、瑞希は糠を口に入れる。


「あれ? 予想以上に発酵が早いのか?」


「……失敗したん?」


「いや、大丈夫だ。ただ、成分が全く同じわけじゃないからな、中の野菜くずを取り換えて行こう」


「……野菜くずは貯めといたで」


「よしよし。そういやこの辺りは野菜は色々育ててるのか?」


「……基本的にはそうや。後は山に生えてるのを取ってきたりする」


「へぇ~……シャオ、後で山に行って野菜を取りに行こうか?」


「行くのじゃ! 瑞希に美味しく料理して欲しいのじゃ!」


「……うちも行きたい……けど、ペムイ用意しとく」


「サランはどうする?」


「私もチサちゃんをお手伝いしときます!」


「じゃあカパも下ろし終わったし、夕飯までに早速食材を探しに行こうか!」


「わぁいなのじゃ!」


「あっ、オカズは帰って来てからすぐ作るから待っててくれ!」


「……待ってる」


 瑞希とシャオは早速山へと食材調達に向かう。


「何の食材が必要なのじゃ?」


「こっちの麦……カパを直接食べた訳じゃないだろ? もしかしたらぼそぼそしてたりしてて食べにくいかもしれないから山芋とか生えてないかと思ってさ」


「山芋なのじゃ? どんな奴なのじゃ?」


「ん~……土に埋まってるのは当然だけど、グムグムとかと違って生でも食べれるのが特徴だな……おっこの葉っぱは食べれるかな……」


 瑞希は葉をもいで軽く叩き香りを確かめる。


「おぉっ! シャオ! この葉っぱは食べても大丈夫か!?」


「問題ないのじゃ。知ってる食材なのじゃ?」


「紫蘇の香りに似てるな! 主役にはなれない食材だけど、天ぷらにしたら美味いんだ。おろしハンバーグにも良く使うしな!」


「最近ハンバーグを食べてないのじゃ! 早く作るのじゃ!」


「箸が使える様になるまでは我慢我慢。こっちに滞在してる間に頑張ろうな!」


「ぐぬぬぬぬ……。ミズキ、後ろの木の実は食べれるのじゃ」


「木の実?」


 瑞希はシャオの言葉を聞き、上を見上げながら木に生ってそうな実を探すが見当たらない。


「違うのじゃ! その幹に生えてるやつなのじゃ!」


「幹に木の実が生えるか……?」


 シャオは瑞希を通り越して、木の幹に巻き付く蔓に生っている実を取る。


「これなのじゃ。茹でるとホクホクして美味いのじゃ!」


「おまっ! これは木の実じゃなくてむかごだよ! 良く知ってたな?」


「昔世話になった奴に教えて貰ったのじゃよ」


 瑞希はむかごを手に取り食べてみる。

 シャクシャクとした食感に合わせ、ねっとりとした食感も感じられる。


「よしよし。じゃあ土を掘るぞ!」


「土の中に何があるのじゃ?」


「自然薯だよ! 同じ様な形をしてるか分からないから、魔法を使いながら優しく掘って行くぞ」


 瑞希が蔦を辿り、その場にしゃがみ込むとシャオが瑞希におぶさりながら肩越しに眺める。

 瑞希は土に手を置き、土が柔らかくなるようなイメージをしながらゆっくりと土に穴を空けて行く。


「おぉ、大きいのが出て来たのじゃ!」


「俺の知ってるのとは形が少し違うな……」


 瑞希はラグビーボールの様な形をした自然薯もどきを掘り出すと、持って来ていた籠に入れる。


「どうだ? 毒とかは無さそうか?」


「特に問題は無いのじゃ。これは美味いのじゃ?」


「ん~……これだけじゃ食べ辛いけど、チサの家にはジャルを始めとした調味料もあるし、すり下ろして食べると麦飯もするすると喉を通るな! それにこれもヤエハト村には必要な栄養が豊富だし、俺の故郷でも滋養強壮効果のある食材だったぞ!」


「じようきょうそう?」


「まぁ体力をつけたり、体にいい食材だよ! シャオがむかごを食べてたのも何かの縁だな。むかごも少し取って行こうか」


 瑞希が蔦に生っているむかごを捥いでいると、シャオが瑞希に話しかける。


「……これを食べれば病も治ったのじゃ?」


「どうだろうな? どういう理由で病になったのかにもよるし、生き物は遅かれ早かれ必ず死んじまうしな……」


「そうなのじゃな……」


「でもな、死んだからって終わりじゃないだろ? シャオがむかごの事を知ってた様に、ヤエハト村がペムイを育てた様に、知識は繋がって行くだろ? それに俺の故郷じゃ輪廻転生もあるって話だしな」


「りんねてんせいとは何じゃ?」


「この世で死んだとしても、別の何かで生まれ変わるんだよ。良い事をしてれば良い世界に生まれ変わるし、悪い事をしていれば悪い世界に生まれ変わるって話だ。だからシャオがお世話になった人もどこかで生まれ変わって元気にしてるんじゃないか?」


「そんな事本当にあるのじゃ?」


「その証拠が目の前にいるじゃねぇか? 俺は故郷では死んだけど、女神様の計らいで今ここで生きてる。善行をしたのかは分からないけど、悪行してきた訳でもない。シャオが好きになったって人なら良い人なんだろ? それならきっと何かに生まれ変わって元気にしてるさ」


「優しくて良い奴じゃったのじゃ! 手が温かくてじゃな……魔法を誇れと……言うておったのじゃ……」


 シャオは徐々に思い出して来たのか、言葉尻が重くなっていく。


「シャオが最後を看取ったんだろ? じゃあその人は幸せに亡くなれたんだな」


「幸せじゃったのじゃろうか……わしが居るせいで他の奴等から嫌な目に遭ってたのじゃ」


「知らない奴から嫌な事をされるより、好きな奴が目の前で喜んでくれる方が幸せだろ? シャオはどうだ? 知らない奴が馬鹿にして来るけど、家に帰れば俺がシャオに対して喜んでるか、どちらも無いかどっちが嬉しい?」


「ミズキが喜んでくれる方が嬉しいのじゃ!」


「じゃあその人もそうだったんじゃないか? その人はシャオに対して嬉しいとか幸せだとか言ってなかったのか?」


「わしが喜んでくれると嬉しいって言ってたのじゃ……」


「だろ? 俺もシャオが喜んでくれると嬉しいよ」


「お爺さんに手を差し出されてわしも嬉しかったのじゃ……」


「そのお爺さんもシャオと一緒に居れて嬉しかったはずだよ」


 瑞希がしゃがみ込みシャオの頭を撫でると、瑞希に抱き着き泣き喚く。


「寂しかったのじゃ! お爺さんが死んでしまって一人になって……寂しかったのじゃあ! うわぁぁん!」


 瑞希はシャオを抱きしめながらポンポンと背中を叩く。


「そうだよな……。急にいなくなると寂しいよな……」


「……ひっく……ミズキも居なくなるのじゃ?」


「俺は人だからな。遅かれ早かれいつかは死ぬよ。その時はシャオにお疲れ様って言われたいな」


「……ひっく……嫌なのじゃ……」


「俺はさ、俺の知識やシャオに手伝って貰って助けられる人は助けたいんだ。そうやって喜んでくれる人が多ければ俺も幸せなんじゃないかな? 俺は頑張って生きたぞ! って思ってくれる人にお疲れ様って言って欲しいんだよ。それはシャオにしか頼めないだろ?」


「死んでほしくないのじゃ……」


「生まれ変わるだけだ。またいつかシャオに会える。もしかしたら俺は昔シャオに会ってたかもしれないだろ? シャオも生まれ変わって今生きていて、俺に再び出会えたのかもしれない。そうやって巡り巡って今があるんだ」


「また会えるのじゃ?」


「きっと会える。お爺さんにもまたいつか会えるさ」


「くふふ。それは楽しみじゃ!」


「だろ? だからたまに思い出して、懐かしむと良いさ。シャオは優しい子だから忘れないだろ?」


「くふふふふ。お爺さんにもそう言われたのじゃ! ミズキはどこかお爺さんと似ているのじゃ!」


「わはは。俺もそのお爺さんに会ってみたかったな~! どんな人だったんだ?」


「お爺さんはじゃな……」


 シャオが思い出し泣いてしまった記憶は色あせずに心に残っている。

 それは確かに当時に在った嫌な思い出より鮮明に思い出せる記憶だ。

 シャオは瑞希と過ごす日々を楽しみ、瑞希と共に生きて行こうと心に誓うのであった――。

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