月夜の支度
これは要る、これは要らない、いる、いらない、いる、いらない…。溢れる荷物を次から次へ取捨選択して大きなリュックサックの中へ。ああ、夜明けだ。静寂と暗闇に支配された部屋の窓は左端から淡い光を映している。
もう行かなければ。リュックサックを背負うとずしり紐が肩に食い込む。捨てられないものが多すぎた。こんな姿をみたらあいつらは俺を笑うだろうか。耳をすますと、どこか遠くから人間の唸り声が聞こえる。時間だ。
約束の場所にいる何人かの仲間は、やはり俺を笑った。俺はいつも人間を食べるまでの一連の作業に十分な準備と時間を費やす。その為の道具はどれだけあっても足らない。人間が動物を食すように俺たちも人間を食している。
今宵は月灯の晩餐会。日は沈みどこまで遠くに歩いてきたのだろうか。重い荷物が俺を蝕み体はもう動かない。あれは要る、それは要らない。仲間の叫びと満月の審判者の声がする。いる、いらない、いる…次は俺の番だ。