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特別編 ♨ バレンタインデーの神田旅館 ♨

バレンタイン特別編です!

2月14日 バレンタイン



――放課後――



「ただいまー。」

「お帰りなさい。 ひなのさん!」




勇と玲奈が入居する前の神田旅館は、穏やかな日常が続いていた。



しかし、今日はバレンタイン。大抵の女子たちは好きな男子に告白する。また、友達にチョコをプレゼントする日である。

そんなこともあってか神田旅館の近くにある温泉街はいつもより、にぎわいを見せていた。 



「ひなのさん、これからのご予定は?」

「みゃーは特にないよ。今日はバレンタインだけど気になる男子もいないからね~」



ひなのは、これまで男子が気になることはなかった。仲良しな男子もいない。

部活にも入ってないので、男子と喋る機会も少なかった。本人はそのことに関しては気にしてはいない。



「ミナちゃんは?」

「そうですね、私はチョコをプレゼントしてきます。」

「好きな男の子かな? 青春してるねー 」

「いえいえ! 男の子では無く、女の子の友達です!いつも仲良くしてもらってるので。」



女の子の友達。バレンタインというのは友達にもあげてもいい。ひなのは学校の女子友達にプレゼントするのを忘れていたことに気づく。



「そっか。男子だけとは限らないもんね。でも、みゃーは学校の友達と神田旅館のみんなにプレゼントしてない!」

「今から作るのは時間的に厳しいと思うので、既製品とかでもいいのではないですか?」

「まあ、そうだよね。ありがとミナちゃん。そういえば夏鈴は?」

「夏鈴さんなら、たぶん自分の部屋にいると思いますけど……」



バレンタインは夏鈴くらいの可愛い女子なら告白すれば、ほとんどはOKしてくれるだろう。しかし、夏鈴はバレンタインというのは一番好きではない日であった。

そう、夏鈴は極度の男嫌い。男子となるべく関わりたくないのだ。

そのことを忘れずにひなのは夏鈴の部屋のドアをノックする。



「夏鈴、部屋入っていい?」



すると、すぐにドアが開いた。



「どうしたの? 今日は特に用事無いんだ。」

「うん、まぁ……」



なるべくバレンタインというワードを使わないように気を付ける。

夏鈴の機嫌を損ねないように。



夏鈴の部屋はきれいに整理されてある。特に目立つのが、大きな本棚。ここに子供の頃読むような本から難しい言葉で書かれた本などがズラリと並んでいる。

アイドル時代のときのノートなども並んでいる。

部屋の真ん中に、一般の旅館とかに置かれている机があるのだが、ひなのはそれに注目していた。



机には、『バレンタイン』という本と、ハート形のチョコの入れ物が置いてあった。



「夏鈴、これは? もしかして好きな男子でも……」

「出来ないって、私の男嫌いを克服するのはそうとう難しいかな。世の中そんなに優しい男子いないって思ってるから。」



夏鈴は表情一つ変えることなく、バレンタインという日が来ても、男が嫌いだということを改めて伝える。



「でも、なんでここにバレンタインに関係するものが?」

「このチョコレートはひなのとミナちゃん、ミナちゃんのお姉さんにあげるもの。この本は、好きな人ができた時の……」

「なるほどね、でもさっき男が嫌いだって改めて、みゃーに教えてくれなかった?」



ひなのが、夏鈴が言っていたことに矛盾を発見して、問い詰める。夏鈴はむすっとした表情を見せた。



「もうわかったから! ちゃんと教えるから。」



夏鈴がバレンタインという本を持っていたというのは、学校の友達に勧められたそうだ。

突然、好きな人ができた時に対応できないよ、と。その意見に賛成した夏鈴はこの本を買ったそうだ。



「私だって、男嫌いとは言っても、お菓子作りとか嫌いなわけじゃないから、まずはチョコの作り方を学ぶことにした。」

「夏鈴お菓子作りに興味あるの? だったらみゃーと作ろうよ!」

「え? 今から?」



急な展開で、夏鈴は動揺を隠せない。ひなのは自分が結構無茶なことを言っているとは自覚があるが、夏鈴が料理している所をどうしても見てみたかったのだ。



「ほら、料理は気持ちが大切だってよく言うじゃん? だから今から作ろ。時間は関係無いよ。」

「そうだけど……」

「二人で作って、また作ろうねーみたいな感じにしたいからさ。」

「そうだね。バレンタインの思い出になりそう。」




それから二人は思考錯誤した末、チョコが完成したのであった。

二人が作ったチョコは初めてとは思えないほどの出来栄えで、形もハート形に整っていた。


「では、いただきます。」

「いただきまーす!」



そういって、自分で作ったチョコをそれぞれの口の中に入れる。


「「おいしい!」」


確かにチョコは甘くておいしいのが、当たり前かもしれないが、自分で作ったということで何倍にもおいしさが増すのだ。



「また作りたいな、チョコ。」

「いつでも作れるよ、チョコは。」

「いや、みゃーが言いたいのはお互い、来年のバレンタインで好きな人に渡せるようなチョコを作りたいってこと。」

「そうだね。」



夏鈴は少し複雑な思いがあったので、何も言わない。それは好きな人がこれからできるかどうか。



「好きな人か……」


無意識に夏鈴が心で思っていたことを口にだしてしまう。


「ん?」

「いや、なんでもない。」

「ちょ、みゃーに隠し事しないでよー!」



二人で作ったチョコはとってもいいバレンタインの思い出になるのであった。


そして、この日の約2ヶ月後、勇と玲奈が入居してくることをまだ誰も知らない。


今日はバレンタインです! 皆さんはチョコもらえましたか?

今回の話は特別編だけでは終わらせず、本編にも少し関係してくるようにしたいと思い作成しました。

次話もよろしくお願いします。


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