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第09話 ♨ 感謝の気持ち ♨


正直、玲奈が高校についてくるというのは不安だ。優しいひなのでさえも困ったような顔をしている。



「明日は、ちょっと難しいかもな。」

「なんでよぉ、勇にぃ……」



悲しそうな顔でこちらを見つめる玲奈。明日はそれぞれの自己紹介があるので、勇としては何事もなくやり遂げたいのだろう。



「明日は大事な自己紹介があるんだ。もし玲奈の念力とかが暴走したら、ちょっと印象が悪くなるだろ?」

「そうだけど……」


遠まわしに明日は高校に行くのを控えてほしいと言われているので、言葉が出てこず、落ち込む玲奈。



「そ、そんなに落ち込むなって、明日がダメなだけで、明後日はダメとは言ってないからな!」


慌ててフォローする勇。妹にそんな感情を持ってほしくないと思っているからだろう。



「ほんとに!? 明後日絶対行くからね! 約束だよ」



玲奈は少しずつ表情が失われていっていたが、勇と明後日の約束をし、花が咲いたようにいきなり笑顔になった。

勇は玲奈がこの部屋に入ってきたときから気になっているものがあった。



玲奈が先ほど夏鈴からもらった服である。



「さっきから気になってたけど、手にもっている服はなんだ?」

「え? あ……その、まぁ貰いものだよ」



玲奈は一瞬キョトンとして手元を確認すると夏鈴からもらった服が、あったことに気づき、後ろに隠すももう遅い。

しかし、ここで黙ってしまうと何かあったのではないかと疑われてしまう、なので適当にごまかしといた。



「誰から?」



誰からなのかそれは当然気になる。勇もその一人だったので、玲奈に質問する。

少しの間ためらったが、夏鈴との約束があるので素早く答える。


「夏鈴さん! 昔使ってた衣装をくれたの。」



勇は夏鈴という言葉を聞いて不安な表情を浮かべたものの、そういうことかと変に納得してその先は何も言わなかった。



「そうだよね、確かに玲奈ちゃんずっと同じもの着てたから、着替えたいもんね。」

「でも幽霊って着替えることできるのか?」

「たぶんそのまま着替えればいいんじゃないかな、人間と一緒で。」



すると、玲奈は自分が来ている浴衣が脱げるか確認し始めた。



「うーん、確かに脱げるねこれ。」

「お、おい玲奈?」


急に確認したので何をしだすのかと目を丸くする勇。



「あ、ゴメン、あとで着替えるね。」

「マジで気づいてなかったのか……」

「じゃ、またあとで!」



そういうと玲奈は服を持って部屋から出ていった。



玲奈が出ていったあと二人は明日の自己紹介に向けて考えていた。



「明日ホントにどうしようかなー」

「え? みゃーは何も心配することないと思うけど?」

「ほら住んでるところはって、聞かれるかもしれないだろ。ちょっとややこしくなるかな、なんて思って。」

「ああ、さっきも言ってたことね。確かにみゃーと勇は付き合ってるわけでもないからね。」



むーと高い声を無意識に出して、一生懸命考えるひなの。

すると勇は何を悩んでたんだという感じで、ある1つの解決策を思いつく。



「でも、よくよく考えてみたら旅館に住んでるってことにすればいいんじゃないかな。」

「それはちょっと良くないかもね、何か深い事情があるのかなって思われちゃうし、みゃーは良いにしても夏鈴や、ミナちゃんに迷惑かけちゃうからね。」

「赤月はわかるにしても、眠木、はどうして?」


ひなのはミナの事情について教えてくれた。ミナは中学生の友達には普通の家に住んでいるということになっているらしい。

たまに旅館に用事があるから行くという程度の説明しかしておらず、友達は女将をしていることなんて知るはずもない。



神ヶ崎高校の中にミナと同級生の姉か兄がいるかもしれないということだ。

夏鈴は有名人なので、住んでいるところを知られたら、かなりまずい。



「なら、神田旅館の近くに住んでますってことでどうかな?」

「ああ、いいんじゃない、みゃーもそれだったら誰にも迷惑をかけないと思う。」



その後、好きなことがどんなことなのかなど、自分たちで考え、明日の宿題と言えるものは終わる。

ひなのが好きなものはボードゲームと水泳、卓球だということがわかり、ひなのは自分の部屋から持ってきたボードゲームで遊ぼうと誘ってきた。

さっきもトランプをやっていたが、確かにひなのは強かった。



「夕飯まで、時間あるからボードゲームやろうよ」

「いいけど、俺は家族で人生ゲームくらいしかやったことないよ。」

「2人だと、人生ゲームはできないから、オセロでもやろっか。」

「あ、それなら俺もできる。」



そういって結構お値段のするような見た目のオセロを箱から取り出し、準備を始める。



「勇はどっちがいい? 黒か白。」

「うーん、白でいいかな。」

「OK、じゃあ、みゃーが先攻ね。」



ただ色を選ばせただけじゃなかったのか、と動揺してひなのを見つめる勇。



「オセロって黒が先攻なんだよ。もしかして勇知らなかった?」

「うん、家族でやる時はじゃんけんで決めてたかな。」



どことなく懐かしい思い出に浸っているような勇。ひなのはその光景を見て、勇が今家族といっていたのを思い出す。

余計なこと聞いたかな――そう思ったが、口には出さず心にしまい込んだ。



最初の状態から黒のコマがボードに置かれる。ゲームスタート。

そんなにガチな戦いではなく、雑談も交えながらやっていく。



「宮日はさぁ、バイトとかする予定ある?」

「みゃーはしないつもりだよ。だってせっかくの高校生活が無駄になっちゃう。」

「そっか。」



勇もバイトをしないつもりだったので、謎に安心する。と同時に白いコマを置き、間の黒いコマをひっくり返す。



「今日、宮日は男子からの視線気づいた? かなり人気だったような……」



割と気になっていた質問。男子から好かれるような女子は実際どう思っているのか。

ひなのは、ためらうこともなくすぐに答えた。



「まぁ、気づいてたけど、みゃーは興味ないね。」

「もし告白されたりしたら……」

「返事は絶対NOだよ。もし面倒なことになったら、ね。」



そう言って勇を見つめる。最初は意味が分からなかったが、面倒になったら自分を巻き込むことがわかり、動揺する。



「かなり焦ってるよ、そんなことないと思うから大丈夫だよー」

「だといいけどね…… 嘘の恋人はちょっと……」



もし本当になってしまったらと考えて曖昧な返事しかしなかった勇であった。

その時の2人はこの後、自分たちがたてたフラグを回収しなければいけなくなるのであったが、それを知るものはまだ誰もいなかった。



「よいしょ、2つとったー」

「俺もー」

「あ~!!」



そういって学校のことや昔のことに花を咲かせること、30分――ついに決着が決まった。


「33対31で宮日の勝ちだな。」

「1個差ってすごいなー ちょっとミスもあったからね。じゃあ勇、次は本気で勝負!」



本気で勝負することになり、最初は本気なんて、とちょっと上から目線で物を見ていたが、ひなのの本気を出され、一面ほぼ白にされてしまったことは別の話。





「つ、疲れたー」

「もう一回くらいできる、ってもうこんな時間だね。そろそろ夕飯だ。」



オセロに熱中していたひなの達は、数時間経過していたことに今気づく。

そろそろミナが呼びに来る時間だ。


するとコンコンと扉をノックする音が。



「勇さんご飯できましたよー。」



ミナだ。夕飯を知らせに来てくれたのだが、ひなのがいることに目を丸くする。



「えっと、お邪魔しちゃいました?」

「いやいや! 俺たちは特に何にもないから!」

「すみません、勇さんも高校生なのでもしかしたら、って思っただけです。」

「あ、みゃーも何もしてないからね。」



ひなのが顔を赤くして言う。ミナも申し訳なさそうにこちらを見るが、余計に恥ずかしくなるだけであった。

ミナは中学生で女将という立場なので、色々な人間関係を把握しなければいけないようだ。



中学生ともあって、恋愛みたいなことには興味があるのは当然だ。

かといって変に誤解されるのはやめてほしい。誤解されないようにしよう――そう思う勇であった。




――1階お食事処――




今日の夕飯はカレーであった。ニオイもいいし、お肉や、ジャガイモなどがごろごろしていて食欲をそそる。

玲奈は先ほど夏鈴からもらった服を着ていた。普通に着替えられたようだ。



これから、食べようというときに玲奈がみんなに伝えたいことがあるとミナから聞き、勇、ひなの、夏鈴は玲奈のことを見る。

伝えられたのはみんなへの感謝の気持ちであった。玲奈以外の勇達は目を丸くして聞いていた。



そして感謝の気持ちのカレーです、と言われ、一斉にスプーンでカレーを口に運ぶ。

その味は……とても美味しかったようだ。勇はカレーを3回お替りしたし、ひなの、夏鈴、ミナは2回お替りしていた。



玲奈がこんなことをしたのだから兄もしないと、と勇に思わせてくれた大事なカレーにもなった。

結果から言うと今回の感謝を込めた玲奈のサプライズは成功であった。



夕飯を食べ終わったあとは、勇、ひなの、夏鈴は風呂に入り、寝てしまった。高校生活初日なので疲れたのであろうか。

今起きているのは、玲奈とミナである。



2人は台所で食事の後片付けをしている。なぜミナだけではないかというと、玲奈が、料理は片づけまでが仕事だよねといい自分から手伝いを申しでたからだ。



「今日の感謝の気持ちを伝えるの、大成功でしたね。勇さんもカレー気にってたみたいです。」

「そうだね、でもこれもミナちゃんのおかげだよ! ありがとう」


ミナも照れ臭くなり、女将として当然のことをしただけですと、話していた。



「玲奈さんこれから良かったらお風呂入りません?」

「あ、うんいいけど……」



突然のことで驚く玲奈。支度を終え、温泉に入る。今日は玲奈は温度を感じるようにしていた。



「ふぅ~あったかーい。なんだか落ち着くね。」

「温泉ですからね。気持ちいですか?」

「うん、1日の疲れが一気に飛ぶ感じ。」



温泉が気持ちいと褒められミナは嬉しそうだ。しかし、ミナは嬉しそうな顔から険しい顔になる。

これは重要なことを言うときになるミナの癖でもあった。



「あれ、ミナちゃんどうしたのそんなに表情険しくして」

「ちょっと本題に入ります。突然で申し訳ないですが、玲奈さんの未練はなんですか?」

「私の未練……」



突然の質問に玲奈は深く考えていた……



三週間ぶりの投稿となりました。次はもしかしたら番外編になるかもです。よろしくお願いします。

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