欠けたること
何するでもなく眺め、思い返し、嫉妬している自分に気付く。
満ち足りた月。欠けている私。
美人ではない。若くもない。判断力、間違っていない。記憶力、忘れていない。
賢者でありたいと思っていた。世に言う、魔法使いもありふれて。ファンタジーではない現実。幼く、バカだった。
満月は煌々と照らし出す。
一人、隣に居ない存在。一組だけのティーセット、縁の取れたカップとお皿。右手はあって、左手もあっても。
自分ばかりの世界ではない。欠けたること、ただ足らないを知らされる。
「ムーンパワー!」
聞こえてきた声、近付く足音。断らない、勝手に入ってくる、ズカズカと中に。
「ここに居た」
言うは、若過ぎる男。
「今日も愛してるぜ!」
ハッハッハッハッ。
バカ。素直に素晴らしい、欠かせない存在。そう、欠かせない。
忍耐力。
自分もバカでありたい。
月は真ん丸過ぎた。見上げながら、思い直す。