~入部したのは大人研究会!?絶対に彼女作ってやる!2~
第二話です。今回も温かい目で見てください。
凪とありさと日曜日の約束をしてから二日後、水曜日のこと。
部活の体験入学で放課後の校内を歩いていた3人は後ろから声をかけられた。
「君たち、大人研究会に興味はないか?」
3人は声のする方へと向き直った。
声の主はどこかで見たことがある綺麗な女子生徒。話しぶりからして1年生ではないようだ。
彼女の顔を見ながら考えていると、ふと純也の記憶がよみがえった。
先日の部活紹介で大人研究会の紹介をしていた生徒だ。
それだけでなく彼女は生徒会副会長として部活紹介を進める司会をしていた生徒でもあったので、記憶に残っていたのだ。
名前は石松洋子。2年生のはずだ。背中程まである長い赤髪と綺麗な赤い目が特徴の生徒。
「大人研究会ですか?」
そこまで思い出してようやく純也は返事をした。
「純也くん、この人知ってるの?」
凪にそう聞かれ、先ほど思い出したことを簡単に話した。
「そう言われれば見たことがありますね」
「うーん、みたことあるようなないような・・」
凪は思い出せていないらしい。
「別にいいさ。それより、どうだい?大人研究会。一度顔をだしてみないか?」
3人はまだ顔を出していない部活がいくつかあったが、せっかくなので石松先輩について行ってみることにした。
「はい、今から部活ですか?」
そう尋ねたのはありさだ。時刻は午後4時半頃。熱心ではない部活動の生徒が帰るころだ。
「ああ。私は生徒会の仕事もしているのでな。私はいつもこのくらいの時間なら部活に顔を出すんだ」
それには3人とも納得の表情だった。
「じゃあ案内するからついてきてくれ」
それから歩いて3分ほどして部室についた。白石学園には旧校舎と新校舎があり、その2つを渡り廊下がつなげている。渡り廊下からは体育館に続く道もあり、体育館と渡り廊下の間にはプレハブ小屋がいくつか並んでいる。部室はそのプレハブ小屋の一室だそうだ。
「さあ、ついたぞ」
そう言いながら石松先輩は部屋のドアを開けた。
「ようこそ、大人研究会へ!」
ドアを開いた先には異様な光景が広がっていた。中にいるのは3名の女子生徒。
中は純也が想像していたよりも広く作られていた。12畳くらいだろうか。この人数で使うにはもったいない広さだ。
それよりも何が異様かというと、この部屋、ピンクが多い。部屋の色の基調もそうだが、そこはかとなく男子高校生を刺激するような内容の本や、DVD、ひいてはグラビアアイドルのポスターまで貼ってある。そこになぜか古代ギリシャで活躍したであろう哲学者の名前が書いてある本なども乱雑に置かれている。はっきり言って一貫性がない。いや、ある面においてはいっかんせいがあるといえばあるのだが・・・。
「ここが大人研究会だ」
自信満々といった様子で石松先輩は語り始めた。
「大人研究会というのはだな、文字通り大人を研究する会なのだ。どんなジャンルで研究するかは各人の自由となっている。そしてそれを年に2回、学校に報告すること。それが大人研究会の活動内容だ」
「ひとつ、質問してもいいですか?」
そう言って恐る恐る右手を挙げたのはありさだ。
「部活紹介では健全な内容の説明でしたが、この部屋って・・」
疑問に思うのも当然だ。部活紹介のことを知らなくてもこの部屋の雰囲気には疑問を抱く。
「ああ、これか。これは昨日入ってきた新入部員のものでな。一気に部室がピンクになってしまったよ。あはははは!」
「新入部員、ですか?」
「そうだ、君たちと同じ一年生だぞ、おーい!安室、ちょっと来てくれ」
石松先輩がそういうと部屋の奥から金髪翠眼のエルフのような女の子が近づいてきた。
「なんですかぁ~洋子せんぱい?いま効率的なバストアップの方法について調べるのに忙しいんですよぉ~」
「まあそういうな。こちら、えーっと、なんといったかな?」
そういえば自己紹介をしていなかった。すっかり忘れていた。
「八重垣、八重垣純也です」
「ボクは渚凪です。あ、男の子ですよ?」
「わたしは豊田ありさです」
「で、こちらが君たちと同じ1年の・・」
「安室七華でぇ~す。よろしく~」
なんとも眠たそうな声をしている。それに、金髪翠眼ということもあってか、自分たちよりも幼く見える。
「まあ入り口でずっと立ち話もなんだ。お茶くらい飲んで行け」
そういわれて3人は部屋の中央にある大きな丸いテーブルと木製の簡素な椅子へと案内された。
そこで、先ほど石松先輩が話していた活動内容について詳しく説明された。どうやら活動報告をするのは新入生に対する部活紹介と、毎年9月に行われる学園祭らしい。ほかにもいろいろと聞かされたが他はさほど重要でもなさそうだったため、聞き流すことにした。
一通り話を聞き終えると、ありさが、
「お弁当作りは研究内容に入りますか?」と聞いていた。
それに対し石松先輩は、
「構わないよ。自分が調べたいと思ったことを自由に調べるのがここ、大人研究会だからな」
といったご様子。
「じゃあ3人でお弁当づくりを研究しよう!」凪もやる気になったらしい。
「2人は入部希望ってことでいいか?」
純也以外の2人は頷く。
「八重垣君だったっけ?君はどうするんだ?」
「俺は・・・」
悩んでいると左隣に座っていた凪が顔を寄せて上目遣いで「やろうよ!」と無言の圧力をかけてくる。
凪に押されると正直弱い。だから純也は、
「わかりました・・やりますよ」そう言うしかなかった。
「わかった。それなら入部届を金曜日までに持ってきてくれ」
3人は頷いた。
「ああ!あとそれとお弁当作りなんだが、私と安室も参加していいか?」
「えっ?」3人の声が重なる。
「今年から研究項目を変えようと思っていてな。ちょうどいい機会だから私もやりたいんだ。おそらく安室と私以外の2人は興味がないだろうから、私たち2人だけなんだが、どうかな?」
今まで毅然とした態度だった石松先輩が急にしおらしくなった。女子力アップしたいのを悟られたくないのだろうが、裏目に出ている。
「七華はお弁当食べたいだけなんでぇ~、活動するときだけ呼んでくださいねぇ~」
部屋の奥の方から声だけが聞こえた。
「じゃあ5人で決まりだな。いつ活動する予定なんだ?」
「それが、日曜日に凪の家でやろうかと話していたんですよ」
「日曜か・・わかった、行こう。安室はどうする?」
「いきま~す」
「よし、日曜日で決定だな。どこに集合するんだ?」
「あ、それなら大丈夫ですよ!ボクのお家からみんなのこと迎えに行きますから!」
「そ、そうか・・それなら渚君にお願いするよ」
「はい!任せてください!」
斯くして、大人研究会と、日曜日の弁当作りの新メンバーがそれぞれ加入することとなった。
第二話、いかがでしたでしょうか。次はお弁当回にするつもりですので、引き続きよろしくお願いします。




