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石版1

 自分を知っている奴は読むなとか言ってたけれど、読んでから気がついたので謝らない。

 あんただってどうせ、あたしが読むことわかって書いてたんだから、あたしはあんまり悪くないと思う。


 というか、読むなって書くぐらいなら、なんで文なんか遺した。読まれたいなら最初から素直にそう言え、紛らわしい。性根がねじまがったひねくれやだ。あんたのそういう、口を開くとでたらめなことしか言わない悪癖には、毎度の事ながら反吐が出るね。死んでも治らないって本当のことだったんだ。



 あんたはあれで綺麗にまとめて逃げきったつもりなのかもしれないが、適当に良い感じの甘い雰囲気作っておけばごまかせると思ってんならこっちもえらく見くびられたもんだよ。

 二度と会いたくない? 調子に乗るな、年下。あたしはあんたに言い足りてない事が山ほどあるんだ。人生堪能しきってやり残したことがなくなったら絶対その尻尾ひっつかみに行ってやるから、首洗って震えて待ってろ。

 ……まあふてぶてしいあんたのことだから、絶対そんな殊勝なことはしないんだろうけどさ。



 それであたしたち、どうやったらすっきり死ねるかって相談したんだけど、ひとまずこうやってあんたの思い出を刻んでいこうってことになったんだ。

 あんたが後の人に知っておいてほしいとかほざく割に、肝心の自分のことを語る言葉が見つからなかったようなので、あるいは、書き切れなかったのかもしれないので、かわりにあたしたちが気を利かせて、あんたについて記録していくってこと。

 あたしたちはあんたと違って、文を工夫するとかできないから、このまま読みにくいのが続くと思うけど。仕方ない、他の誰かに任せるわけにもいかないし。


 余計な事するなって思っても無駄。死人に口なし、世の中しぶとく生き残った奴が勝ち。あんたが使った言葉だよ、忘れたなんてとぼけたらはっ倒すからね。




 ……どう? 書けそう? よし、じゃあ試作は終わり。そろそろ始めようかな。

 話のきっかけってどうしたらいいかわからないから、あんたの真似をするね。



 あたしの名前はキリエ。貧民街の生まれ。少しだけ、宮殿で侍従をやっていたこともある。



 そうだね。

 じゃあまずは、あたしがどうやってあんたと会ったのか――いや、違うね。あたしが最初に会ったのはレィンの方だった。

 だから、そうだ。レィンのことから話していこうか。


 レィン――理想のお姫様。

 それがすべての始まりで、終わりでもあったんだ。

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