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籠の鳥の卵が割れるまで  作者: 鳴田るな
愚者編 前
3/99

手記1

 籠は男。

 鳥は女。

 生まれた私は腐った卵。




 思考を整理するために、記憶を清算するために、私の行いを懺悔し断罪するために、つまりはひどく個人的な事情のためにこの文を書きます。


 すべてが終わったら、信頼できる人に託して見つからない場所に隠してもらうつもりです。だからこれがもう一度人の目に触れる時がくる可能性は低いと思います。


 なぜ読まれもしない文をこうして書いているのか。

 自分でもはっきりと心がわかっているわけではありません。

 ただ、このまま私の心一つだけにすべてを押し殺して死んでいくのはいささか口惜しい。



 もし万が一、私以外の誰かがこの文を読むことがあったなら、その誰かはひどく好奇心が強く、詮索好きで、駄目と言われている秘密の扉を開けずにいられない愚者なのだろうと推測します。


 けれどよろしい。愚者よ、私も同じ愚か者ですから、あなたには大層親しみを感じます。

 禁断の箱を開けたあなたにささやかなご褒美をさしあげましょう。

 おそらく表からは葬り去られるであろう、私たちの真実をお教えします。


 あなたは私の記憶をたどり、私と体験を共有する権利があります。

 信じるもよし。嘘だと一笑するもよし。

 いないかもしれないあなたのために、私は少しずつ身を削りながらこの文を書いていきます。



 どうか誰にも見つかりませんように。

 でも、私たちの事をまったく知らない誰かが、遠い未来にでもふと見つけてくれますように。

 どちらもまったく、私の本気なのです。滑稽でしょうか。




 申し遅れてしまいました。始める前に自分が何者であるかお伝えしなければなりませんね。

 私の名はレィンと言います。

 もう一つの名を、第十二代アレサンドロ国王マリウス朝イライアス=エルト=オルシウス=アレサンドロ=マリウス。すなわちイライアス二世。


 祖母はかの有名な第十代国王バスティトー二世。

 父は第十一代国王イライアス一世。

 そして私の母は――。




 ……どうか、どうか。聞いてください、見知らぬ人よ。

 私たちはきっとただ、誰もが愛されたかっただけなのです。

 それがどうして、こうならざるを得ないのでしょうか。こうならざるを得なかったのでしょうか。


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