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手記4
籠は男。哀れな男。
語れないまま何を思う?
鳥は女。哀れな女。
せっかくうまく逃げ出して、優しい巣を得られたのに。
やってきたのは若い金糸雀。
哀れな鳥に何を想う。
愚かな愚かな若い金糸雀。
囀る言葉は嘘の歌……。
さあ、これでようやく役者が揃いました。
私の父、私の母、そして私の祖父に等しい人。
それから、それから、もう一人。
私の、愛しい、お父様。
私たちはただ、誰もが愛して、愛されたかっただけ。
それなのにどうして、ほしいものは大きくなるばかりで、どこまでも果てがないんだろう?
一目だけでよかったが、二度目もほしいにつながって。
振り向く頃には後の祭り。
もうどこにだって行けやしない。
だけどね ぼく ほんとうは
だれのことも きらいになんか なりたくなかったんだよ。




