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籠の鳥の卵が割れるまで  作者: 鳴田るな
リテリア編
12/99

手記2

二話目更新

小鳥8から先にお読みください

 ところで勘の良い読者なら、そろそろリテリアの企みがうまくいきすぎている事に不安を覚える頃合いでしょうか?


 堅牢で強固、明るみになれば厳罰は免れない神域への侵入が、こうもうまくいっていいはずがない。何かがおかしい。ここでとどまるべきだ。彼女は都合の良い作り事の物語の主人公なとではないのだから――。


 水を差すようで恐縮ですが、先に言ってしまえばあなたはまったく正しい。

 そうですとも。残念ながら、ただただうまい話というのは現実に転がっていないものなのです。


 だからこの先も、私の語る過去の出来事に一切の期待をしないでほしいし、良いことが起きたら心構えをしていてほしい。

 きっとその通りになるでしょう。でなければ私はここにいない。


 けれど、しかし、そういうことをどんなにか頭でわかっていても目先の欲に釣られて愚行を犯すのが人間です。

 ましてリテリアはこのとき十歳。ほんの小娘、鉄壁の世間知らず、純正の箱入り娘だったのです。



 ああ、私が何故、私の生まれる前の人であっただろうリテリアの過去を見てきたかのように語ることができるか、ですか?


 もちろん私自身彼女のことを調べはしましたが、運良く何度か本人から聞くこともできたのです。

 私にとってリテリアの事を知ることができるのは、何にも勝る、得がたく幸福な経験でした。

 彼女が話してくれたことを、一言一句一音すべて覚えていますとも。

 彼女のことを遺すためにこの文を書いている部分もあります。

 きっと表からはほとんど抹消されてしまっているでしょうから。



 なるべく公正な語り手を心がけてはいますが、そういった事情ですので、途中何度かリテリアの言葉を挟んでしまったり、私の主観をうっかり滑り込ませてしまうことをお許しください。



 私が彼女とどういう関係で、どういう経緯で話を聞き出したのかは、もう少し後にお話しすることにしましょう。

 腰を折ってしまって申し訳ない。続きを話さなければいけませんね。


 リテリアは母と兄から鍵を得て、まんまと神域に侵入することに成功しました。

 震える手をなだめながら開けた、その先にあったのは――。






 ――それとも賢明で愚かなあなたには、もうとっくにすべてわかっているのでしょうか?

 この私の事でさえも?

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