精霊との契約
朝、窓から差し込んだ光で目が覚めた。
「ん~、は‼もう朝か~」
体を伸ばしながらベッドから降りる。
丁度その時、部屋をノックする音が聞こえた。
「ユウ様ー朝ですよーあれ?起きていましたか。朝ご飯の準備が出来ましたので行きましょう。」
アルデリアが僕を起こしに来てくれたみたいだ。
「うん‼すぐ行くよ。」
僕はまだパジャマ姿のままだったので、昨日もらった服に着替えてから外でまっていたアルデリアと食堂に向かった。
「ずいぶん元気になられましたねユウ様!その顔はこれから先どうするか、決めたのですね。私たちは、ユウ様がどんな事を言っても全力でサポートしますので安心してくださいね」
「ありがとうアルデリア、でもその話は、食堂についてから話すよ。」
食堂には、数えきれないほど精霊がいた。
僕が座った席は、アルデリアとエリスの隣で正面には、フィー先生がいる。
「おはようユウ」
「おはようございますユウ殿」
「おはようエリス、フィー先生」
挨拶もすまし、朝食のサンドイッチを食べる。僕のサンドイッチだけみんなより、大きくて作るのは大変じゃないのか、と昨日アルデリアに聞いたら魔法で何とかなるそうだ。
朝食も済まし気持ちが落ち着いてから
「昨日は心配かけてごめん。」
僕が頭を下げるとアルデリアが笑う。
「ユウ様が元気になられたのなら私たちはそれだけで構いません。ただ落ち込むのは、エリスが泣きそうな顔で慌てるので出来るだけ止めて下さいね」
「ひ、姫様⁉」
「うん、分かったよエリスの為にね。」
「ユウまで⁉」
「冗談はさておき、僕はやっぱり元の世界に帰りたい‼例え何年掛かっても元の世界に帰りたい。その為にみんなに力を貸してほしい。だから、お願いします、僕を元の世界に帰るのを手伝って下さい。」
僕はもう一度頭を下げた。
「分かりましたユウ、あなたがそれを望むのなら、我々精霊族が総力を挙げて力を使いましょう。いいですね?みんな‼」
「「「おおーーー」」」
食堂にいる、精霊が一斉に叫びだした。
「ユウ、私は戦うことしか出来ないがその代りユウの前に立ちはだかる者全て打ち払おう」
「ユウ殿、わしにはエリスと違い戦うことは出来ないが、精霊族で一番知識があります。その知識を持ってして、ユウ殿を元の世界に帰しましょう。」
「ありがとう、エリス、フィー先生とても心強いよ」
こうして、僕の異世界での長い生活が始まった。
「二年下さいっ‼二年あればユウ殿を元の世界に送ることが出来ます‼」
お昼になりアルデリアたちにこの世界の事を教えてもらっていた時に、フィー先生が突然部屋に入って来てそう言った。
「ユウ殿の世界の座標は、二年あれば探すことができるんですっ‼」
「お、落ち着いて下さい。落ち着いて喋って下さいフィー先生。」
あまりにも興奮していていたため、アルデリアが注意する。
「すみませんでした。ですがユウ殿の帰還方法が分かったのです。」
その報告に僕は期待を込めて聞く
「ユウ殿が帰るには、この世界にある十二のアイテムを組み合わせることで自分が望む世界を見つける魔法が一度だけ使えます。その魔法と異世界に渡る魔法を組み合わせることでユウ殿の世界に帰還できます。」
「つまりその十二のアイテムを集めるのに二年掛かるということですか?フィー先生」
「その通りですユウ殿、そしてこの魔法の凄い所は時間すらも超えることができる魔法ということ、つまりユウ殿がこの世界で二年間生活しても向うの世界では一秒も経たずに帰れるわけです。」
一時はどうなることか思ったけど帰る方法が見つかって良かったと思う。
あ、でも二年も時間が掛かると僕が成長して向うに帰った時、大分違和感があると思うんだけど。
そこら辺の事を聞くとなんでも成長を止める魔法があるらしい。
魔法は本当に便利だ。
「ユウ様すぐに出発しましょう、フィー先生は契約の儀式の準備を、エリスは皆を集めて来てください」
時間が経ち広場には、精霊たちが集まっていた。その数、百。この数は、今この世界にいる精霊の九割を占めていた。残りの一割は、この森にはいない別の場所に住んでいる者たち。つまりこの森にいる精霊全員が、この広場にいることになる。
「では行きますわよ、ユウ様」
僕は緊張しながら頷く。
「ユウ様は、何もしなくて大丈夫ですから力を抜いてそこに立っていて下さい。私も初めてですが、頑張ります。」
「ひ、姫様勘違いするような言い方は止めて下さい!ほらあとが待っているので早くして下さい。」
「全く、エリスはつまらないですね。分かりました、今度こそ本当に行きます。」
アルデリアは僕に向かって突撃して来た。
だが予想していた衝撃は無く、アルデリアは僕の体の中に消えていった。
アルデリアが入ってからすぐに、別の精霊が順番に次々に突撃しては、消えてゆく。
そして五分ほど経っただろうか、周りにいる精霊は全て僕の体の中に入って来た。
残るは、全体を指揮していたエリスだけだ。
「そ、それではユウ、わ、私で最後です、い、いきます。」
エリスは、緊張しながら目を閉じて突撃して来た。
毎回思うけど、わざわざ突撃しなくてもいいのでは?正直結構怖い。
などと考えているうちにエリスが僕の中に入って来ようとして失敗した。
なぜなら、僕が避けたからだ。
「え?」
エリスは、そのまま壁にぶつかり涙目になっていた。
「な、なぜ避けたのですか?ユウ‼」
「いや、僕にも分からないけど体が勝手に動いて」
「まさか、姫様?」
「せ~かい!」
当然僕の口が勝手に喋った。
「よく分かったわねエリス、なんか私の時は早くしろとかいろいろ言ってたのに、自分は緊張して遅かったからムカついて」
僕の口が自分の意思とは関係なく喋っていく。
「だ、だって仕方がないじゃないですか、こんなに緊張するとは思ってもみなかったんですから。」
「あなたは、本当に戦うこと以外はダメダメですね」
「それでも、避けることはないじゃないですか。私初めてを返して下さい。」
(次いでに僕の体も返してよアルデリア)
(すみませんでした。契約がうまくいっているか確かめるために少し体をお借りしていました。)
それにしては随分と楽しそうだが、僕たちは今まで契約をしていた。
フィー先生によると僕が帰るには、まず精霊との契約をしないといけないらしい。
異世界に行く魔法は、前にアルデリアが言っていたように魔力をとても使うため人間の魔力では足りないみたいで、精霊との契約をすることによって魔力を借りることができる。そのために今の儀式が必要であった。
だが本来精霊は、一人の人間に複数の契約を交わすことはない。これは、精霊の数の少なさと、精霊が気に入った者しか契約を交わさないため、例え精霊に複数の精霊に会っても、気にいられることはほぼない。
別に僕は、百人全員に気に入られているわけではない。契約した半数以上は言葉を交わしたことのない精霊ばかりだ。これには、百人と契約しないと必要の魔力が足りないというわけでもなく、精霊一人との契約で済むところなのだが、アルデリアが「ユウ様と契約するのは、絶対に私がします。」と言ったので話は変わった。
アルデリアは精霊族の唯一の王族だ。そんな王族が森から離れたら森にいる精霊たちは困り果ててしまうのだ。元の世界に帰るには、この世界にある十二のアイテムが必要でこの森の中にはない。アルデリアが僕と契約をすると、当然、森から出て探しにいかなければならない。
だからエリスとフィー先生も全力で止めた。だがアルデリアは止まらなかった。
「私がいないのが駄目ならみんなで契約すればいいじゃないですか」と諦めなかったのだ。
まあ結果は、この通りアルデリアのわがままが通ったわけである。
他にも投稿している作品があるので良かったら読んでみて下さい~