◆進め!私立トロロ学園探偵部 ―特製松坂牛弁当盗難事件―◆
「小説家になろう」には、ストリエというトークアプリ風の読み物にアップする前の脚本を載せています。興味を持たれた方は、↓のストリエのものも読んでみてください!
https://storie.jp/creator/story/10052
探偵部シリーズの他の作品もこちらにのせています↓よかったらフォローしてください!
https://storie.jp/creator/9785
◆進め!私立トロロ学園探偵部 ―特製松坂牛弁当盗難事件―◆
作/ぽー
【登場人物】
安見良夫・・・・・・ トロロ学園の2年生
小林勇三・・・・トロロ学園の2年生
明智明子・・・・・ トロロ学園の2年生
篠崎文子・・・・ トロロ学園の2年生
花咲麻由美・・・ トロロ学園の1年生
大田先生・・・・ トロロ学園の教師。安見の担任。
ナレーター
【本編】
○トロロ学園の教室
チャイムの音とともに昼休みが始まり、安見と小林が話している。
ナレーション:ここは、私立トロロ学園高等部。都内某所に存在するそこそこの進学校だが、生徒は超個性的な自由人ばかり。なかでも探偵部は筋金入りの変わり者集団だった。
安見:ふぅ!やっと昼休みかぁ、あーまじで腹減った!
小林:安見。お前、今日は学食?それとも弁当?
安見:なんだよ、小林。今日は弁当さ!か〜ちゃん特製、昨日の残りもの詰め合わせ弁当だよ!
小林:なら、一緒に部室で食べようぜ
安見:ええっ、わざわざ部室行くの?めんどくせえ!
小林:フッ、嫌ならいいよ。今日の弁当は特別なんだがなあ……
安見:な、なんだって!
小林:聞いて驚くなよ!お隣から貰った特製松坂牛焼肉弁当だ!
安見:こ、小林くんっつ!そ、それは、本当か?
小林:何でお前にウソをつく必要があるんだ?
安見:す、素晴らしい、小林君っ!持つべきものは親友だ!ぜ、是非とも一緒させてくれ!
小林:おう!
ナレーション:このとき、二人はまだこの後、訪れる惨劇を知る由もなかった!!
○トロロ学園の探偵部部室
長机の上にミステリー小説がおいてある乱雑な部室。
安見:焼肉!やきにく〜!
小林:おい、全部食うなよ!
安見:分かってるって!小林、早く、早く!
小林:あ、あれっ……
安見:ん?どうした?
小林:な、ないっ!オレの弁当が!
安見:な、なんだって!
小林:ば、バカな!朝、確かにここに置いたのに!
安見:そんな!今、オレたちが部室のカギを開けるまで、ここは密室のはず?
小林:だ、誰かが、授業中か休み時間に弁当を盗んだんだっ!
安見:許せんっ!絶対に犯人を捕まえてやるっ!うおおおっー探偵部をなめるなあぁぁ!
小林:まずは、オレ達以外の部室のカギを持ってるヤツに当たろう!
安見:じゃ、まずは明智辺りから当たって見るか?
ナレーション:安見と小林は、女子部員の明智明子を当たることにした!
○トロロ学園の教室。
明智明子が席に座ってお弁当を食べている。
安見:おいっ!明智
明智:あ、安見。なんか用?
安見:お前、小林の特製松坂牛焼肉弁当知らない?
明智:は?何?
小林:部室に置いた俺の弁当がないんだ……
明智:はあ?アタシが盗ったっていうの?
安見:そのとおり。お前ならやりかねん!
明智:アンタらいい加減にしなさいよ……。証拠は?証拠は何よ?証拠!!
安見:いつも放課後に寄り道してスイーツ食ってるんだから十分怪しい!
明智:はあ?何それ?そもそもアタシ、今、ダイエット中なんですけど……!
安見:弁当がサンドイッチふた切れだけか……ううむ、これは確かにダイエット中かも!
小林:明智、今日、誰かに部室のカギを貸した?
明智:あ、それなら麻由美ちゃんに貸したわ
安見:なにぃ!麻由美ちゃんって新入部員の花咲麻由美か!
明智:そうだけど。でも麻由美ちゃんは他人の弁当を盗るような子じゃないわ!
安見:それはどうかな?本人に聞いてみないと
小林:とにかく、花咲さんに話を聞いてみよう!
○トロロ学園の校舎前
花咲真由美が弁当を食べている。安見たち、花咲を見つける。安見と小林、同時に話しかける。
安見:おい、花咲!お前、松坂牛の弁当知らない?
小林:花咲さん。部室のカギ知らない?
花咲:あっ。安見先輩に小林先輩!え、何ですか?松坂牛のカギ?
安見:うわっ、完全に混同してる……
小林:明智から部室のカギ借りたよね?
花咲:はい、借りましたよ〜
安見:一体、どういうつもりなんだ?
花咲:篠崎先輩に頼まれたんですよ
安見:えっ、篠崎に?何で?
花咲:ん〜。なんか部室にあるホームズ全集が読みたいって言うから、明智先輩からカギを借りて、篠崎先輩に貸してあげたんです
小林:カギのまた貸しかよ……
安見:コナンじゃないのかよ……
花咲:あ、許可ならちゃんと明智先輩から取ってますし、カギなら今は私が持ってますよ!
安見:そ、そうか……ならいい
花咲:一体どうしたんですか?そんなに慌てて
安見:い、いや……別に
花咲:そうですか!私、次の授業の準備があるので
花咲、去っていく。
安見:ま、まさかあの篠崎が犯人なのか?
小林:オレも信じられないが、しかしこの状況から考えると……
安見:篠崎っていったら、クラス一のお嬢様だぞ!!そんな子がお前の焼肉弁当なんか盗むかよ?
小林:何か事情があるのかもしれない……
安見:何だよ事情って?財布忘れたとか?弁当のおかずが嫌いなものしか入ってないとかか?
小林:違うよ!誰かに命令されたのかもしれない
安見:命令って……イジメにあってるってこと?
小林:なあ、あいつが3か月前に、うちのクラスに転校してきてから、女子の誰かとしゃべってるの見たことある?
安見:そういえば、最初はみんな珍しがって話しかけてたけど、最近はずっと一人ぼっちだよな
小林:だだのおとなしい奴だと思ってたけど、もしかしたら……これは、早く見つけて事情を聞くしかないな!
ナレーション:安見たちは篠崎文子を探して、学校中を歩きまわった。体育館裏、プールサイド、音楽室……。さすがに女子トイレまでは行かなかったけれど……。そうして屋上に行った時、ついに篠崎の姿を見つけた!篠崎は、一人屋上でフェンスにもたれ掛かりぼんやりと座っていた。
○トロロ学園の屋上
安見と小林、座っている篠崎を見つける。篠崎に駆け寄る二人。
安見:お、おい篠崎!あっ、お前、それ!
篠崎:何?
篠崎の膝の上に、大きくぶ厚い焼肉弁当が置かれている!
安見:なぜ、お前が小林の弁当を持ってるんだ?
篠崎:そ、それは……
小林:誰かに命令されたんだろ?
篠崎:そ、そうじゃなくて……
安見:だったら何だよ!許せねえな!オレがそいつぶっとばしてやる!
篠崎:違うの……わ、私…と、友達いないから……それで……つい……あなた達がいつも……楽しそうだったので
安見:はあ?何、言ってるか全然わかんねえよ?
大田先生:わかってないのはアンタ達の方よ!
大田先生、登場。安見と小林、振り返って驚く。
大田先生:まったく、アンタらは探偵部のクセに食い物しか見えてないんだから!
小林:先生、これはいったいどういうコトですか?
大田先生:まあ、こうでもしないとアンタらは動かないからね!
安見:おい、ちょっと待てよ、小林!先生はイジメの犯人を知っているのか?どういうことってどういう意味だ?
小林、安見を無視して大田先生に問いかける
小林:教えて下さい。先生はなぜ篠崎にオレの弁当を盗ませたのですか?
安見:な、なんだって!
小林:オレ、今日の弁当が焼肉弁当ってことは安見と先生にしか言ってません。盗られたら大ごとですから
大田先生:それは賢明な選択ね。でもまだ脇が甘いわね
安見:ど、どういうこと!ちょっと待って!小林、頼むから説明してくれっ!
小林:オレ、今朝、部室で大田先生に遭遇して、「忘れ物?」って聞かれたから「部室に焼肉弁当隠してるところです」って言ったんだ!
安見:なんだそれ!それだったら初めから大田先生が犯人に決まってるじゃないか!1年生疑っちゃまずいだろ!
小林:いくら特製松坂牛弁当だろうと、まさか現役教師が生徒に盗みをさせるなんて思わなかったんだよ
大田先生:フフ……いいこと、覚えておきなさい!教師ってものはね。学級運営のためならなんだってやるものよ!
安見:ど、どういうことですか?
篠崎:先生!もういいです!私が悪いんですっ!小林君、ごめんなさい!
安見:篠崎……これは一体……?
篠崎:わ、私……話すの得意じゃなくて……転校してから、なかなかクラスに友達出来なくて……。でも、ミステリー小説読んだりするのは好きだから、探偵部に興味はあって……だけど、自分から入部したいって言い出しにくくて……それで、大田先生に相談したら……そういうときは事件を起こせ!って言うから……
小林:それでオレの弁当を盗んだのか!
安見:なんだそりゃ!
小林:なるほど。そんな事情があったなんて!そういうことなら仕方ないな
安見:よくないだろ!お前、どんだけ女の子に弱いんだ!
小林:お前こそ、どんだけ食い意地張ってるんだ!
安見:なんだと!
大田先生:ハハハ、まあいいでしょ!もう済んだことよ!!
明智と花咲が登場。大田先生をみつけて近寄ってくる。
明智:あっ、大田先生に篠崎さ〜ん!
花咲:安見先輩と小林先輩も!みんなそろってどうしたんですか〜!
大田先生:あ、あなた達ちょうどいいところに!今日からもう一人、探偵部に仲間が加わります。みんな仲良くしてあげて!
篠崎:し……篠崎です。よろしくおねがいします……!
明智:やったぁ!篠崎さんも入部するんだ!よろしくね〜!
花咲:よろしくお願いします!篠崎先輩〜!
篠崎:あ、ありがとう……
安見:ハハ……参った、こりゃ完全に文句を言い出せる雰囲気じゃなっちまった!
小林:焼肉弁当は入部のお祝いってことにするか!
ナレーション:こうして、昼休みと引き換えに、無事に事件は解決し、探偵部にも新しい仲間が加わったのであった!
(おわり)