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君といた世界  作者: アキラ
8/13

第7話

ドアを開いた先にあったのは、先ほどと同じなにもない空間。

俺はさっきのミスを繰り返すまいと、近くにあった石を掴むと投げ込んでみた。

しかし、何も反応はなく、俺は精神を落ち着かせた。

(いくら、即死無効を施したとはいえど、それは複数の攻撃には対応できない。

最初の攻撃を視認したら、すぐに下がらなければ・・・)


瞬間。ゲームオーバーの文字が頭をよぎったが、後ろに控える4人のおかげで意を決した。


俺はスキル「アクセルドライブ」を発動させた。

このスキル発動時はいつもの10倍の反射速度と身体速度を手に入れることが出来る。

ただ、このスキルには10秒間しか使えないという時間制限に加えて、

一度使えば、ゲーム内の時間で999時間使用不可になるという大きなリスクがあった。

このスキルはラスボスまで取っておくつもりだったが、背に腹は代えられない。


俺は勢いよく、部屋の奥へ向かって走り出した。

すると、間もなく何かが弾けるような音が聞こえてきた。

反射神経が研ぎ澄まされた今、俺はさっき俺たちを全滅へと

追い込んだ敵の正体を確かめるために上を見た。


「な、なんなんだ。これは!?」

目にそれが移り込んだ瞬間、戦慄してしまった。


それは雨のようだった。

しかし、その雨は水滴なんかではなく、

剣が次から次へと生み出されては降ってくる。

10倍にまで引き上げた動体視力をもってしても、

捌ききることのできない剣の数々がそこにはあった。

そして一番の問題は、敵の姿を視認することが出来ないことだろう。

剣を生み出し続ける敵の姿が見えないのでは攻略のしようがない。


運営の悪意とも思われるボス部屋が立ちはだかってきたのだ。

しかし、こんなところで諦めるのは嫌だった。

俺は意識を研ぎ澄ませた。

(アクセルドライブの効果が切れるまで、あと4秒。

この4秒間が終われば、剣がすごい勢いで振ってくることは間違いない。

それならば、ここでその剣がどこにどういう風に落ちてくるのかだけでも見極める!

幸い、リンの全回復呪文もあるし、最悪の場合には1度だけ使用できる

復活の呪文もある。もしも俺が死んでしまったら、後は頼むぞ!!ケン)

心の中で決心を新たにし、頭上を見つめた。


4・3・2・1・0


剣が次々に凄まじいスピードで落ちてきた。

俺はさっきまでその剣の未来を予測していたこともあり、

なんとかダメージを8割に抑えることが出来た。

もちろん、さっき俺を屠った大剣も落ちてきたが、

その大剣にだけは当たることをどうにか避けた。

そして、剣の雨が終わった瞬間に、

後衛にいるリンが回復魔法をかけてくれたおかげで、

俺の体力はマックスまで戻った。


「ふぅ~。どうにかさっきの攻撃で殺されはしなかった。」

それにしても、おかしいことがあった。

さっきの剣の雨をどうにか耐えて以降、上空からの敵の攻撃が無くなったのだ。

まさか、さっきのはボス戦前のトラップだったなんてことはないよな。


そう考えながら、周りに気を配っていた時だった。

どこからか、人の足音が聞こえてきた。

最初は俺たちの入ってきた扉の方から聞こえてきた音で、

ほかのユーザーが来たのかと思った。

しかし、その音が鳴っている先はなんと、ボス部屋の中にあったドアからで、

先ほどまで考えていた”トラップ”という考えが色濃く頭の中をよぎった。


そして、もう剣は落ちてこないと判断したのか、

ケンを筆頭に4人が俺のもとへ歩み寄ってきた。

「ルイ。何かがこちらへ来ているな。」

「ああ。そうだな。」

俺とケンが扉の向こうからこちらへ来ているであろう者について、

危機感を覚えながら、声をかけあったちょうど、その時だった。


扉が開いたのは


中から出てきたのは、今までに見たことのない装備を身に着けた青年だった。

青年はこちらに気付くや否や、なぜか笑みを浮かべた。そして・・・。


キーン

一瞬、何が起きたのか分からなかった。

視線上にいたはずの青年が目の前から消えたかと思った途端、

彼が手に持っていた剣が俺の鎧を切りつけていたのだ。

そして、体力ゲージを見ると、一気に半分まで削り取られていた。


「へ~。一撃で沈められると思ったのになぁ。

まあ、あの罠を掻い潜ったくらいだから、そんなにも楽には倒せないか。」

まるで俺たちユーザーがボスと闘っているときのような口ぶりの彼に心底、驚いた。


それと同時にワクワクが止まらなかった。

今までの敵は強かったけど、規則性に動いていた。

だけど、こいつは今までのボスとは明らかに何かが違う気がする。

まるで俺たちと同じユーザーのような、さっきの不規則な動き、

それに今までの敵ではなかった言葉、ワクワクしないわけがなかった。


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