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ティナヤとの出会いと初めての実戦 06

「な、何だ? 何が……どうなって?」

 身体の自由を奪われた黒衣の男は、狼狽し声を上擦らせる。

「――成る程、右手で奪った魔術式を使い、左手で触れた物の魔術式を異常動作させる能力か。恐らくは、奪った魔術式で強引に上書きでもしているのだろう」

 リーダーらしき男は、一度目にしただけで、朝霞の透破猫之神の能力を、ほぼ正確に見切ってしまう。

「中々に稀有、且つ厄介な能力ではある。だが、逆に言えば……奪う魔術式が無ければ、左手の能力の方は使えないと見た。違うか、小僧?」

 再び跳躍し、別の街灯の上に立ち、その街灯から魔術式を奪っていた朝霞を見上げながら、リーダーらしき男は問いかける。

(当たってるけど、ハイその通りですとか、答える訳にも行かないわな)

 心の中で呟きながら、朝霞は街灯の魔術式を奪い終える。発光魔術の魔術式を失った街灯の光は、消え失せる。

「街灯を壊せ! この場に存在する、奴が奪える魔術式を、全て破壊しろ! さすれば、小僧の左手の能力は封じれる筈!」

 リーダーらしき男の命令により、火球を既に発生させていた、数名の黒衣の男達が、まだ朝霞が魔術式を奪っていない、灯りが点っている街灯に向け、バスケットボールの選手がロングパスを決めるかの様なフォームで、火球を投げつける。赤い光の尾を曳きながら、火球は街灯のランプ部分に向かって飛び直撃、街灯を燃え上がらせる。

 赤々と燃え盛る炎の中で、発光魔術の魔術式が固定化され、魔術機構となっている街灯のパーツが焼け崩れる。塗炭通りに残されていた、機能していた街灯が四本、柱ごと炎に包まれ、その機能を失うが、残る炎の残滓が街灯代わりに、塗炭通りを照らす。

(――しまった、街灯の魔術式が!)

 朝霞は焦りつつ、辺りに他に奪える魔術式が無いか、探してみる。だが、他に奪えそうな魔術式は、塗炭通りには見付からない。

(自分で魔術式を書き込んで、それを奪う蒼で奪うという手もあるが、自分で書き込んでる間に、攻撃食らうだろうから、これは駄目か……)

 既に朝霞も、有る程度の魔術は使える為、自分で魔術式を書き込み、それを奪う蒼で奪い(この場合、奪うというよりは自分で装填するという方が、正しいのだろうが)、与える黒で利用する事も出来る。だが、まだ魔術の初心者である朝霞の場合、魔術式を完成させるには、数十秒はかかる。

 つまり、魔術式を自分で描けば、数十秒の隙を作ってしまうのだ。その隙を敵は見逃す筈が無い。自分一人であり仮面者姿なら、有る程度の魔術攻撃に耐えられる可能性もあるが、少女の方は朝霞が盾になろうが、守り切るのは不可能だろう。

(つまり、今の俺が動きを封じられるのは、あと一人……)

 嫌な汗が、全身の肌から滲み出る。かなり自分に不利な状況なのを、朝霞が悟ったが故にである。

(だとしたら、狙うのは決まってる。あのリーダーらしい男だ。指揮を執っているあいつを封じれば、連携は崩れ……連中を振り切れるかもしれないし)

 そう決意した朝霞は、街灯の天辺を蹴ると、リーダーらしき男に向かって急降下し、襲い掛かる。スピードは一度目より、圧倒的に速い。二度目なので、物覚えが良い朝霞は、既に高速高機動戦闘の動きに、慣れつつあるのだ。

 一度目とのスピードの違いは、リーダーらしき男にとっても、想定の範囲外だった。訓練された魔術師だろう、リーダーらしき男ですら、朝霞の攻撃をかわしきれず、朝霞の左拳を食らってしまう。

(――勝った!)

 後は与える黒を発動すれば、朝霞はリーダーらしき男の動きを、封じられる。朝霞は興奮気味に、心の中で喝采しつつ、与える黒を発動する。

 だが、まだ喜ぶのは早かった。朝霞の左手甲の六芒星から、黒い稲妻が放たれる直前、朝霞の左腕は弾き飛ばされてしまい、リーダーらしき男の身体から、離れてしまったのだ。

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