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正解が見えない心休まらぬ休息 03

(ど、どうする? もう少し湯に浸かっていたかったけど、そういう訳にはいかないか。もう上がった方がいいよな?)

 焦りながら朝霞は、自問を続ける。

(でも、あそこがまだ治まり切ってないから、湯船から出る時に、神流に見られたり……洗い場を通る時に、ティナヤや幸手に見られる可能性もあるし……)

 朝霞の思考は焦りで乱れ、心の中で仲間達の名を、仇名で呟く余裕が無い。治まるべき部分が治まっていれば、迷わず湯船から出て、さっさとバスルームを後にする所なのだが、治まっていないのだから、簡単には判断出来ないのだ。

(タオル持って来れば良かったな……)

 湯船にタオルを持ち込むのはマナー違反なので、朝霞はタオルを湯船には持って来ていなかった。

(女の子と入ってる時点で、マナーとか気にしてる場合じゃなかったんだ……)

 元から異常な状態なのに、タオルに関してのみマナーを守ろうとした事を、朝霞は今更後悔する。そして、朝霞が迷い……後悔している間に、状況は更に悪くなる。

 身体を洗い終えたティナヤと幸手が、共に湯船の方に歩いて来たのだ。バスルームだけでなく、湯船も広いので、脚が触れ合ったり重なり合ったりはするが、四人同時に湯に浸かる事も可能だ。

 ティナヤが先に、幸手が続いて、湯船に入り始めると、滝の様な音を立てながら、湯船から湯が溢れ出る。湯船の中で二人は移動し、ティナヤは朝霞の正面に、幸手は右斜め前に、それぞれ朝霞や神流の方を向く形で、湯船に浸かり始めた。

 つまり、朝霞は背後と左側の壁……そして三人に囲まれる状態に、なってしまったのである。腰を落として股間を湯の中に隠したまま移動すれば、身体が三人と不自然に触れまくる羽目になるし、三人に触れぬ様に立ち上がって移動すれば、股間の状態は手で隠しても、ばれてしまう可能性が高い。

(――しまった、リスクがあっても早目に風呂から、上がるべきだったんだ)

 朝霞は今になって後悔するが、既に手遅れ。股間の状態が治まらない限り、湯船から上がり難い状況に追い込まれてしまったのを、朝霞は自覚する。

 だが、一度は湯船の中で治まり始めていた筈の朝霞の股間は、裸の三人に囲まれて、また興奮状態に戻ってしまう。幾ら大事な部分は湯に隠されて見えないとはいえ、魅惑的な異性が三人、身が触れ合う程の間近にいるのだから、思春期の少年である朝霞としては、無理は無い。

 正義感が強く、比較的真面目な部類であるが故に、様々な誘惑を撥ね退けて来たとはいえ、朝霞は聖人君子では無く、人並みに異性への欲望を持ち合わせているのだから。

「あのさ……男の俺が入ってるのに、女の子が一緒に入るのは、まずくない? いくら同居してる仲間でも、ちゃんと引くべき一線っていうのは、あると思うんだけど」

 とりあえず、恥ずかしさと興奮を誤魔化すかの様に、朝霞は三人に問いかける。後ろめたい感情を抱いている場合、人間は饒舌になるものなのだ。

「幾ら湯船が広いといったって、裸は見えるし、四人で入ると……身体とかだって、触れたりする訳だし。やっぱまずいだろ、そういうのは」

 目線を不自然に、三人の身体から逸らしつつ、そう語る朝霞の身体は、既に三人と触れ合っている。身体の右側面は神流の左側面と、両脚はティナヤや幸手の脚と、自然に触れ合っているのだから。

「今日は俺がジャンケンで勝ったんだから、最初に入る権利が有るんだし、少しは遠慮して……俺が上がるまで湯船に浸かるのは、待ってくれない? すぐに俺……上がるからさ」

 そんな朝霞の頼みに、神流は少し芝居がかった様な口調で、呆れてみせる。

「――朝霞は修行で酷く疲れてる仲間に、湯船で疲れた身体を癒すのを、待てというのか? うちのリーダーは随分と仲間に対して、冷たいねぇ」

 神流の言葉に、幸手とティナヤが頷く。

「それに、私は別に……裸見られたって、身体が触れたって構わないし」

 からかう様な口調の幸手は、身体の向きを調整して脚を伸ばし、朝霞の脚に絡める。

「――私だって」

 遠慮がちではあるが、幸手に張り合う様に、ティナヤも脚を伸ばし、朝霞に脚を絡めた。

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