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交魔法と修行 05

「――まず通常の変身時同様、ソロモンの六芒星を手頃な物に描き、変身用の仮面に変える……」


 解説書に書かれた交魔法の方法は、朝霞が音読した様に、まず仮面者への変身用の仮面を作り出す事から始まる。

 仮面の……殆どの場合は額の部分には、ソロモン式の魔術式が固定された魔術機構の、六芒星がある。


 変身後、この六芒星の上に他の系統の魔術式を上書きし、異常動作させるのが、交魔法。

 比較的安定的に動作し、リスクが低く、メリットの有る形での異常動作を発生させる事が判明している、幾つかの魔術式を選び、上書きするのだ。


 上書きする魔術式の系譜は、陰陽術おんみょうじゅつと呼ばれる、東瀛州の古い魔術(陰陽道ではない)。

 香巴拉式と系譜的には繋がる部分も有り、古い系譜の禁忌魔術なのだが、実はソロモン式にも似た部分がある。


 この三つの古い魔術に共通するのは、魔術の系譜……流派を象徴する、特徴的な外見の魔術式を用いる点だ。

 ソロモン式でいえば六芒星、香巴拉式では法輪、そして陰陽術では六芒星より頂点が一つ少ない星型の記号……五芒星という風に。


 そして、それらの特徴的な魔術式は、魔術師の身体や、魔術師が身につけたり手にしていたりする物に仕掛けられえた魔術式限定ではあるが、略式での発動が可能なのである。

 一度でも魔術師が正確に魔術式を記述して起動すれば、その後はシンプルなシンボル状の魔術式を記述しながら、魔術師が発動したい魔術式を心の中で指定するだけで、自動的にシンプルな魔術式が、指定した魔術式の機能を果たすのだ。


 例えば、身体の一部に物を隠したり、出したり出来るソロモン式の魔術「スタッシュ」を、自分の掌に記述し、発動させるのに成功すれば、その後はその魔術を心の中で指定しながら、掌に六芒星を記述すれば、魔術は発動する。

 これが略式と呼ばれる魔術の使用法で、聖盗が世界間鉄道の切符を掌から出し入れする際は、大抵このスタッシュを略式で発動している。


 陰陽術は、この略式が使える為、一度正確に記述して起動すれば、その後は五芒星を記述しながら使用したい魔術式を心の中で指定するだけで、発動出来る。

 陰陽術の魔術式を使った交魔法は、一度成功すれば……その後は五芒星を、仮面の六芒星に上書きしながら、使用したい魔術式を指定するだけで、発動が可能となる。


「ま……その最初の発動自体が、難しいらしいんだけど」


 呟きながら、朝霞はペンダントのチャームであるミニボトルから、蒼玉粒を一粒取り出す。

 そして、左手に持ったキャスケットの内側に、慣れた手付きで六芒星を描く。


 蒼玉粒は消滅し、六芒星から噴出した青い炎がキャスケットを包み込むが、炎は一瞬で消え去り、キャスケットは黒い仮面に姿を変えている。

 朝霞が仮面をかぶると、仮面の六芒星から青い炎が噴出し、朝霞の全身を包み込む。


 一瞬で炎は消え去り、黒い忍者装束の各所を、プロテクターで保護したかの様な、仮面者の姿に変身した朝霞が、炎の中から姿を現す。


「こうやって間近で見ると、やっぱ透破猫之神すはねのかみって、泥棒神社の石像に似てるよね。特に、顔の辺りとか」


 何気なく、幸手は朝霞の仮面者としての姿を見詰めながら、感想を漏らす。

 透破猫之神とは、朝霞が仮面者に変身した際の、正式な名前で、神流でいえば布都怒志に相当する。


 幸手の言葉、特に「泥棒神社」という部分を耳にして、神流は微妙に……居心地の悪そうな顔をし、目線を透破猫之神となった朝霞から、逸らしてしまう。

 何か嫌な事でも思い出したかの様に。


 そんな神流の様子に気付き、避けた方が良い話題を、うっかり口にしてしまった自分に気付いた幸手は、気まずそうに頭を掻く。


「じゃあ、始めるよ……交魔法」


 神流と幸手の間の微妙な空気は、朝霞の言葉が吹き飛ばした。

 リスクや難易度が高い方法を試す場で、過去の出来事について、思い煩う暇は無い。

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