交魔法と修行 03
「危険なのは分かり切った上で、俺達はこの世界に来て、聖盗やってるんだ。今更、危険だからって、蒼玉回収諦めてたらキリが無い。だが、八部衆を相手に出来る条件が揃ってもいないのに、八部衆と遭遇するのは、可能な限り避けるべきだ」
朝霞は喋りながら、自分の答をまとめる。
「――交魔法を習得すれば、相当に不利ではある様だが、一応は八部衆を相手に出来るらしい。だから、三人共……交魔法を習得出来た場合のみ、ハノイでのブラックマーケットで取引される蒼玉を狙う。八部衆と遭遇しても、基本……戦わずに逃げる前提で」
更に、朝霞は言葉を付け足す。
「手に入った情報から推測するに、こちらの世界で八部衆は、基本独りで行動しているらしい。相手が独りなら、交魔法習得した上で逃げに徹すれば、何とかなるだろう」
少し考えてから、幸手が口を開く。
「まぁ、その辺りが妥当な、落とし所なのかもね」
壁にかけられたカレンダーに目をやりつつ、神流が朝霞に問いかける。
「スケジュール的には、十一日に発たないと間に合わない。十一日までに交魔法をマスター出来なければ、出発しない訳か?」
神流の問いに、朝霞は頷いてから、幸手に尋ねる。
「イダテンの修理、どれくらいかかる?」
「本当は強化改造するつもりだったんだけど、改造抜きにして修理だけなら、後は四時間くらいかな? 今夜中には、何とか」
「皆で手伝ったら?」
「二時間くらいには」
「――だったら、夕食後は皆でイダテンの修理。その後、交魔法の修行に入るって事でいいか?」
朝霞の問いに、三人は頷いて同意する。
ティナヤ自身は交魔法の修行はしないのだが、一応修行のサポートはするつもりで。
「あ、それと……今回のブラックマーケットの件、仲間の誰かに喋ったか?」
三人が問いに首を横に振り、否定の意を示したので、朝霞は安堵する。
「聖盗仲間には誰も会わなかったから、話さなかったが……話したらまずかったのか?」
神流の問いに、朝霞は頷く。
「香巴拉と八部衆の話をナイルさんに聞くまでは、仲間を誘うつもりだったんだが、危険性が高い案件に、他所の連中を誘う訳にもいかないからな。今回の件は伏せておこう」
「それは、そうだな……」
朝霞の説明に、神流は同意の言葉を口にする。幸手とティナヤも頷いて同意を示す。
「――話はまとまったみたいだし、とりあえず夕食にしようよ。もう七時過ぎてるんだし」
壁にかけられた時計を指差しながら、ティナヤが三人に持ちかける。
「賛成! 少し前から腹が減って、仕方が無かったんだ!」
神流が嬉しそうに、そう言いながら立ち上がるのを見て、朝霞と幸手も立ち上がる。
「さっきから、何か変な音がしてるなと思ってたんだけど、神流の腹の虫が鳴いてたのね」
「鳴いてないって!」
からかう様な口調の幸手と、言い返す神流は、倉庫から上の階に通じる階段に向かって、歩いて行く。
二人に続く形で、朝霞とティナヤも階段に向かって歩き出した。
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