交魔法と修行 01
ナイルの研究室を後にした朝霞とティナヤは、越南州やハノイに関する情報を大学の図書館で集めてから、家路についた。
途中、商店街に立ち寄って、夕食の材料の買い物などをしたりもしつつ。
アジトである倉庫に戻ったのは、既に夕暮れ時。
倉庫の一階にある、既に照明が灯っているガレージに、朝霞とティナヤが入ると、そこには幸手と神流がいた。
破損箇所だらけのカバーが外され、フレームや魔道エンジンが剥き出しになった、大型動物の骸骨の様なイダテン。
その内部破損箇所のパーツを交換中だった幸手と、カバーの穴を溶接機で塞いでいた神流が、朝霞達の帰宅に気付いて、作業を中断する。
二人とも、ガレージ作業用の黒いツナギを着ている。
身体の線が、割とはっきり出る上、溶接機を使っていない幸手の方は、胸元のファスナーを大きく開けていて、車の修理をしているだけなのに、無意味に艶っぽい姿だ。
「お帰りーって、何で二人が一緒なのよ?」
溶接用のフェイスガードを外した神流が、やや不満そうに二人に声をかける。
「図書館と本屋通りでの調べが早目に終わったから、魔術に詳しいっていう大学教授に、バニラと会いに行ったんだよ」
頭を掻いたりしつつ、一応は言い訳染みた口調で、朝霞は続ける。
「あのマークが何だか、俺も早く知りたかったんでね」
「――で、あのマークが何だか、ティナヤが言ってた魔術師の大学教授は知ってたの?」
今度は幸手が、工具を手にしたまま、朝霞に問いかける。
「知ってたよ。あのマークの正体だけでなく、例の二人組についての話や、他にも色々と……俺達の今後に、かなりの影響を与えるだろう色々な事を、教授は教えてくれた」
朝霞の表情が厳しいものに変わったのが気になり、神流は即座に問いかける。
「あたし達の今後に、かなりの影響を与えるだろう色々な事って?」
「結構、長い話になるぜ」
長い話になると聞いた神流と幸手は、それぞれ近くにあった木箱に腰掛ける。
話す側である朝霞やティナヤも、同様に木箱や金属製の箱などに腰掛ける。
「――それじゃあ、俺とティナヤが……魔術師でもある大利根ナイル教授から教わった事を、エロ黒子と乳眼鏡にも、そのまま教えるよ」
「エロ黒子ゆーな!」
一応、お約束ともいえる神流の突込みを聞いてから、朝霞は神流と幸手に話し始める。ナイルから聞いた、香巴拉や交魔法についての話を。
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