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門の無い大学と明かされる秘密 14

「まぁ、これらの条件が揃うことは、流石に余りないので、同じ時期……同時に多くの八部衆が揃うことはない。先ほども言ったように、これまで同時期に甦った八部衆は、最大で三人」


 ナイルは歴史書に載っている、八部衆のイラストの内、二人を指差す。

 紫水晶玉を胸に埋め込んでいる乾闥婆と、瑠璃玉を埋め込んでいる、別の青年の八部衆を。


「今現在、複数の八部衆が活動している事は、情報として掴んでいる。私がエリシオン政府の関係者から聞いているのは、紫の乾闥婆と瑠璃の摩睺羅伽マコラガの二人だ。記憶警察の保管施設などが襲撃を受けた際、存在を確認したらしい」


 イラストから朝霞に目線を移し、ナイルは問いかける。


「君は……自分が目にした八部衆の名前は知らないだろう。八部衆はそれぞれ、決まった色……種類の完全記憶結晶だけを、胸に埋め込み力の源泉とする。故に、色を見れば、誰なのかが分かるのだが……君が見た二人の完全記憶結晶の種類は?」


「遠くから見ただけですが、翠玉と瑠璃玉ですね」


「つまり、摩睺羅伽と緊那羅か。摩睺羅伽の方は出現を把握していたが、緊那羅までも今の時代に現れていたのか。かって私が戦った二人の力を受け継ぐ者……乾闥婆と緊那羅が、どちらも甦っていたとはな」


 過去の激戦を思い出しているのか、ナイルは感慨深げに呟くが、すぐに事態の深刻さに気付いたのか、真剣な口調で話を再開する。


「――だとしたら、現在……出現している八部衆は、三人。八部衆が三人も揃ったのは、過去に一度だけ。相当な犠牲が出る激戦は覚悟すべきだが、今のエリシオン政府と聖盗が協力すれば、封じ込められない訳では無いか」


(あれ? でも……記憶結晶の種類は八部衆それぞれで決まっているという事は、紫水晶玉の乾闥婆や翠玉の緊那羅、瑠璃玉の摩睺羅伽と、蛇女の情報にあった琥珀玉の奴は、別の八部衆という事になるよな)


 オルガのシールドカードに記されていた、琥珀玉を埋め込んだ襲撃犯の情報を、朝霞は思い出したのだ。


「ねぇ、あの……オルガのシールドカードの奴って、確か……琥珀玉だったよね?」


 オルガからの情報にあった、琥珀玉の襲撃犯の存在を思い出したらしく、問いかけてきたティナヤに、朝霞は頷いて同意を示す。


「紅玉界の聖盗が、記憶警察の保管施設で、琥珀玉を胸に埋め込んだ、桁違いの戦闘力がある魔術師と戦ったっていう情報を、信頼出来る紅玉界の聖盗から、俺達は得ています。だから、今現在……甦っている八部衆は、三人ではなく……四人という事に」


「琥珀玉……夜叉ヤクシャも復活していたのか!」


 朝霞の話を聞いて、ナイルは愕然とする。


「八部衆が四人も復活……これは、封印戦争以降だと、最大規模の戦いを覚悟しなければならない。どれだけの被害や犠牲が、出る事になるのか……エリシオン政府が現時点で揃えられる全戦力を投入して、相打ちに出来るかどうかというラインだな……」


 封印戦争とは、香巴拉を浮遊大陸ごと封印した際、八部衆全員を相手に、連合軍が戦った戦争の名称である。


「四人でそれなら……八部衆が全員揃ったら、一体どうなるんです?」


 ティナヤの問いに、ナイルは眉間に皺を寄せつつ答える。


「世界が香巴拉の物となる、確実に。封印戦争から四百年以上……平和な時代が続き、エリシオン政府が揃えられる軍事力は、封印戦争時の連合軍のレベルを、かなり下回っている。平和な時代に莫大なコストをかけ、戦時レベルの軍事力を維持し続けるのが難しかったせいでね……」


「具体的には、どの程度の差が?」


 朝霞の問いに、ナイルは少し考え込んでから、答える。


「――三分の一程度かな。エリシオン政府の現有戦力では、今現在この世界にいる聖盗全ての力を借りたとしても、八人どころか七人……いや、六人でも勝ち目は無いだろう」


「四人ではなく、六人以上の八部衆が、既に復活している可能性は?」


 今度も、ナイルは考え込んでから、慎重に答を返す。


「その可能性は、低いだろう。世界を取り返せる数の八部衆が、既に復活しているのなら、連中はとっくに、エリシオン政府に戦争を挑んでいる筈。だが、連中の現在の動きは、完全記憶結晶……しかも異世界の物の収集と思えるものが殆どで、戦争を挑もうとしている様な動きは見られない。準備くらいは、進めているのかも知れないが」


 無論、あくまで知りえた情報を前提とした、ナイルの推測である。

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