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死亡遊戯 21

「――だから、俺は夜叉にやられた後、どうなって……どうして此処にいるんだ?」

 朝霞の再度の問いかけを耳にして、タチアナとタマラは自分達の話がズレ始めたのを察し、言い合いを止める。

「手短に説明すると、夜叉に殺されかけた黒猫を、あたし達トリグラフが命懸けで助けて、紅玉界の聖盗の避難所である、城舗栄の此処に連れ込んだって訳さ」

「あ、命懸けだったのは、オイラと姐御だけっスよ! 旦那程じゃないけど、結構な重傷負ったんスから!」

「その重傷を負った旦那を治癒したのは、僕だからね! ターニャと姐御治したのも僕なんだから、君等も僕に感謝すべきだろ!」

 オルガの手短過ぎる説明を、タチアナとタマラが、それぞれ補足する。地下室で聖水に満たされた浴槽に浸かる三人に、仮面者となっていたタマラが、赤い三日月からの光を照射していたのは、仮面者としての能力を使って、三人を治癒していたのである。

「助けて貰ったのは有り難いが、あまりにも手短過ぎじゃないか、その説明?」

 朝霞の言葉に、オルガは頷く。

「それなら、少し長くなるが……ちゃんと説明しようか。でも、どの辺りから話せばいいもんかねぇ?」

「オイラ達がデカい玉ごと大量の紅玉を、盗み出した辺りからで良いんじゃないっスか?」

「お前等も完全記憶結晶を、星牢ステラ・カルセルごと盗み出せたのか!」

 アナテマと八部衆が争う中、自分達以外にも完全記憶結晶を盗み出せていた聖盗団がいたのに、朝霞は驚きの声を上げる。元々がオルガから渡された情報なので、トリグラフがタンロン鉱山跡で活動していたのには驚きはしなかったが、朝霞達はトリグラフの存在に気付きもしなかったのだ。

「星牢って言うんだ、あの紅玉が入ってた玉」

 タマラの呟きから分かる通り、トリグラフの三人は星牢という名を知らなかったのだ。

「あたし達、実は……黒猫団が薬幇やアナテマの連中と揉め事起こす前から、マットチョイに通じてる坑道に潜んで、様子を窺っていたんだ」

「そしたら、いきなり天井が落ちて来て、おまけに赤いホプライト連中が熱線を撃ちまくって、マットチョイが火の海になったんで、オイラ達は慌てて地上に逃げたんスよ」

「――で、地上に出てから、僕等は隠れて様子を窺ってたんだけど、そしたらアナテマの連中が、その星牢というのを置いたまま、八部衆と戦い始めたんで……」

「その隙を突いて、あたし等は紅玉を盗み出したって訳さ。その星牢って奴ごとね」

 自慢げにオルガは胸を張る、豊かな胸を揺らしながら。

「幾らアナテマと八部衆が戦ってる隙を突いたとはいえ、良く盗み出せたな」

 トリグラフの三人が語って聞かせた、紅玉の星牢を盗み出した経緯を聞いて、朝霞は率直に驚きの言葉を口にする。黒猫団ですら、追撃して来る夜叉を朝霞が引き受けながら敗戦し、トリグラフに救われなければ死んでいた程に、星牢を盗み出す難易度は高かった。

 故に、紅玉の星牢を盗み出した上、自分を夜叉から救い出したトリグラフに、朝霞は驚いたのである。

「まぁ、黒猫団が夜叉を引き付けてくれたせいでもあるんだが、今回の盗みが成功したのは、基本的にはターニャの新しい能力のお陰かねぇ」

 オルガの言葉を聞いて、今度はタチアナが自慢げに胸を反らし、豊かな胸を揺らす。

「新しい能力? ひょっとしたら、交魔法の?」

 朝霞の問いに、タチアナは頷く。

「まだ不安定で、実戦で使うには厳しいかなと思ってたけど、チャンスだったんで使ってみたら、大成功したっス!」

「ハノイに来る前のトレーニング段階では、僕等の交魔法は、発動に失敗する場合もあったんだ。あの時の賭けにターニャが失敗していたら、紅玉を盗むのにも黒猫君を救うのにも、失敗していただろうし。ターニャの交魔法が発動したのは、運が良かった」

「ターニャの交魔法が成功すれば、あたしとトーマが失敗しても、逃げられはしたからね。まぁ、あたしとトーマの交魔法が成功しないと、黒猫を助けられはしなかったが」

 三人の話を聞いて、朝霞はタチアナの新しい能力が気になってしまう。

「どんな能力なんだ、その新しい能力って?」

魔術的迷彩マギヤ・カムフラーシュの、超強化版っス!」

 タチアナが自慢げに口にした魔術的迷彩自体は、朝霞も知っていた。魔術的な迷彩技術で、簡単に言えば姿を消してしまえる能力だ。

 潜入などには、かなり便利に使える能力なのだが、攻撃や移動が不可能になる上、魔力の消耗が激しい為、多用が出来なかったりと、制限が多い能力でもある。本人だけでなく、触れている仲間だと認識している人間や、手にしている物などの姿も消せる。

「魔術的迷彩が、移動しながらでも使える様になったり、鉄鋼巨人ギガンツキスタリ状態でも使える様になったんスよ!」

 鉄鋼巨人も、タチアナの仮面者の主要な能力だ。簡単に言えば、巨大ロボットを思わせる鋼鉄の巨人を作り出し、操る能力である。素材となる物質(鉄屑や壊れた魔術機器などを利用する)を事前に用意し、専用のタイニィ・バブルスの中に収納しておかなければ使用出来ない。

 かなりの攻撃力と防御力を兼ね備えているのだが、大柄であるが故に小回りが効かず、動きが素早い相手を苦手としている。トリグラフには、鉄鋼巨人以上の攻撃力と防御力を持つオルガがいるので、戦闘よりもドリルなどの搭載する多彩な工作機器を使った各種の工作を担当する場合が多い。


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