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昇龍擾乱 43

「落ち着け! これも幻影だ! 上に飛んで幻影の海上に出るぞ!」

 ジェームズは拡声器を使ってアパッチ達に指示を出し、混乱状態をを収めつつ、率先して海面の幻影に向かって上昇を始める。誑惑絶佳の影響のせいで、大声は海中の幻影の中では、本物の海の中同様に上手くは伝わらないのだが、近くのアパッチには伝わった。

 この場の指揮官であるジェームスのアパッチと、その周囲のアパッチ達が上昇を開始したのを見て、声が伝わらなかったアパッチ達も上昇を開始する。皆、ジェームズに倣って、乗矯術をベースに開発されたアパッチの空中機動用魔術機構……エルモービルを使い、海中の幻影の中を飛び始めたのだ(ちなみにエルモービルは、一定以上の魔術スキルが無い魔術師でなければ、まともに使えない程度にピーキーな代物)。

 アパッチ達による擬似太陽砲の支援砲撃が止んだ為、姿を消し始めた麗華に向けて、棒状の投擲器の柄を握り、ポワカは光の槍を投擲しようとする。だが、投擲の直前……斜め下から、藍色の二条の光線が、空気を震わせながら襲い掛かって来る。

 ジェット噴射音に似た騒音を伴う藍色の光線は、光の槍が装填された、アトラトルの投擲器部分を直撃。アトラトルの光の槍と投擲器は、光線により粉々に破壊し尽くされ、空色の光の粒子群を飛び散らせながら、消滅してしまう。

 光線の射線上に存在したのはポワカ本人ではなく、アトラトルであった為、ワパハは自動防御を行わず、アトラトルは破壊されてしまったのだ。ワパハは自動防御が発動する条件を設定出来るのだが、ポワカは自身の身体に深刻なダメージを与えそうな攻撃以上に、発動条件を設定していた為、魔術で作り出した武器であるアトラトルへの攻撃に対しては、自動防御を行わなかったのである。

 藍色の光線を放ったのは、海中……に見える地上にいる華麗。麗華の危機を察した華麗は、誑惑絶佳を利用して、アパッチ達を海中の幻影に没させて惑わし、支援砲撃を妨害しつつ、ポワカのアトラトルを藍双射撃で撃ち抜いたのだ。

 アトラトルが吹っ飛んだ衝撃で、ポワカは僅かにダメージを受け、空中での体勢を崩してしまう。そんなポワカに向かって、続け様に藍色の光線が襲い掛かって来るが、ポワカは回避運動に入り、紙一重といえる間合いで藍双射撃による攻撃を避け切る。

 ポワカに回避されはしたが、華麗の攻撃は無駄では無い。その間に麗華は体勢の立て直しに成功。ポワカの方を向いて、華麗の藍双射撃と全く同じ動きを見せ、ジェット噴射に似た音を発しながら、麗華は両腕から緑色に輝く、眩い二条の光線を放ったのだ。

 麗華が放ったのは、翠双射撃ツィシュアンシュージという、藍双射撃とは光の色が違うだけで、能力的には同じ光線魔術。二条の緑色の光線は青空を切り裂いて、藍色の光線を回避したばかりのポワカに襲い掛かる。

 ポワカは回避が間に合わず、上空から襲い来る二条の緑色の光線に、身体を撃ち抜かれそうになる。だが、今回はワパハが自動防御を行い、光線とポワカの間に割って入り、粉々に撃ち砕かれながらも、ポワカの身を守り通した。

 麗華と華麗がポワカ相手に攻撃を仕掛けている合間に、アパッチ同様に海中の幻影に没する状態になっていたバズが、乗矯術を発動して飛行を開始。誑惑絶佳に全感覚を惑わされつつも、何とか海の幻影からの脱出に成功。

 海面から飛び出すイルカの様に、幻影の水飛沫を上げながら、幻影の海から姿を現したバズの目に、空中のポワカを狙う、藍双射撃の藍色の光線が映る。美しく澄み切った海の幻影で有るが故に、強烈な光線を放つ華麗の姿は、海の幻影の中ですら隠れ切れてはいないので、バズは華麗の大雑把な位置を把握出来た。

 バズは幻影の海面上、十メートル辺りで空中静止しながら、即座に防御殻を解除。光線が発射されている辺りに揺らめいて見える、海中の幻影の中にいる華麗に、バズは左手の杖の先端を向ける。

「距離は十分、こちらが巻き込まれる可能性は無い!」

 杖の表面に、膨大な量の複雑怪奇な魔術式が浮き出る。そして、杖の先端にセットされた煙水晶粒が、気の抜ける様な音を立てながら消滅し、杖の先端部分から下に向け、大量の黒煙が噴き出る。

 続いて、消滅した煙水晶粒の代わりに杖の中から迫り出した、新しい煙水晶粒も同様に消滅し、大量の黒煙を発生させる。同じ事が何度も繰り返され、合計十個もの煙水晶粒が、大量の黒煙を発生させながら消滅し、膨大な魔力を杖にチャージずる。

 単純計算で重力弾の十倍の魔力を必要とする魔術を、バズは使用しようとしているのだ。杖に浮き出している魔術式の量も複雑怪奇さも、重力弾の時とは比べ物にならない。

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