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昇龍擾乱 27

(――羽根?)

 目に映ったのは、十数枚と思われるカラフルな羽根だった。先程まで枯草色のヘアバンドを飾っていた、カラフルな十数枚の羽根が、ヘアバンドを離れてポワカの周囲を飛び回っていたのだ。

(あの羽根が、六芒手裏剣を破壊したのか?)

 確認する為に、朝霞はもう一度六芒手裏剣を取り出すと、次々とポワカに向かって打つ。青い閃光となってポワカに迫った六芒手裏剣は、素早く動き回るカラフルな羽根に迎撃され、先程と同様に青い光の粒子群に変えられてしまった。

(対空ミサイルかよ!)

 六芒手裏剣を全て迎撃した羽根を見て、敵の戦闘機やミサイルを撃ち落す対空ミサイルを、朝霞は思い浮かべる。もっとも、迎撃したら壊れる対空ミサイルと違い、羽根の方は六芒手裏剣を迎撃してからも健在で、ポワカの周囲を守る様に漂っているのだが。

(自動的に攻撃から自分を守る魔術か? 今……略式で発動させた訳じゃなさそうだし、元々発動していた防御用の魔術機構ってところか)

 朝霞が推測した通り、ポワカの羽根飾りは攻撃を察知し、自動的に迎撃する種類の魔術機構……ワパハ。手裏剣を迎撃する為、ポワカが即座に発動した訳では無く、通常は魔力を殆ど消費しない待機状態で頭を飾っているのだが、身に迫る攻撃を察知すると一瞬で起動して、攻撃からポワカを守るのだ。

 ワパハはカレタカなどの防御殻程、強力な攻撃に耐え切る能力は無いのだが、起動の速さと自動防御が可能な上、絶対防御能力まで持ち合わせている。奇襲攻撃からポワカを完全に守り通せる、優れた防御用魔術機構であり、欠点といえば製作に手間と時間と、金がかかり過ぎる事ぐらいだろう。

 鳴神を放った後、朝霞達の元に戻っていた神流も、朝霞に続いてポワカに攻撃すべく身構える。だが、突如ポワカが妙な動きを見せた為、警戒して攻撃を思い止まり、神流はポワカの様子を見る。

 ポワカが見せた妙な動きとは、明らかに攻撃や防御とは無縁の動き。ただ単に左腕を上に向け、天井を指差すだけで、何らかの魔術を発動する為の動きとは思えない。

「防御殻で守り、上を目指せ!」

 左手で天井を指差したまま、ポワカは朝霞達の方を向くと、言葉を続ける。

「私より先に、飛んで逃げろ!」

 ポワカの言動の意味が分からず、朝霞達は反応に困る。天井を指差したのだから、天井に何かあるのだろうかと、朝霞達は天井を見上げるが、視界に入るのは厚い岩盤で出来た天井だけ。

 厚さが十メートル以上有るだろう、掘るのさえ困難な岩盤層が、そのままマットチョイの天井として利用されているのだ。天井までは周囲の壁面に設置された、照明の光が行き届いていない為、暗くて見難いのだが、何の異常も朝霞達には視認出来ない。

「別に、何かが起こってる訳じゃなない……」

 朝霞が呟いている途中、何も怒っていない様に見えていた天井で、何かが起こってしまう。突如、まるで蜘蛛の巣の様に、天井全体に無数の亀裂が走ったのだ。

 直後、暑い岩盤で出来た天井は、あっさりと抜け落ち始める。皹割ひびわれて砕けた天井は、大小様々な大きさの無数の岩石群となり、轟音と共に土砂降りの雨の様に、マットチョイの底にいる朝霞達の真上から、降り注ぎ始める。

「な、何だァ?」

 間抜けな声を上げつつ、迫り来る危機に対処すべく思考を巡らせた朝霞は、すぐに気付く。先程のポワカの発言の意味を。

(防御殻で身を守れって、落ちて来る天井から守れっていう意味だったのか? だとしたら、あいつ……天井が崩れるのを知っていて、俺達に助言したって事に……)

 心の中で呟きつつ、朝霞は天岩戸に向けて跳躍する。既に幸手は朝霞と神流が、天岩戸の中に逃げ込める様に、防御壁を数枚外して待ち構えていたので、開いている穴から天岩戸の中に、朝霞は飛び込む形になる。

 朝霞に続いて、神流が天岩戸に飛び込んだのを確認してから、幸手は外していた防御壁をを元に戻し、穴を塞ぐ。あっという間に黒猫団の三人は、天岩戸の中への避難を終える。

「狭いな!」

 神流は窮屈な天岩戸の中で、愚痴を零す。三人なら余裕で乗れる天岩戸なのだが、今は巨大な星牢も積んでいるので、天岩戸の中は割りと窮屈な状態になっていた。

「来るぞ! 全力で上に飛ばせ!」

 朝霞が幸手に指示を出した直後、大量の岩石群が土砂降りの雨の如く、天岩戸の上に落下して来る。岩石群の直撃による激しい衝撃が、続け様に天岩戸を襲い、まるで大地震にでも遭っているかの様に、天岩戸の中は激しく揺れる。

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