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昇龍擾乱 26

 神流は二刀を前方に突き出し、中段に構える。膨大な魔力を費やして作り出した、魔術的な稲妻を纏った二刀は、激しくスパークし始める。

 耳をつんざく雷鳴と共に、二刀はSF映画に出て来るビーム砲の砲身の様に、眩いばかりの光を前方に放つ。稲妻のシャワーはナジャの巣に襲い掛かり、辺りを金色の光で染め上げる。

 至近距離に落雷したかの如き轟音を響かせながら、鳴神はマットチョイの南側の壁面を直撃。岩の破片や砂礫が飛び散り、煙幕の如き大量の土煙を発生させ、マットチョイ内にいる者達の視界は著しく悪化。

 神流が舌打ちをしながら、続け様に旋風崩しを放ち、土煙を強引にホァンダオの方に吹き飛ばしたので、視界はすぐに回復。マットチョイ南側の状況が、明らかとなる。

 マットチョイ南側の壁に、直径二十メートル程のクレーター状の大穴が穿たれ、崩れ落ちた岩壁の破片群が、あちこちに散らばっている。鳴神の稲妻が撫でた地面も深くえぐられて、クレバス状の大穴が開いてしまっていた。

 だが、それでもナジャの巣は何事も無かったかの様に、殆ど鳴神が放たれる前の状態のまま、存在し続けていた。

「鳴神でも、駄目なのか……」

 一切ダメージを与えられなかったナジャの巣を眺めながら、神流は声を絞り出して呟く。現時点での最強の技である鳴神が、ナジャの巣に歯が立たなかったのが、神流には悔しかったのである。

 だが、神流の攻撃は無駄では無かった。殆ど鳴神が放たれる前の状態のまま……という事は、僅かにナジャの巣の姿は変化していたのだ。

 変化したのは、鳴神に穿たれた地面や壁の穴の辺り……穴の中にも、ナジャの巣の糸は伸びていたのである。ナジャの巣の糸は、天井や地面……そして東西の壁などの表面に付着しているのではなく、その奥深くまで侵入しているのだ。

 その事に気付いた朝霞は、心の中で呟く。

(あの糸が、地面や岩壁の奥深くまで食い込んでいるって事は、壁に穴開けてナジャの巣を回避するのは、無理だな……)

 マットチョイから逃げ出す方法の一つとして、朝霞はナジャの巣を破壊せず、その周囲にある壁に天岩戸が通れる大きさの穴を開け、穴を通り抜けて逃げる策を、思い付いていた。神流の攻撃のお陰で、その策は実施する前に不可能だと判明したので、朝霞にとっては神流の鳴神による攻撃は、無駄では無かったのである。

「破壊も除去も回避も無理となると、術者本人を倒すか……ナジャの巣を解除せざるを得なくなる程度に、ポワカを追い込むしか無いな」

 魔術師を倒しても、解除出来ない魔術もある(魔術師から完全に独立した魔術式により、発動した魔術の場合。民生用の魔術機構などは、基本このタイプ)。だが、魔術師の身体の何処かで、略式起動に使ったシンボルが輝いている魔術なら、魔術師を倒すか……発動中の魔術を維持出来ない程の負荷をかければ、魔術は解除させられる可能性が高い。

 ちなみに、サオトーで糸にも魔術式が存在しているのを、朝霞は視認しているので、奪う蒼や与える黒により、ナジャの巣を解除したり異常動作させる事は可能。だが、触れた物を即座に切り裂くナジャの巣の性質上、ほぼ確実に手を失う羽目になるので、流石に朝霞も奪う蒼や与える黒を、ナジャの巣相手に使う気にはなれないのだ。

 朝霞は即座に、忍合切から十枚の六芒手裏剣を取り出すと、一応致命傷にならぬ様に、ポワカの両腕両脚を狙って、次々と六芒手裏剣を打ち始める。上手に横手……下手など、様々なフォームで、上下左右に打ち分けられた六芒手裏剣は、マットチョイのあちこちに仕掛けられている、照明用の魔術機構が放つ光を浴び、青く煌きながらポワカに迫る。

 だが、青い閃光の様にポワカに迫った六芒手裏剣は、ポワカの身体に辿り着く前に、その全てが破壊され、青い火花を散らす花火の様に飛び散ってしまった。ポワカの周囲を何かが飛び回り、六芒手裏剣を全て破壊してしまったのである。

 朝霞は目を凝らし、六芒手裏剣を破壊した物が何かを確認しようとする。

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