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煙る世界と聖なる泥棒 02

(――暫く使われてないみたいだな)


 少年が開いた窓から射し込む月明かり以外、光源は無いに等しい為、室内は暗い。

 それでも夜目が効く少年の場合、月明かりだけで十分に室内の様子の把握が可能。


 室内は整えられているが、吸い込んだ空気が明らかに淀んでいる。

 窓が開いた事により、生まれた空気の流れが舞い上げたホコリが、月明かりに煌めいている……。

 それらが、部屋が暫く使われていないだろうと、少年が判断した理由だ。


 少年はコートを脱いでリュックにしまい込むと、鎧戸とガラス窓を閉じて、一度辺りを真っ暗な状態にする。

 その上で、ポケットからオイルライターを取り出して着火、ライトの代わりにする。


 室内には貴金属製らしき金目の物もある感じだが、少年は営利目的で盗みに入った訳では無いので、そういった物には目もくれず、部屋のドアを開けて、廊下に出る。

 一応、聞き耳を立てて、廊下に人の気配が無いのを確認した上で。


 闇に閉ざされていた廊下が、ライターの灯りで部分的に橙色に染まる。

 その色付いた部分は少年と共に、廊下を移動する。


 部屋同様、少年以外に人気の無い廊下の空気は淀み、ホコリっぽい。人が普段利用していない証拠だ。


 そんな廊下を忍び足で歩き続ける内に、少年は階下に通じる階段を発見、下り始める。

 少年が狙っている獲物は、この屋敷の階下……地下室にある事が、下調べにより事前に分かっていた。


 とある組織が、非合法な品を扱う裏オークションで、とある品物を競り落とした。

 少年も狙っていた、その品物を、一時的に隠しておく場所として、この港街の郊外にある、組織の所有する物件の一つである、この屋敷が選ばれた事を、少年は知ったのだ。


 より正確に言えば、少年はオークション会場に忍び込んで、その品物を盗むつもりだったのだが、その会場は警備が厳重すぎて、盗みは失敗。

 そこで、少年は落札した組織が品物を運び出す自動車を追跡し、この屋敷の存在を知ったのである。


 組織の本部に運び出されてからより、この暫定的な置き場である屋敷の方が、盗み易いのは確実。

 故に、少年は急いで屋敷に関する情報を徹底収集、かって住んでいた貴族が貴重品を所蔵する為に、屋敷の地下に巨大な金庫の如き金庫室を作っていたのを知った。

 その金庫室に、組織は品物を保管しているだろうと目星をつけ、少年は今宵……屋敷に忍び込んだのである。


(――そろそろ、人がいる階だな)


 心の中で呟きつつ、少年はオイルライターの火を消して、ポケットにしまう。

 場所は三階と四階を繋ぐ階段の踊り場……外から見て分かっていた通り、三階以下は人がいるらしく、外壁同様の白い漆喰の壁の各所に設置されているランプのせいで、暗くは無い。


 人の気配だけでなく、雑談らしき声も廊下を響いて来る。

 屋敷の外を警備している者達と、ほぼ同様の服装や装備の男達の姿が、廊下に三名ほど確認出来る。


(廊下にいる連中は、やり過ごせるだろうが……)


 緊張で表情を強張らせつつ、少年は黒猫の様に音と気配を消したまま、手摺り越しに階段の下の様子を窺う。

 すると、三階と二階の間の踊り場に立っている、警備の者達の姿が、少年の目に映る……しかも二人。


(流石に、こいつらはやり過ごせそうにないな。だからといって、他の階段探しても……そこにも当然、警備の連中はいるだろうし)


 やり過ごすのは無理で、他の階段も条件は変わらない以上、二人の警備員達とは、遭遇せざるを得ない。

 意を決した少年は、廊下にいる連中の目線が、階段から逸れた瞬間を見計らい、猫の様に無音で階段を駆け下り、踊り場で雑談を交わしていた警備員達に、襲い掛かる。


「!」


 二人の警備員の間に、黒い影が滑り込む。

 腰に携えた武器の柄に手をかけつつ、驚きの声を上げようと、警備員達が口を開きかけた瞬間、黒い影と化していた少年が繰り出した、両手による手刀が、警備員達の首筋を打ち据える。


 軽い呻き声を上げつつ、頚動脈を狙い打ちされた警備員達は、一瞬で失神し、その場に崩れ落ち始める。

 だが、少年が二人の腕を掴んで支えた為、勢い良くではなく、音も無くゆっくりと、その場に眠る様に倒れ込む。


 勢い良く倒れたら、音を響かせて、他の警備員達に気付かれる可能性もあるし、倒れた際に打ち所が悪くて、必要以上のダメージを与えてしまう可能性がある。

 相手が非合法な組織の相手とはいえ、殺したり……必要以上のダメージを与えるのは、極力避けたいと少年が考えているが故の、行動だ。


 少年には元々、武術の経験は無かったのだが、相手の身体を傷付けたり、殺したりする事無く、頚動脈を打ったり絞めたりして、気を失わせる技を身につける必要性を感じた。

 故に、少年は武術に通じている仲間に教わり、鍛えられたのである。


 少年が身に付けている武術の技の数は、武術に通じている仲間に比べれば、遥かに少ない。

 だが、人間離れした素早さと、相手の隙を突く能力の高さにより、不意打ちで相手を失神させるだけなら、武術に通じている仲間に近い技量が、今の少年には有る。


 二人の警備員を失神させた少年は、そのまま階段を下り続けた。

 極力、警備員達に見付からぬ様に気をつけつつ、それでも避けられなかった六人程の警備員達を、手刀の一閃で失神させた上で、程無く……地下室前に辿り着いた。

 屋敷の中は大抵、壁や天井部分は白い漆喰、床……フローリングやドアは黒味がかった赤茶色をしたローズウッドなのだが、地下室は趣が大きく異なる。

 重厚な消炭色けしずみいろの、一目見て頑強な金属だと分かる素材で、天井や壁……床が作られている。


(軍艦みたいだな……)


 以前、忍び込んだ経験がある、至る所が金属で出来ていた軍艦の事を、地下室を見渡しながら、少年は思い出す。

 既に地下室の床には、五人の警備員達が倒れている……地下室に下りた直後、階段にいた警備員達同様、手刀の一撃で少年が失神させたのだ。


 屋敷の他の場所とは違い、照明は暖かみのある光が特徴のランプではない。

 やや青味がかった白い色の光が、天井全体から放たれ、地下室内を照らしている。


(――発光魔術が天井に施されているのか)


 天井から放たれる光は、少年の読み通り、魔術によるもの。

 光のせいで見え難いとはいえ、発光魔術用の魔術を発生させるシステム……魔術機構まじゅつきこうを使った、照明用の魔術機器の存在を、天井を見上げた少年は視認した。


(照明の魔術機器への交換が、余り進んでいない建物みたいだが、地下室は交換済みなんだな)


 この世界でメジャーな魔術を使う魔術機器は、使用時に室内用のランプ以上の煙が出るので、換気システムとセットでの導入が必須。

 故に、照明だけの為に魔術機器を導入する建物は、余り無い。


(他にも色々、魔術が仕掛けられてるからこそ、ここだけは照明が魔術機器になってるんだろう。防犯用の魔術も警戒しないと)


 少年は天井から、地下室の奥に目線を移す。百科事典程の厚みのある、金属で出来た大きな扉が、そこにはあった。


 扉には、人の頭程の大きさがある円盤状のダイヤルが付いている。少年は扉に歩み寄り、円盤状のダイヤルと扉を見比べる。


(ダイヤルロック式の鍵とは、ベタな金庫室だねぇ。強引にぶち破ったら、流石に音や衝撃で、忍び込んでるのがばれるだろうから、面倒だけど解除するしか無いか)


 一度、軽く溜息を吐いてから、扉に左耳を当てつつ、少年はダイヤルを弄り始める。

 聞き耳を立てつつダイヤルを慎重に回し、扉の中……ダイヤルロック式の鍵から発せられる、微妙な音の変化を、少年は聴き取る。


 時計の秒針の音に似た、ダイヤルの回転音……そのトーンの微妙に異なる部分で、少年はダイヤルを反対側に回す。

 そして、また回転音のトーンが変わると、反対側にダイヤルを回すという作業を五回、少年が繰り返した後、ガチャリという音を立てて、ダイヤルロック式の鍵が解除される。


(――俺に解除出来ない鍵は、余り無いけど……ちょっと簡単過ぎるな、こいつは)


 貴重品が保管されている金庫室にしては、歯応えが無さ過ぎる事に、少し戸惑いながら、少年は鍵が解除された金属製の重いドアの取っ手を掴み、引く。

 重荷を引き摺る様な音と、家が軋む様な音が混ざり合った様な音を響かせながら、ドアが開く。


(強固な地下金庫室があるとは言っても、古い建物だから防犯設備は古いだろうし、組織からしても、余り使われてない拠点らしいから、防犯設備も強化してないのかも)


 歯応えの無さを正当化する理屈について考えながら、開いたドアの向こうに、少年は右足を踏み入れようとする。


(!)


 だが、接地する直前、少年は驚き、右足を止め……慌てて引き戻す。驚きと焦りで、胸の鼓動が一気に速まる。


(――あっぶねー! 踏んでたら……死んでたな、おい!)


 扉の向こうの床を見下ろし、額に冷や汗を滲ませながら、少年は安堵する。

 少年の目線の先……消炭色の金属板が敷き詰められた床には、一見すると何も無い様に見えるのだが、それは普通の人間が見た場合だけである。


 実際は、複雑怪奇な文字や紋様が、書き込まれているのだ。

 ルーン文字と呼ばれる文字に良く似た文字……エリシオン魔術文字により記述される、エリシオン式魔術式の純魔術式が。


 魔術を発生させるシステムの根本である魔術式は通常、物質に固定化され、魔術機構として使用される。

 故に、魔術の燃料を魔術機構に供給すれば、誰でも魔術を利用する事が出来る。


 だが、魔術自体に通じている魔術師などは、魔術の燃料である特定の種類の結晶を、石筆(例えば、ろう石の様な物)の様に用いて魔術式を記述するだけで、魔術を発生出来るのだ。

 こういった、物質に固定化されずに記述された魔術式……純魔術式は、誰にでも視認出来る魔術機構とは違う。

 純魔術式は、魔術師を名乗れるレベルまで魔術を習得した者か、何らかの原因で魔術的な能力を身につけた者達が、見ようとしている場合だけしが、視認出来ない。

 魔術師を名乗れる程度に、魔術に通じているとはいえ、少年の場合、純魔術式が見えるのは、基本的には後者の理由による。

 ちなみに、純魔術式は大抵、円形の記号を描き、その内側に記述される為、魔術円と呼ばれる場合もある。


 そして、魔術機構同様、純魔術式も黒煙を発生させる。

 だが、少年の視界にある魔術式は、今現在は待機中なので、黒煙を出してはいない。


 待機中ではあるが、誰かが踏めば起動し、黒煙を発生させる可能性が高い。

 無論、発生させるのは黒煙だけでは無いのだが。


(踏んだら爆発する、地雷魔術……。簡単に解除出来る扉のダイヤルロックを解除して、調子に乗って油断した状態で扉を開いた侵入者を、爆殺するって算段だな)


 この地下の金庫室は、二重扉になっていて、手前の扉と奥の扉の間が、部屋の様になっている。

 そして、その床には踏んだ者を爆殺する種類の純魔術式が、一面に記述されていたのだ。


 床に記述された純魔術式を分析し終えた少年は、ポケットから小さな青いペンを取り出し、キャップを外す。

 ペンの先には、米粒程の大きさの黒っぽい結晶……煙水晶けむりすいしょうがはめ込まれている。


 煙水晶こそが、この世界の魔術における主な燃料であり、純魔術式を記述する主な筆となる存在なのだ。

 ちなみに、煙水晶を筆先として使用し、記述する場合は、仄かな黒煙が発生する。


(スイッチが有るタイプだから、こいつで上書きして、純魔術式のスイッチ切るとするか)


 床を埋め尽くす純魔術式は、発動するかしないかを、簡単に切り替えられるタイプのものだった。

 そうでないと、金庫室に出入りする度に魔術式を起爆させて消し、また記述し直すという手間とコストがかかる為、スイッチが有るタイプの魔術式を使用したのだろうと、少年は推測する。


 スイッチの切り替えは、煙水晶による純魔術式の上書きにより、行う。

 固定化された魔術機構を上書きするのは難しいが、固定化されていないが故に、純魔術式自体は、上書きが容易だ。


 純魔術式の一部に、最後に書き込まれた文字や数字……記号により、スイッチを切り替えられる様になっている。

 床に記述された地雷魔術の場合、魔術式の中央部分に記された、最後の数字が奇数ならスイッチがオン、偶数ならオフになる。


 何かが直接触れ、侵入者だと判断される重さを感知した場合、地雷魔術の魔術式は起爆する。

 しゃがみ込んだ少年が手にした、魔術式を書き換える為のペンの先にある煙水晶が、純魔術式に触れた程度では、地雷魔術は作動しない。


 少年は煙水晶をペン先としたペンで、純魔術式の中央に、エリシオン魔術文字で偶数を書き込み、手元に黒煙を発生させながら、次々と床の地雷魔術のスイッチをオフにしていく。

 一分もかけずに少年は、手前の扉と奥の扉の間にある、地雷魔術の幾つかのスイッチをオフにして、奥の扉に辿り着ける状態にし終えた。


 スイッチを切ったとはいえ、一応は確認が必要だ。

 それなりの重さがある背負っていたリュックを、少年は少し後退りした上で、地雷魔術の純魔術式の上に叩き付ける。

 リュックの重さだけでは人の重さには足りないが、叩き付けた分の力を加えて、人の重さだと地雷魔術が判断するのを狙って。


 リュックは鈍い音を立てながら、魔術式が記述された床に当り、転がる。

 だが、地雷魔術は作動せず、爆発は起こらない。


 地雷魔術のスイッチがオフになっている事に安堵しつつ、少年は扉の向こうに足を踏み入れる。

 リュックを拾って背負いつつ、地雷魔術の純魔術式の上を歩き、少年は奥の扉の前に移動する。


 手前の扉とは違い、奥の扉はダイヤルロック式ではなく、鍵穴があるタイプの鍵。

 しかも、扉自体の開閉を妨げ封じる、封印魔術の一種……鍵魔術が、扉自体にも仕掛けられていた。


 魔術機構より目立たない、純魔術式という形で。


(まず、魔術の方を先に片付けるか)


 ペンを手にしたままである為、そのまま魔術の解除を、少年は優先する。

 扉に書き込まれた、少年と身長と同じくらいの直径がある円形の純魔術式に、少年は目をやり……分析する。


(ずっと閉じたままではなく、開閉するのが前提の場所に仕掛けられている奴だから、オフにするスイッチがある筈なんだが……)


 封印魔術の中には、解除されない前提の物もあり、スイッチ自体が存在しなかったり、少年の能力では解除自体が不可能な物もある。

 だが、この金庫室の場合は、開閉するのが前提である為、オフにするスイッチがあるタイプの、事実上の鍵として機能する封印魔術である、鍵魔術が仕掛けられているのだ。

 おそらく、暫定的な保管場所として利用されているからだろうと、少年は推測する。


(スイッチは、上下左右に中央の五箇所……オフにする順番間違えると、開かないどころか、何か別の機能が仕掛けられている可能性もあるから、気を付けないと)


 少年は純魔術式の流れを、慎重に読む。眉間に皺を寄せ、二分程……純魔術式と睨めっこを続けた挙句、少年の表情は弛む。


(――読めた! 上、中央、右、下の順で……左はトラップ、弄っちゃ駄目なスイッチだ!)


 即座に、少年はペンで純魔術式のスイッチを、上、中央、右、下という順番で、偶数に上書きしていく。

 少年の手元には、黒煙が発生するが、少量だった為、すぐに空気と混ざって、消えた様に目立たなくなる。


(これで、鍵魔術の方は解除された筈だ。次は普通の鍵の方を、解除しないと……)


 使い終えたペンにキャップをかぶせ、ポケットにしまい込むと、少年は腰をかがめて鍵穴を覗き、鍵のタイプを分析する。


(ディスクシリンダー系だし、まぁ……壊さないでも、何とかなるか)


 少年はリュックから、先端が様々な形状になっている、細い金属の棒のセットを取り出すと、その幾つかの先端を鍵穴に挿し込み、鍵の内部を弄り始める。

 すると、大した時間もかからずに、鍵は軽い金属音を響かせながら、解除される。


(――昔、ニュースとかで見たピッキング犯みたいだな、今の俺)


 こちらの世界に来る前に、テレビのニュース番組などで目にした、ピッキング犯がドアの鍵を解除する場面の再現映像の事が、少年の頭に甦る。

 そういったテレビ番組などで紹介された、ピッキングという鍵解除技術に使われるピッキングツールと、少年が用いる道具は、良く似ていた。

 この世界では、泥棒の耳かきと呼ばれている、道具なのだが。


 使い終えた道具……泥棒の耳かきを、リュックの中にしまうと、扉に耳を当て、扉の向こうの様子を窺う。

 だが、扉も壁も厚過ぎるせいか、扉の向こう側の音は聞こえない。


 気配だけでも察してみようかと、全ての感覚を研ぎ澄ませてみる。だが、鋭敏な少年の感覚でも、扉の向こうの気配は察せられない。


(ここの扉や壁……厚過ぎるんだよ)


 心の中で愚痴りながら、少年は気配を読むのを諦める。

 扉の向こうの様子が分からなかろうが、目的の物がそこにある以上、少年は扉を開けて中に入らなければならない。


(ま、ここまで来て……今更止める訳にもいかないからな)


 覚悟を決めて、少年は扉の取っ手に手をかけ、強く引く。重量感のある金属製の扉が、軋む音を立てながら、開き始める。


 緊張で鼓動が早まり、全身から汗が滲む。

 この屋敷で、最も警戒されているだろう、目的の場所に入ろうとしているのだから、当然といえる身体の反応だ。


 開いた隙間から、少年は扉の向こう……金庫室の中の様子を窺う。

 地下室の他の場所同様、暗くは無い。青白い光の下に、幾つかの人影を、少年は視認する。


(――ここにも警備の連中がいたのか!)


 警備員が金庫室の中にいただけでも、十分に焦る理由になるのだが、その人影が見せた動きは、更に少年を焦らせる。

 開き始めた扉に気付き、少年の方を向いた感じの動きを、人影は少年に見せたのだ。


 扉を開けた以上、金庫室の中にいる警備員達は、少年の侵入に気付いても、おかしくは無い。

 気付かれたのなら、他所に連絡される前に気絶させなければ、目的を達成するのが困難になる。


(やばいッ!)


 少年の鼓動が一気に速まり、全身から嫌な汗が噴き出る。

 迷っている時間など無い、どうするのか、即断しなければならない場面。

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