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昇龍擾乱 12

「蒼玉の星牢が、最初にマットチョイに入って来たのを確認した時点で、変身して仕掛ける」

 確認するまで変身しないのは、変身時に発生する炎や煙で、気付かれるのを避ける為。蒼玉がポワカより先に現れない限り、すぐに奇襲をかけたりはしないので、その場合は炎や煙を発生させ、居場所を気付かれるのはまずい。

「俺と姫でアパッチを倒すから、巫女は即座に天岩戸で星牢を運べる様に、準備しといてくれ」

 朝霞の言葉に、神流と幸手は頷く。会話を交わしながらも、三人は胸元のミニボトルの中から、蒼玉粒と煙水晶粒を一粒ずつ取り出して右手に持ち、左手には仮面に変える、それぞれの帽子を手にしている。

 何時でも変身出来る準備を整え、朝霞達はマットチョイの中を見下ろす。マットチョイに通じる坑道は多く、どの辺りから現れるかは分からないので、緊張の汗に掌を濡らしつつ、マットチョイの至る所に三人は目をやる。

 そして三人は、ほぼ同時に視覚に捉える。空色の二体のアパッチに転がされながら、北側の壁に口を開けている坑道から姿を現した、大きな青い球体を。

「――行くぞ!」

 朝霞は声をかけながら、左手に持つキャスケットに素早く蒼玉粒で六芒星を描いて仮面に変えると、坑道を跳び出して宙に舞いながら仮面を被る。そのまま空中を落下しながら、朝霞の全身は青い炎に包まれ、透破猫之神の姿に変わりつつ着地。

 二度目の空中での変身を終えた朝霞は、即座に煙水晶粒で額に五芒星を書き込むと、全身から噴出した黒い煙に包まれながら、交魔法を発動させる。

(今回の煙は、結構黒いな)

 視界を覆い尽くした黒煙を見ながら、朝霞は心の中で呟く。煙水晶を魔術に使う際、発生する煙の色には、薄い灰色から黒色まで、色の濃度に様々な差異がある。

 その差異は魔術ではなく、煙水晶自体の個性による。性能という意味での品質において、煙水晶粒には殆ど差が無いのだが、発生させる煙の色には、個性的な差があるのだ。

 故に、多数の煙水晶粒が使われる街中から、立ち上る煙の色は、灰色であっても濃さが違ったり、黒かったりする訳である。そんな煙水晶粒が発生させた煙を目にした朝霞の頭に、ふとポワカが魔術を使った際、空色の煙を発生させた光景が甦る。

(あの空水晶ってのも、煙水晶みたいに煙出してたな。煙の色は全然違うが、名前に水晶ってのも入ってるし、煙水晶と似た系統の記憶結晶なのかも……)

 頭に浮かんだ考えを、朝霞は即座に振り払う。

(そんな事、考えてる場合か! さっさと蒼玉の星牢を奪い取らないと!)

 朝霞は煙の中から跳び出して、五十メートル程離れた北側の壁に向かってダッシュする。朝霞に続いて、仮面者に変身しつつ着地した神流と幸手も、次々と交魔法を発動し、灰色や黒い煙の中から姿を現し、蒼玉の星牢に向かって突撃を開始。

 交魔法発動中の透破猫之神の移動速度は、桁違いに速い。朝霞達の侵入に気付いて、マットチョイにいた者達が騒ぎ出す前に、朝霞は既に北側の壁近くに辿り着いていた。

 アパッチ自身の身長よりも直径があり、ギリギリ坑道を通れる程に大きい星牢が邪魔になり、高速で迫り来る朝霞の姿を、二体のアパッチは捉えられなかった。

(まともに戦ってる暇なんて無い! ポワカが来る前に、瞬殺して奪い取らないと!)

 瞬殺といっても殺す訳では無い、一瞬で倒すという意味だ。まともに格闘戦をやったら、倒すのに時間がかかるかもしれないので、朝霞は魔術式を奪ったり与えたりして、アパッチを短時間で動作不可能にするつもりなのだ。

 朝霞は星牢をかわして右斜め前にダッシュし、空色のアパッチの左側に移動。奪い取る魔術式を探す為、この段階で初めて朝霞は、魔術式を奪う前提で、アパッチを見る事になった。

 以前、サオモックで偶然、身を潜めていた坑道の近くをアパッチが通った際、ほんの僅かな時間ではあるが、アパッチの外装に固定されている魔術式の一部を、朝霞は目にしていた。その際、エリシオン式の禁術や、流派すら分からない魔術の魔術式を、朝霞は多数視認していたのだ。

 故に、アパッチが禁術や禁忌魔術を使いまくっているらしい事を、朝霞は知っていたのだが、偶発的に一部を目にしただけに過ぎない。アパッチ全体の魔術式を至近距離で目にするのは、朝霞にとって初めての経験といえる。

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