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昇龍擾乱 05

 カレタカの完成を視認したポワカは、レイフに告げる。

「展開、終了」

 丁寧にポワカに一礼してから、ストップウォッチ機能がある腕時計と星牢の周囲を、レイフは交互に見る。

「――間も無く、星牢と光鎖の接続部……自壊を開始します!」

 レイフが声を上げると、サオトー内の空気が緊張で張り詰める。自分達の命を確実に守り通す筈の、絶対防御能力を持つカレタカが存在するとは言え、亜空間錨の破棄作業が、最も危険な最終段階に入ったので、サオトーにいる者達が緊張するのも無理は無い。

 誰も喋らぬ、無言の状態が十数秒続いた後、その時は突然訪れる。星牢と繋がる部分に亀裂が走ったかと思うと、光鎖は一瞬で爆砕したのだ。

 眩いばかりの閃光と轟音、サオトーどころか周囲の坑道ごと吹き飛ばせる程の爆発が発生した……のだが、その爆発が発生したのは、カレタカの中だけ。その凄まじい爆発の破壊力全てを、カレタカは受け止め……外部には漏らさなかった。

 無論、カレタカ自体も無事では済まない。その表面には無数の亀裂が走ったかと思うと、カレタカはシャボン玉の様に破裂し、光の粒子群となって消滅してしまったのだ。

 だが、絶対防御能力を持つカレタカは、耐久能力を超えた攻撃を受けて消滅する際、受けた全ての攻撃力を巻き添えにしながら消滅する。故に、カレタカの外部にいた者達は、凄まじい爆発によるダメージを、少しも負わずに済んだ。

 消滅したカレタカが残した光の粒子群は、上昇し続け……天井の中に姿を消して行く。カレタカを形成した光の粒子群が出現した際とは、正反対の光景となる。

 光の粒子群が全て消え去る頃には、爆発により発生した煙は、まだ空間に口を開けている穴に、サオトーの空気と共に吸い込まれてしまい、消滅したも同然の状態となった(煙が無い時は見え辛いが、口が開いている間は常に、空気を吸い込み続けている)。サオトーにいる者達や坑道に潜んでいる朝霞にも、サオトー内部の状況が、はっきり分かる様になったのだ。

 八つの星牢は無傷といえる状態だが、星牢と繋がっていた光鎖は跡形も無く消え去っていた。そして空間に開いていた穴は、爆発が発生する前に比べて数分の一程の大きさに縮小し、更に小さくなり続けていた。

「――光鎖の完全消滅を確認! 亜空間との再接続……間も無く切断されます!」

 星牢の辺りを見上げながら、レイフ声を上げる。そんなレイフの目線の先で、空間に開いた穴は、更に小さくなり続け……数十秒後、完全に消滅してしまう。

 すると、穴にサオトーの空気が吸い込まれていた事により、発生していたサオトーでの空気の流れが止まる。朝霞の潜んでいる坑道内の空気の流れも止まり、無風状態となる。

「亜空間との再接続、切断を確認! 亜空間錨の破棄作業、成功です!」

 レイフの声を聞いたサオトーにいる者達から、一斉に歓声と拍手が上がる。相当に危険な作業を、大きなトラブルも無く完遂したのだから、喜びの声は大きい。

 歓声が収まるのを待って、レイフは次の指示を出す。

「これで星牢は動かせる様になりました! 少し予定より遅れていますので、移送担当者は速やかに移送を開始して下さい!」

 坑道に避難していた多数のアパッチが、レイフの指示に応じて星牢の下に向う。

(――一体、こいつら何をしてるんだ?)

 一連の作業を目にしていた朝霞は、心の中で自問する。

(「これで星牢は動かせる様になりました」とか言ってるから、さっきの光る鎖みたいなので、あの星牢とかいうのをサオトーから動かせなくしていたのか?)

 目にした光景や、レイフの言葉などを思い出し、朝霞は考え続ける。

(つまり、亜空間錨の破棄というのは、サオトーから星牢を運び出せる様にする為、星牢と光る鎖の接続を絶つ作業ってとこか……)

 サオトー内部で魔術師達が協力して行っていた一連の魔術自体は、朝霞には理解出来ない高度な物ばかり。だが、絶対にサオトーから星牢を動かせない様に、星牢自体をサオトーに固定していた高度な魔術的手段を破棄し、星牢を動かせる状態にした、一連の作業の大雑把な本質を、朝霞は理解出来ていた。

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