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暗躍疆域 35

「ナジャの巣? 何よそれ?」

 知らない言葉なのだろう、華麗はタイソンに問いかける。

「ナ・アシュ・ジェイ・アスダァア(Na'ashje'Ii Asdzua)の巣……長いからナジャの巣って略される場合が多いが、マニトゥの魔術だ」

「マニトゥ……亜米利加あべいりか辺りの古流魔術流派だっけ? 良く知らないけど、強いの?」

 華麗の問いに、タイソンと緑のアオザイの青年は頷く。更に、緑のアオザイの青年は、説明の為に口を開く。

「数少ない精霊召還が可能な魔術流派で、強さという意味でなら相当に強いが、安定性とも無縁で扱い難く、エリシオン政府が禁忌魔術に指定し、滅んだと聞いていたが……」

 緑のアオザイの青年は、少しだけ考え込んでから、タイソンに問いかける。

「裏社会に潜んで生き延びていて、今回……薬幇に雇われたって事か?」

「いや、多分だが……違うな」

 問いに答えてから、タイソンはコーヒーを一口飲み、バイン・フォン・トムを一枚食べる。

「だったら、どういう事なのさ?」

 華麗に問われたタイソンは、バイン・フォン・トムをコーヒーで喉の奥に流し込んでから、答を返す。

「ナジャの巣を見ただけなら、マニトゥを受け継いだ魔術師を、薬幇が雇ったとも考えられるが、地下鉱山跡の中で……マニトゥで強化改造されているホプライトを、かなりの数見かけたんだ。しかも、エリシオン式の禁術を使ってマニトゥの不安定さを抑え、かなり安定的な動作が可能になっている奴を」

 タンロン鉱山跡で目にした光景を思い出しながら、タイソンは言葉を続ける。

「マニトゥを使いながら、安定的に動作するホプライトを多数揃えるなんてのは、薬幇に限らず裏社会の連中にゃ無理な芸当だ。薬幇を隠れ蓑にして、禁忌魔術や禁術に通じた特級魔術師を多数抱えている、別の組織が動いてると考えるべきだろう」

「そんな組織といえば、奴等しか思い浮かばないが……今回のブラックマーケットは、奴等の罠だと?」

 緑のアオザイの青年に問われ、タイソンは答える。

「――多分な。今まで表立った動きを見せていなかったのが不思議な位だったが、とうとう本格的に動き出したと考えておいた方がいい」

「裏で連中が動いていようが……いなかろうが、ちゃんと宝珠はあったんでしょ?」

 華麗の問いに、タイソンは頷く。

「――だったら、奴等の罠でも構わないじゃないか。奴等が強いといっても、所詮は人間の領域での話。僕等とは次元が違う」

 しれっとした口調で、華麗は続ける。

「僕等はただ、奪い返せばいいだけの話さ。わざわざ他所の世界まで出張って、この世界に運んで来た宝珠をね」

「ま、そりゃそうなんだが……多少は警戒しておいた方が良いって話だ。奴等は俺達が警戒すべき、数少ない存在の一つなんだし」

 タイソンの言葉を聞いて、何かを思い出したかの様に、緑のアオザイの青年が口を開く。

「警戒すべき存在といえば、今日の午後……交魔法使いの聖盗が騒ぎをおこしていただろ?」

「――ああ、妙な煙幕を使う奴だったな」

 問いに答えてから、余り興味も無さそうに、タイソンは一口コーヒーを飲む。

「タイソンがタンロン鉱山跡の調査に向った後、色々と目撃者に訊いて回ったんだが、あの聖盗……黒い猫を思わせる仮面をかぶっていたそうだ」

 タイソンは驚きの余り、コーヒーを口から噴出してから、緑のアオザイの男に問いかける。

「――例の黒猫か?」

「近くの屋根の上で見物していた野次馬連中が、何人か黒猫の様な仮面と黒装束を目にしている。黒猫団の黒猫である可能性は高いだろう」

 そんな二人のやり取りを耳にしてた華麗は、不思議そうに呟く。

「――情報の範囲だと、警戒する様な相手じゃないと思うけどね、例の黒猫は」

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