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暗躍疆域 31

 二十名程のホプライトや多数の警備用魔術機構により、サオモックは守られていた。そんな厳重な警備体制が敷かれたサオモック内では、更に百を越える数のホプライトが整備中だった。

 朝霞は魔術式を見ようと意識を集中し、サオモック内部を見る。すると、至る所に膨大な数の魔術式が仕掛けられているのが、朝霞には視認出来た。

 魔術機構だけでなく、魔術的素養が無い者には見えない魔術式による警備も、徹底して行われていたのだ。

(どうやら警備すべき場所を選んで、徹底的に警備体制を強化しているみたいだな。選択と集中って奴か……)

 だが厳しい警備体制以上に、朝霞がサオモックで驚かされたのは、ホプライトに施されている魔術式の数々だった。身を潜めている坑道の近くをホプライトが通ったので、ホプライトに固定されている魔術式の一部を、朝霞は視認出来た。

 朝霞が目にしたのは、禁術指定を受けている筈のエリシオン式の魔術だけでなく、朝霞には流派すら分からない、魔術流派の魔術式の数々。

(禁術や禁忌魔術で、ホプライトをチューンナップしてやがるんだ……)

 ベースと思われるのは、高い汎用性と改装の容易さから、様々なバリエーションが存在する軍用ホプライト……アレウス。裏社会にも相当数のデッドコピーが供給されているので、アレウスベースのホプライト自体は、裏社会でも珍しいという程では無い。

 だが、相当に技量が高い魔術師がいなければ、運用自体が難しい禁術や禁忌魔術を多用したホプライトなど、普通の犯罪組織は滅多に所有していない。その上、まるで蒼玉界におけるネイティブアメリカンのウォーボンネット(頭に被っていた羽根冠)思わせる頭部のパーツを装備するなど、朝霞には目にした事がない要素だらけのホプライトだったのだ。

 これまで相手にしたのとは、レベルが違う能力を持っていそうなホプライトが、多数揃えられているサオモックは、かなり厳重な封印魔術に保護されていた。朝霞が知らぬ魔術流派を含めた、数十の封印魔術が重ねて仕掛けられていたのだ。

 どんなホプライトなのか、近付いて調べる事すら、朝霞が諦めざるを得ない程に、サオモックの警備体制は厳重だった為、朝霞は他の空洞に移動を始めた。そして、次に最深部といえる、地下三百五十メートルの深さにあるサオトーに辿り着いたのである。

(何だ、ありゃ?)

 細い坑道の中から、サオトーを覗き込んだ朝霞は、驚きの声を上げそうになった。サオモック同様、体育館程の広さと高さがあるサオトーの中には、八つの巨大な球体が浮いていたのだ。

 球体それぞれの色は全て別。地面から数メートルの辺りを、ふわふわと浮いていて、全て大きさも異なっている。

 良く見ると球体自体は無色透明であり、色付いて見えるのは……透明な球体の中に収納されている、多数の球体の色のせいだと分かる。その多数の球体とは、完全記憶結晶。

 巨大な球体の中には、それぞれ同種類の完全記憶結晶が多数、収納されているのだ。赤く見える球体には紅玉、黒く見える球体には煙水晶、緑に見える球体には翠玉……といった感じで、八種類の完全記憶結晶が種類ごとに透明な球体に、詰め込まれているのである。

 蒼玉が収納された青い球体も、宙にふわふわと浮いていた。その青い球体に目が吸い寄せられた朝霞は、何故か妙に懐かしさを感じてしまう。

 だが、その理由も分からない、妙な懐かしさに捉われている暇など無い。朝霞は即座に状況を確認し、思考を巡らせ始める。

(数は事前の情報通り、万単位有りそうだが。何で……どうやって浮いてるんだ?)

 何らかの魔術的な手法によるものだろうと考えた朝霞は、魔術式を見ようとして意識を集中。すると、僅かに魔力を帯びた細い糸が、サオトー内部の殆どの部分に、雲の巣の様に張り巡らされているのを、朝霞の視覚は捉えた。

 視力が徹底的に強化されている朝霞ですら、意識を集中しなければ視認出来ない程に細い糸に、胡麻粒より小さな文字で、魔術式が記述されているのだ。無論、記述されている魔術式の内容など、文字が小さ過ぎて朝霞には読み取れない。

(糸に魔術式書き込める奴なんているのか。米粒にお経書く書道家じゃあるまいし……無茶苦茶だな)

 想像の域を超えた魔術式の使い方に驚きつつ、朝霞は状況の確認を続ける。球体は糸により釣られたり、引っ掛けられて浮いている訳では無く、糸からは離れた状態で宙に浮いているのを、朝霞の目は確認した。

(糸の魔術式自体が、宙に浮くフィールドか何かを形成しているのか? それとも、球体の方に何か仕掛けが?)

 魔術式の文字が読めない糸の方を見ても、その答は得られないので、朝霞は宙に浮いている球体の方に目線を移動。球体は一見すると無色透明なのだが、魔術を見ようという意志を持った朝霞の目には、その本来の姿を露にする。

 目に映るのは、異常な数の魔術式。球体は幾つもの層に分かれていて、その層ごとに膨大な数の魔術式が記述されていたのだ。

 しかも、朝霞に理解出来るのは、エリシオン式の封印魔術の中でも高度な物を、更に異常な形に書き換えた、半分程の魔術式だけ。おそらくは数百という数で仕掛けられているだろう、異常な数の魔術式の殆どは、朝霞には初めて目にするものだらけだった。

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