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暗躍疆域 28

「――お前が彼女というと、微妙に違和感あるよな。彼女というよりは彼氏に見えて」

 オルガの言葉に、タチアナは頷く。

「トーマは男の子にしか、見えないっスから」

 タチアナの言うトーマとは、タマラという名の愛称。トリグラフ三人目であるタマラ・レズニナの、仲間内における愛称がトーマなのだ。

 オルガとタチアナは、タマラの胸に目線を送る。タチアナと同い年なのだが、膨らみが全く存在していない少年の様な胸に。

 髪や目の色は、オルガやタチアナと同じ赤だが、ボーイッシュなショートヘアー。肌の色はタチアナ同様に白く、整った顔立ちをしているのだが、女性的な魅力は皆無。

 タチアナと同程度の長身であり、男装していないのに美少年にしか見えないのが、タマラの外見的特徴だ。一人称が「僕」であるのも、タマラが少年と間違われ易い理由の一つである。

「まぁ、僕は別に構わないんだけど、女っぽく見られなくても」

 しれっとした口調で、タマラは続ける。

「男の子っぽく見える僕みたいなタイプの方が、姐御みたいに女アピールしまくるタイプより、黒猫君との距離は詰め易いと思うし」

「――んな事ないだろ。やっぱ年頃の男の子なんだから、胸のおっきいお姉さんの方が、黒猫だって良いに決まってる」

 そう言いながら、オルガは自分の胸をアピールするかの様に、艶っぽいポーズを取ってみせる。

「何のかんの言って、黒猫の旦那も胸チラ見するし、胸おっきい方が好きな筈っスよ」

 オルガ程では無いが、かなり胸が豊かな部類に入るタチアナも、胸の下で腕を組み、豊かな胸を強調するポーズを取る。

「でも、黒猫君の同居人で……一番一緒にいる事が多いのって、外見に関しては僕と同じボーイッシュ系の姫だよ。きっと黒猫君は僕みたいなタイプの方と、一緒にいたがるタイプなのさ」

 神流という名前は、トリグラフの三人も知っているのだが、聖盗としての活動の為にハノイに来ているだろう神流を、三人は本名では呼ばず聖盗としての愛称で呼ぶ。単に本当の名前より、呼びなれているせいでもあるのだが。

 ちなみにトリグラフの三人は、普段から殆ど愛称で呼び合っているので、むしろ本当の名前で呼び合う事の方が珍しい。愛称自体が有り勝ちなものなので、それでも匿名性は維持出来るという考えだ。

「――お前、ホント前向きだな」

 少し呆れ気味な感じで、オルガは続ける。

「単に潜入担当の黒猫がやばくなった時の為に、戦闘向きの姫がバックアップ出来る様に、二人で組んで行動する場合が多いだけの話だろ」

「潜入と言えば、旦那が潜入した薬幇のアジトが雇ってる用心棒、かなりヤバそうな感じっスよ」

 タチアナは街の野次馬から聞いた話を、オルガとタマラに伝える。

「何でも四華州の武術の達人らしいって噂で、見てた野次馬の話だと、変身前とはいえ旦那が手も足も出なかったとか……」

「黒猫が手も足も出ない……ねぇ。そいつは確かに、ヤバそうだな」

 先程までの気楽さは消え失せ、真剣な口調でオルガは呟く。

「戦闘向きじゃないとか自分じゃうそぶいてるが、黒猫は姫に鍛えられて、相当に強くなってる。まともな人間の中じゃ最強レベルの筈だけど、それが手も足も出ないとなると……」

「姐御や姫と同じ、まともじゃない人間の部類って事っスね」

 まともじゃない人間という言い方をされ、オルガは顔を顰める。

「その言い方、微妙に引っかかるんだけど?」

「誤解っスよ! 強さっていう、良い意味での話っスから!」

 タチアナは慌てて、弁解の言葉を口にする。タチアナの言う通り、神流とオルガの戦闘能力は、聖盗の中でも群を抜いている。二人共、聖盗となる前から戦闘訓練を受けていたので、聖盗となってから戦闘訓練を始めた殆どの聖盗と比べると、強さにおいてはレベルが違うのだ。

 もっとも、あくまで単純な戦闘力の話であり、聖盗としての総合能力は別である。神流やオルガは戦闘に特化したタイプで、潜入や盗みには向かない為に、朝霞の様に単独で聖盗としての仕事を行うには向いていない為、聖盗としての総合力なら朝霞には劣る。

「今回のブラックマーケット、警備への力の入れ方が半端無い感じッスね。旦那が手も足も出ない用心棒といい、例のホプライトといい……」

 タチアナの言う例のホプライトとは、タチアナ達がタンロン鉱山跡の偵察に向った際目にした、坑道から地下に運び込まれていたホプライトの事だ。

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