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暗躍疆域 23

 だが、人の目に映らぬ程の速さで動きながら、朝霞の脚を折る為の蹴りを、飛鴻は放つ事が出来なかった。突如、襲い掛かって来た強烈な風に、攻撃を邪魔されてしまったのだ。

 ただの風なら、飛鴻は警戒すらせず、攻撃を行っていただろう。だが、襲い掛かって来た強烈な風を察した飛鴻は、それが普通の風ではなく、巻き込まれたら吹き飛ばされかねない、攻撃としての風だと気付いたのである。

 突風の正体は、通りの屋台に並んでいた商品や椅子、ゴミや砂埃などを巻き込みながら、小さな竜巻の様に高速で迫って来た、強烈な旋風。布都怒志となった神流が放つ、朝霞には見慣れた旋風崩しの旋風だ。

(神流か! 助かった!)

 心の中ですら、仇名で呼べぬ程度に余裕が無い朝霞は、援軍の参戦に安堵する。だが、体勢を崩した朝霞は、旋風崩しに飲み込まれ、吹き飛ばされてしまう。

(――いや、でも……これでいい!)

 朝霞は相応のダメージを食らってしまうが、変身していない仲間がいる場所に放たれた旋風崩しは、一応は手加減がされている。朝霞としては、脚を折ろうとしている飛鴻を、僅かといえ退けてくれた方が、有り難い状況。

 旋風に舞い上げられたまま、朝霞は左腕に記された五芒星を右手の指先でなぞり、乗矯術を解除。背中の翼が消えるのと同時に、発動時の三分の二程に小さくなった、煙水晶粒が朝霞の右掌の中に出現する。

 乗矯術で使い切らなかった煙水晶粒を、右手に握り込んだまま胸元に突っ込むと、ミニボトルから蒼玉粒を取り出しつつ、左手をポケットに突っ込みキャスケットを取り出す。旋風の中……砂礫されきやゴミなどに身体を打たれながらも、キャスケットに六芒星を描いて、仮面に変える。

 朝霞は仮面をかぶると、青い炎に包まれながら、透破猫之神へと変身する。

(空中で変身するのは、初めてだな)

 心の中で呟きながら、朝霞は右掌に……変身前に握っていた、乗矯術で余った煙水晶粒を出現させる。朝霞の場合、変身前に手にしていた物を、変身後に掌から出現させるのは、魔力を微量に消耗するので、胸のプロテクターの扉を開いて、胸元から取り出す手間すら省きたい場合に限られる。

(交魔法を空中で発動するのも、実戦で使うのも初めて。上手く行けばいいんだが……)

 朝霞は即座に、煙水晶粒を筆として、額に五芒星を描く。朝霞は灰色の煙を大量に噴出しながら、交魔法を発動させる。

 煙は旋風に飛ばされ、あっという間に朝霞の周りから消え去り、六芒星に五芒星が追加され、翼や忍合切などを装備した、交魔法状態の透破猫之神が姿を現す。朝霞は背中の翼から青い光の粒子を噴出させ、旋風の中から脱出する。

 乗矯術を解除して仮面者に変身、更に交魔法の発動という流れを、ほんの十数秒……旋風に吹き飛ばされて、宙を舞っている間に、朝霞は終わらせてしまったのだ。

「やはり、交魔法を使うか!」

 飛鴻は宙を舞う朝霞を見上げながら、驚きの声を上げる。

「――にしても、あの風に吹っ飛ばされながら、空中で仮面者に変身し、交魔法まで使うとは……無茶な真似しやがる!」

 いくら乗矯術の発動中であり、異常なスピードで移動できる飛鴻だとはいえ、旋風に巻き込まれえた朝霞の追撃は難しい。故に旋風をかわした後は、その旋風を攻撃として放った相手の姿を視界に捉えるべく、旋風が襲って来た方向の様子を、飛鴻は探っていた。

 だが、神流は通常の布都怒志の姿で旋風崩しを放った後、即座に身を隠したので、飛鴻は神流の姿を捉えられなかった。その上、旋風に吹っ飛ばされながら、朝霞が空中で仮面者に変身、ましてや交魔法まで発動したのは、飛鴻にとっても予想の範囲外の行動だった。

 結果として、飛鴻は朝霞が仮面者に変身し、交魔法を発動するのを許してしまったのである。

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