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暗躍疆域 11

 降り注ぐ建材や板の破片の中、瞬時に辺りを見回し、場所と状況を確認する。壊れた扉の破片のせいだろうか、観葉植物は植木鉢ごと何本か倒れてしまってはいるが、警備員を尾行して、朝霞が隠し扉の在り処を突き止めた場所に、間違いは無い。

 出入口を破られた時の為なのだろう、既にアオザイ姿の者達が四人、朝霞を待ち構えていた。いずれもアオザイの色は濃紺と白、戦いを得意とする者達。

 観葉植物が倒れているせいで、先に待ち構えている者達の姿は、朝霞にも確認出来た。まだ立っている観葉植物の間の隙間を通り、朝霞は前に出始める。

「気を付けろ、その鼠……かなりの手錬てだれだ!」

 隠し扉を破られた……既に隠れていない出入口から、下りて来ようとしている、朝霞が跳び蹴りで吹っ飛ばした男が、鋭い口調で仲間達に警告を発した。

「倒そうと思うな! 通路を塞ぎ、逃がさない事の方を優先しろ!」

 自身が攻防一体の舞花戳棍における、攻撃……戳棍を僅かな時間で見切られて、出入口を突破された経験からだろう。朝霞の後を追って、出入口から通路に出て来た男は、仲間に指示を出す。

 男女二人ずつの四人は、男女ペアとなり二列に並ぶ。そして、皆が如意電撃棍を回転させ、舞花棍により通りを塞ぐ。

 二人並んでの舞花棍により、通路は殆ど塞がれたも同然の状態、しかもそれが二段構え。四人は朝霞の背後にいる男の指示に従い、まず通路を塞ぐのを優先したのだ。

 こうなると、朝霞も立ち止まるしか無い。触れるだけで電撃を食らう、如意電撃棍を手に、舞花棍で守りに徹した相手を、素手で崩すのは朝霞には難しい。

 しかも、背後には倒し切れなかった男が現れ、身構えている。先程、攻撃を受けた為だろうか、慎重に朝霞の出方を窺っている様子。

 通路の壁を背にする形で、朝霞は向きを変える。進行方向と隠し扉があった方向を、同時に視界に捉えつつ、背後から攻撃を受けるのを避ける為に。

(アジトの狭い通路と違い、この広さの通路で、守りに徹する連中を相手にするとなると、素手じゃキツイか)

 行く手を阻む為に守りに徹して、通路を塞ぎ始めた者達を睨み付けながら、朝霞は続ける。

(エロ黒子……じゃなくて姫なら、素手だろうが気甲きこうで電撃防いで、強引に崩したり出来るんだろうが……)

 やや焦っているので、朝霞の心の中で、神流の呼び方が乱れている。気甲とは神流が使う古武術の技で、身体を流れている生命エネルギー……気を使い、ほんの僅かな間ではあるが、身体の一部の防御能力を異常なレベルまで引き上げ、大抵の攻撃を防げる状態に出来る。

 極めれば気鎧きがいとなり、全身を守れる程に強化されるらしいが、神流の場合は部分的に守るのが限界だ。大抵の場合、手の防御能力を引き上げ、攻撃を防ぐ気の手甲として使われるので、気甲と呼ばれている。

 ただ、気甲は消耗が激しいらしく、神流は余り使いたがらない。故に、二色記憶者となって、身体の防御力が強化されている神流の場合、量産されるタイプの魔術機構を搭載している、如意電撃棍程度の攻撃なら、耐え切ったまま崩す可能性が高いのかもしれないと、朝霞は思う。

(ま、どっちにしろ俺の場合は、素手じゃ難しいな、武器が無いと。時間があれば、崩し方を見付けられるかもしれないが、今は時間が無いし……)

 アジト内での、狭い通路においての戦いでは、如意電撃棍は素手の朝霞にとって、それ程脅威となる武器ではなかった。長柄の武器の有利が発揮し難い狭い通路では、突き以外にまともな攻め手が無いので、普段……神流相手に突き対策の修行も行っている朝霞には、容易に対処出来る攻撃ばかりだったのだから。

 だが、アジト内と違い、地下街の通路は広い。二人の人間が並んで舞花棍を行える程度の広さがあり、如意電撃棍が実力を発揮出来る戦場といえる。しかも、今の朝霞は急いで逃げ果せる為、短時間で相手を倒さなければならないのだ。

 流石に、これだけの広さがある場所で、如意電撃棍を操り、尚且つ防御に徹する者達を、短時間に素手で崩すのは難しい。犯罪組織の者達とはいえ、相手に深刻なダメージを与えたくは無い朝霞の信条も、戦いの難易度を引き上げている。

 仮面者に変身すれば、突破は容易だろうが、出来るだけ蒼玉粒の消耗は控えたい状況。透破猫之神としての姿を晒し、ブラックマーケットを主催するだろう組織の者達に、黒猫団の存在を、今の段階で知られたくもないので、可能な限り仮面者への変身を、朝霞は避けたい。

 素手で短時間に、相手を退けるのは難しい。だからといって仮面者に変身するのも避けたいとなると、やはり如意電撃棍対策の武器が、朝霞としては欲しい場面。

 だが、薬幇の者達に怪しまれずイー・ホフ通りに入る為、朝霞は武器を携帯していない。だが、武器を携帯していないからといって、武器が無い訳では無い。

(武器を持ってない場合は、現地調達が基本……と)

 相手の動きを警戒しつつ、朝霞は辺りを見回し、武器として使えそうな物を探す。

(電撃を防げる絶縁体部分が有るか、もしくは投擲して、あのバトントワリングみたいなのを、崩せそうな大きさの物がいいんだが)

 条件を満たしそうな物を、朝霞は通路内に見つけ出す。

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