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旅立ちの朝 02

「――この何日かは、完全にティナヤっちのターンだったね」

 運転しながらも、朝霞の目線の先に気付いていた幸手の、からかう様な口調の言葉だ。別に責めていたり、嫌味という感じの言葉では無い。

 普段は三人の同居人に、公平に接する朝霞が、長い遠征に出る前、ややティナヤを贔屓する感じで接するのは、何時もの事。昨日……つまり、夜空のデートの翌日も、黒猫団の三人は交魔法の修行を行い、新しい戦術を開発したりもしたのだが、修行の後の入浴時や、就寝前の時間などは、朝霞はティナヤとの絡みが一番多かった。

 無論、その代わりに遠征中は、神流と幸手だけが朝霞に絡みまくるので、一応はバランスが取れているのだ。

「ターンって……ゲームじゃあるまいし」

 ティナヤを見ていたのを気付かれたのが、少し恥ずかしかった朝霞は、気まずそうに呟く。

「分かってると思うけど、遠征中は私と神流っちのターンだからね」

「今回の遠征も、泊まりは三人同室で、風呂も寝るのも一緒だぞ」

 当然の権利だとでも言わんばかりの、幸手と神流の口調に、朝霞は少し呆れる。

「お前ら、遊びに行くんじゃなくて、下手すりゃ命懸けになるかもしれない、危険な盗みをしに行く自覚あんの?」

「命懸けになるかも知れないからこそ、楽しめる時には楽しんでおかないと、駄目なんだよー」

 おどけ気味の口調で、幸手は続ける。

「――でないと、死ぬ時に後悔しちゃうでしょ。そういうの、私嫌だから」

「それに、命を預け合う相手と、絆を……繋がりを深めておくのは、悪い事じゃないだろう」

 頭を掻きながら、少し恥ずかしげに、神流は語る。

「戦っていない時に深めた繋がりが、戦場で互いの為に命を張る理由に、成り得るんだから」

「そうそう、朝霞っちも……そろそろ私達と、下半身で繋がる仲に、関係深める頃合だよねぇ」

「――下半身とか、それは流石に露骨過ぎるだろ」

 幸手程には露骨な下ネタには走れない神流が、少し恥ずかしげに幸手を窘める。

「ま、とりあえず……長距離運転担当する私としては、一番疲れるんだから、マッサージはして貰わないとねー」

 過去の遠征で幸手にマッサージを求められた結果、どうなったかを思い出し、朝霞は頬を染める。

「お前にマッサージすると、マッサージとは言えない状態になるだろ」

 遠征時、イダテンの運転は黒猫団の三人が交代で行う。だが、イダテンは幸手が無茶なチューンを施しているせいもあり、普通の車では出しえない速度で走る際の運転は、朝霞や神流では不安がある為、基本的に幸手が担当するのだ。

 遠征は大抵、急ぎの旅になる為、高速で移動しなければならず、結果として幸手が運転の半分以上を担当する場合が多い。朝霞と神流は、幸手が休む間の運転を担当するという感じで。

 遠距離を高速で飛ばす運転の負担の重さは、朝霞も分かっている。故に、長い運転の後……疲れを見せた幸手に、身体を解すマッサージを強請ねだられると、負担をかけた負い目がある為、朝霞は応じざるを得なくなる。

 ところが、普通のマッサージなのは最初だけ。途中からマッサージでは決して触れない様な所に、幸手は触れさせようとしたりするのだ。

 そうなると当然、自分だけ除け者にされる訳にはいかないと、神流も二人に絡んで来る。

幸手と神流の二人に、過剰なスキンシップを求められた朝霞の中では、毎度の様に欲望と理性が激しく争う羽目になる。

 これまでは一応、理性が勝り続けているので、朝霞は二人相手に一線を越えた経験は無い。あくまで、過剰なスキンシップといえる範囲内の行為で、収まっている。限りなく前戯に近い、スキンシップではあるのだけれど。

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