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皆死野と夜空のデート 06

「ねぇ! ちょっと攻撃してみてよ!」

 移動テストを終えた幸手は、実際の防御能力が、どの程度なのかを確かめたくなったのだろう。幸手が声をかけて来たので、朝霞と神流は跳躍し、幸手の方に向かう。

「じゃあ、俺から!」

 朝霞は二十メートル程の高さまで跳躍すると、そのまま弾道を描いて天岩戸に向かって突撃し、そのまま跳び蹴りを食らわせる。鐘を鳴らしたかの様な音が響き、蹴り脚である朝霞の右脚が衝撃を感じるだけで、天岩戸の防御殻には、何の影響も無い。

「跳び蹴りで駄目なら、これはどうだ?」

 防御壁の一枚を足場にして、再び朝霞は跳躍し、夜空に舞う。そして滞空中に忍合切から斧を取り出すと、急降下して天岩戸に襲い掛かり、速度と全体重を乗せて斬り付ける。

 だが、今度も鐘が鳴る様な音が響き渡り、朝霞の右手が痺れるだけで、天岩戸の防御板には、僅かに傷がついただけだ。

「斧でも駄目か! だったら……」

 朝霞は天岩戸に乗ったまま、自分が乗っている防御板の隣にある防御板に、右手で触れる。右手の甲の青い六芒星が、青い閃光を放つ。朝霞は奪う蒼を、発動したのだ。

 天岩戸の防御板にも、魔術式は仕込まれている。朝霞が右手を離すと、防御板から魔術式が、蛇の様に剥がれ始め、六芒星の中に吸い込まれて行く。

 魔術式を奪われた防御板は、水に溶ける角砂糖の様に、空気に溶け込み消滅する。三十二枚の内、一枚が破壊されたのだ。

「俺の打撃や斬撃じゃ破壊不可能だが、奪う蒼なら破壊出来る。魔術式に直接干渉するタイプの攻撃には、天岩戸は弱いのかもしれない」

 朝霞は天岩戸に開いた穴から、下にいる幸手に、そう話しかける。

「そうみたいだね。でも……そんな妙な能力持ってる奴、朝霞っち以外にいないから、大丈夫じゃない?」

「聖盗や普通の魔術師には、確かにいないだろうけど、香巴拉の八部衆に……いないとは限らない。万が一……そういう奴がいたら、無理に戦わずに逃げに徹しろよ」

 幸手が頷いたのを確認すると、朝霞は防御板を蹴って跳躍し、夜空を舞ってから、ティナヤの傍らに降り立つ。

「じゃあ、次は……あたしの番ね!」

 朝霞と入れ替わる様に、天岩戸の前に立った神流は、二メートル程跳躍すると、長刀だけを空中で抜刀し、防御板を斬りつけてから、着地する。鐘の鳴る様な音を響かせるだけで、防御壁は壊れない。

 ただ、朝霞の時とは違い、かなりの傷が残っている。神流の斬撃の方が、威力が高いのだが、防御壁への破壊には至らないという所だ。

「それなら、神憑り……鳴神!」

 神流は脇差を抜いて、二刀を前方に突き出しつつ、中段に構える。すると、二刀が稲妻を纏い、激しいスパークを放ち始める。

「――放たずに、このまま斬ったら、どうなるんだ?」

 能力解析の結果、魔術式自体は、雷撃を放つ前提の物らしい。だが、放つまでに稲妻を纏った状態で、斬撃や打突を放てないものか、試してみたいと思った神流は、天岩戸相手に試す事にする。

 神流は再び跳躍し、長刀だけで天岩戸に斬りかかる。激しい稲妻を纏った斬撃の威力は凄まじく、一度斬りつけただけで、防御壁を一枚……破砕してしまう。

 だが、着地した神流が右手の長刀を確認すると、長刀の纏っていた稲妻は、衰えを見せていた。稲光のスパークが、明らかに斬撃を放たなかった脇差に比べ、弱まっている。

「成る程、かなり強力な攻撃を放てるが、その分……稲妻を失うのか。何回くらい、雷撃付きの斬撃を放てるんだ?」

 浮かんだ疑問の答えを知る為、神流は次々と天岩戸に飛び掛っては、長刀で斬りつける。そして、長刀による五度目の斬撃の後、衰え続けていた長刀が纏っていた稲妻は、完全に消え失せる。

「長刀は……五回ね。脇差は?」

 続いて、神流は脇差で同じ実験を繰り返す。すると、脇差では三度目の斬撃で、稲妻が消え失せてしまった。以上の実験で、鳴神は放たずに斬りつける攻撃が可能であり、それは両刀合計で八回だという事が分かった。

「――鳴神を普通に放ったら、何枚壊せるんだろう?」

 浮かんだ疑問への答を得る為、神流は早速、試してみる事にする。二刀を前方に突き出しつつ、中段で構え……叫ぶ。

「神憑り……鳴神!」

 三度目の発動なので、既に慣れつつあるのか、両刀が稲妻のスパークを纏うまでの時間が、これまでより短く、動作もスムーズだ。

 上段以外からの打突も試してみようとばかりに、神流は天岩戸の正面に向け、二刀で突きを放つ。五メートル程の間合いを取っているので、切先は当たらないが、刀身から放たれた眩いばかりの雷撃が、天岩戸に稲妻のシャワーの様に襲い掛かる。

 天岩戸の前面が、スパークする稲妻に包まれる。切先の向いた先にある防御板は、あっさりと雷撃に屈して蒸発、消滅してしまう。

 だが、その一枚の防御板が消滅する際、絶対防御能力を発揮し、防御板を破壊した攻撃である、雷撃全ての攻撃力を巻き添えにして、同時に消滅させてしまう。そのせいで、天岩戸周辺の地面も、最小限しか破壊されずに済む。

「たった一枚だけ? 一枚が破壊された時点で、絶対防御能力が発動して、鳴神の雷撃を全て打ち消されちまうのか!」

 雷撃の眩い光が、あっという間に消え失せてしまうのを見て、神流は口惜しそうに言葉を吐き捨てつつ、二刀を鞘に収める。

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