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皆死野と夜空のデート 01

「この辺りでいいよね?」

 確認を取るかの様に問いかけはするが、既に幸手は停めたばかりのイダテンのブレーキを踏み、停めている。反対の言葉が返って来ないと、確信しているのだ。

 実際、隣に座る朝霞も、後ろに座っている神流やティナヤも、異を唱えたりはせずに、ドアを開けて車外に出始めている。幸手はイダテンの防御殻が、二分後に起動する様にセットしてから、車外に出る。

 陽が落ちているとはいえ、風も微風の範囲であり、肌寒いという程では無いのだが、車の中より気温は低いので、四人にとっては肌寒い。すぐに慣れるだろうが。

「星が綺麗だねぇ、何時もの事だけど」

 朝霞は夜空を見上げる、雲一つ無い満天の星空を。煙水晶界より大気汚染が酷い蒼玉界で見上げた夜空や、街中から灰や黒の煙が立ち上る天橋市の街中で見上げるより、人気の無い荒野で見上げる星空は、遥かに星が多く賑やかだ。

 四人がいるのは、天橋市の東側郊外。車で三十分もかからない辺りに広がる、皆死野みなしのという、やや物騒な呼ばれ方をしている荒野。今は夜なので、黒褐色に見えるが、昼間なら殆どがココアパウダーの様な褐色に見える、土に覆われた広大な土地で、あちらこちらに岩が散見される程度。

 皆死野という名の由来は、その名の通り、皆が死に絶えた野原という意味から来ているらしい。かっては普通に生き物がいて、人も住んでいたらしいが、何度か大規模な津波に襲われた結果、住んでいた生物は死に絶えた。

 その上、津波の海水が残した塩害により、植物もまともに育たなくなってしまった結果、まともな生き物が殆ど存在しない荒地となってしまった。それでも土地が足りなければ、誰かが開発して利用したかもしれないが、蒼玉界の日本とは違い、同程度の広さがあれど、人口がかなり少ない瀛州の場合、わざわざ開発する者もおらず、皆死野という名が示す通りの状況が続いている。

 もっとも、誰もいない荒野というのは、それはそれで利用したがる者もいる。例えば天橋市を根城にする聖盗達も、そうなのだ。黒猫団同様に、小規模な組み手や肉体の鍛錬を行う為のトレーニング場を、大抵の聖盗達は天橋市内に持っているのだが、仮面者に変身した上での、威力や効果の大きな能力のトレーニングは、他の住民達に迷惑をかけてしまう可能性が高いので、市内の施設では事実上不可能に近い。

 故に、人どころか人以外の生物に迷惑をかける可能性が無い皆死野を、そういったトレーニングを行う場として利用するのだ。つまり、朝霞達は地下室のトレーニング場で使うには向かないと、能力解析で判別出来た能力を試す為、夕食を終えた後、イダテンで皆死野を訪れたのである。

「もうすぐ防御殻が作動するから、ティナヤっちは防御殻の中で見ててね、危ないから」

「有り難う!」

 幸手に礼を言ってから、ティナヤは一度は離れたイダテンに歩み寄り、ドアに寄り掛かる。皆死野での派手なトレーニングにティナヤが同行する場合、間違って攻撃を食らう事態を避ける為、ティナヤはイダテンの防御殻の中から見物するのだ。

 防御殻は攻撃を受けると魔力を大量に消費するが、攻撃を受けなければ、余り消費しない。朝霞達はこれまで、ティナヤやイダテンを攻撃に巻き込んだ経験は無く、あくまで念の為の配慮である。

 イダテンがティナヤごと、防御殻に包まれるのを確認してから、朝霞達は仮面者への変身を開始する。大量の青い煙を辺りに撒き散らしながら、月明かりと星明りしか無いせいで、普段より黒味が増している、仮面者としての姿に。

 続けて、三人は交魔法を発動する。トレーニング場の時より暗い灰色の煙を大量に撒き散らしながら、三体の仮面者は交魔法の発動状態となり、微妙に見た目が変化する。

「――じゃあ、まず……俺の煙玉から」

 朝霞は忍合切から、煙玉を一つ取り出す。そして、それを遠くに放り投げようとするが、止める。投げるのではなく、別の方法で煙玉を遠くで炸裂させる方法を、思いついたのだ。

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