二周年
《警告》
・これは冬雲視点ではありません。
・これは三人称に見えますが、三人称ではありません。
・二周年記念という日に、作者が作り上げた相当はっちゃけた番外です。
以下の点をご留意の上、お読みください。
「皆、揃ったわね」
覇王たる彼女は今、街の中央である広場に用意された櫓からその場に揃った多くの者達を見て満足げに頷いていた。
「華琳様、いつでも開始できます。
あとは冬雲達がこちらに運ばれてくるのを待つのみです」
さりげなく想い人を物扱いする荀彧へと溜息を吐くが、曹操は視線のみで彼女を労い、もうしばらくすれば影たる司馬朗が恋人と己の実弟、そして己の軍師の甥を運んでくることだろう。
「これを見たら、冬雲はなんて言うのかしら?」
覇王たる彼女らしくない、年相応の悪戯気な笑顔を零して、ただこの催しが始まる瞬間を待つのみだった。
見慣れた隠密装束の彼女達によって縄で縛られた状態でこちらへと運ばれてきますのは、今作の主人公である曹子孝。
二回目の人生を歩む北郷一刀こと赤の御使いであり、同じ時を繰り返す少女たちと共に日々いちゃつきまくっている色情狂。
そればかりか二度目の人生を歩む中で他の少女達もおとして回り、そのハーレムの拡大は広がるばかり・・・ たとえ両想い且つ合意の上でもハーレムが多すぎる! いい加減にしろ! この種馬野郎!!
「ちょっ?!
なんだよ、この紹介文!」
何やら叫んでいますがそれはさておき、引き続き抱えられている者の紹介へと移ります。
その後ろから紅と橙の仮面に運ばれてくるは、覇王・曹操の実弟である曹子廉。
優秀な姉と比べられ、心的外傷並の自己評価の低さという欠点に目をつぶれば、容姿端麗、文武両道、家柄良好という完璧超人。
しかも最近、可愛い婚約者まで出来たことにより、暇さえあれば可愛い彼女との将来計画を妄想しているこの男。
あえて言おう。リア充爆発しろ! 否、幸せにしなかったら爆発させる!!
「そ、そんなことはしていません!
というか、爆発させるって何ですか?!」
言葉通り以外の意味があるわけがないというのに問い返してくる彼も放っておき、その次に見慣れた緑の仮面に運ばれてきますはこの男(?)。
さながら乙女のごとく線の細い体を持ち、化粧を施せば誰もが振り返るほどの絶世の美少女へと変わり、化粧を必要程度に落としても一般女性の会話へと違和感なく紛れ込めてしまう罪深さ。
好感度の高い彼女達にはもはや不可能となったドタバタ劇を行うために生まれ、こいつ一人がいるだけで笑いも、シリアスも何でもござれという非常に便利な存在。
最近の彼の成長は作者もあの海のリ○クの眼を持ってしても見抜くことは出来なかったほどであり、彼の人生は今後も面白おかしくなること間違いなし!
そんな彼の名は荀! 公達!!
「ちょっと待て、ゴラァ!
聞き捨てならないことだらけの上に、この紹介おかしいだろうが!!
つーか作者! 表出ろ!!」
生憎、私は作者ではございません。
記念すべき二周年番外によって生まれた意志持つ地の文、無礼と申します。
「ナレーというより、無礼だろうが!」
その通り、私という存在はこの無礼講である今回の催しのために生まれ、今話のみのこれっきりの存在なのです。
何せ二周年記念。
いろいろあり、複雑な思いを抱き、七転八倒しながらもここに居る。
作者にとっても、読者にとっても感慨深い二周年なのですから。
『起き上がれよ?!』
珍しい三人同時のツッコミ、ありがとうございます。
「もういいかしら?」
おっと、覇王様がこちらを鋭い眼光で睨んできてらっしゃるので私は語り手の仕事を行うとしましょうか。
運ばれてきた御三方もそれぞれの置かれ方をし、そのまま座ったり、地面へと転がったり、一度跳ね上がったりなど個性が非常に豊かです。
「何でこんなことに・・・」
「作者め・・・!」
「華琳、状況がよくわからないんだけど、今回は一体なんなんだ?
この人だかりもだけど、さっきの無礼さんとか、いつも以上にいろいろとおかしくないか?」
二つの悪態が零れる中、事態の整理へと目を向ける彼の冷静さに覇王は微笑み、虚空を見ながら肩をすくめる。
私が呆れられたような気もしますが、気にしません。えぇ、気にしませんとも。
「今回の催しは非常に珍しいものだからかしら?
あの無礼とか言う存在を見る限り・・・ 尽きが無い作者も羽目を外しているようね」
記念すべき二周年番外だからです。
大事なことだから、何度でも言いましょう。記念すべき二周年番外だからです!
さぁ、皆さんもご一緒に。二周年k・・・
「くどいのよ!!」
荀彧によって虚空へと放たれた鞭も実体のない私にとって無意味ですが、そろそろやめた方が無難ですね。
「今回の催しはある人物から匿名で送られてきた提案書を元に作られ、全員一致で可決されたものよ」
縄で縛られたままの三人が視線で『俺達は参加してないんですけど』という目で睨んだり、苦笑したりしていますが、そんなものは歯牙にもかけずに説明を続けられていきます。
「それと僕らが縛られている関係はあるのでしょうか?」
問いかけながらも荀攸は縄抜けをしようと足掻いていますが、如何に縛られるなど理不尽なことに慣れている彼であっても、隠密である司馬姉妹がしっかり結んだ縄はほどけません。二周年番外だから。
「大有りね。
あなた達は今回の催しの参加者でもあり、景品でもあるのだもの」
「兄者はともかく、私達が景品?
どういうことですか、姉者」
「いや、俺はともかくっていうのもおかしいだろ」
端的に告げられる曹操の言葉に曹洪は首を傾げ、曹仁はツッコミを入れますが、それを気にすることなく彼女は櫓の元に集まる人々を指差して示す。
そこに居る者は何故か全員顔の全面を隠す仮面をかぶり、当然三人はさらに困惑した表情を浮かべてしまう。
「なんなんだよ、これ。
っていうか、どうしてあんな仮面被ってるんだ?」
まぁ、集団全員が仮面被ってるのって普通に怖いし、警戒しますよね。
「というか、嫉妬ってでかでかと書いてある仮面が特に怖いんですが・・・」
そう言って曹洪の視線の先には、紫の地に白抜きで描かれた嫉妬の仮面。
額のあたりに小さな角があるあたりが作り手の遊び心が窺えますが、書いてあるのが『嫉妬』の二字でなければ子どもが被っていそうでした。
「あの薄気味悪い心臓形の仮面はなんなんですか!?
しかも女性のみならず、男もつけてるようなんですけど?!」
荀攸の視線の先には、桃色の地に黒字で『愛』と描かれた逢引き仮面。
そして、何故か後ろでは御三方を連れてきた司馬姉妹が黄色の地に『得』という赤字で描かれた獲得仮面を装備しています。
「丁寧な説明、ご苦労様」
いえいえ、これが仕事ですので。
では、僭越ながら私がこのまま説明してしまっても?
「えぇ、かまわないわ」
覇王様によって許可が下りましたので、改めましてこの無礼が今回の催しの規則説明をさせていただきたいと思います。
この催しは仮面をつけている会場の皆さんが鬼となり、こちらの御三方が追われるという多対三による鬼ごっことなります。
鬼側の勝利条件は、彼らを捕まえること。
追われる側である御三方の勝利条件は、日没まで無事に逃げ切ること。
「じゃぁ、あの仮面は一体何なんだ?」
いい質問です、曹仁殿。
会場の皆さんには既に理解しているでしょうが、改めてそちらも説明しましょう。
男性の皆様が多くかぶられているあちらの嫉妬仮面。
そちらを装備している方に捕まった場合、リア充の極みである皆様は文字通り嫉妬による拳を受けることとなります。
「「はぁ?!」」
「え・・・」
困惑するのはわかりますが、私は途中で言った筈です。
今日、この日限定の無礼講。
慕うという想いに偽りはなくとも、嫉妬という感情を斬り捨てているわけではないのです。
リア充への苛立ちを、立場が上ということを気にせずにぶつけるられるのは今日この日だけ。
安心してください。命に別状はありません。二周年番外ですから。
「えっと、じゃぁ・・・ 向こうの桃色のはなんなんだ?」
そこで怒らずに他を聞くとは、余裕がありますね。
「まぁ・・・ 気持ちの捌け口も必要だしなぁ・・・」
「兄上、あなたのその余裕が少し憎いです・・・」
「右に同じく」
当然、あちらも容赦なく襲いかかってくるので、対処にも容赦など不要。
原則として武器は使用不可となりますが、流血しない程度なら落とし穴などの罠も可とします。
「匿名の提案者を探し当ててやる・・・!」
恨みがましい目で人だかりを睨んでいる方もいますが、引き続き説明を行います。
あちらの『愛』が描かれている仮面は逢引き仮面であり、捕まえた方と一日逢引きする権利を得ることが出来ます。
が、別段男女でわけているわけでもなく、希望する仮面を配布しているので・・・
「だから、男もつけてるのかよ!!」
おっしゃる通り。
むしろこの大陸では恐ろしい女性より、同性を好む男性が多いのが実情ですのでおかしな点はないかと思いますが?
「お前の仕業かーーーー!!」
いいえ、熱烈な希望者の所為です。
誰とは言いませんが、大輪の薔薇のような真っ赤で情熱的な心を持った筋骨隆々な彼と彼に率いられた有志に頭を下げられてしまったら、断ることなど不可能です。
「それでは春蘭達もあの仮面をかぶっているんですか?」
そちらの説明は、皆様の後ろにいる司馬姉妹へと視線を移してください。
将の方々が被っているこちらは獲得仮面と呼ばれ、捕まえた場合は逢引き仮面同様に逢引きなどの権利を得るというものです。
以上が、今回の催しである『あなたと私のドキドキ★鬼ごっこ』の説明となりますが、ご不明な点がありましたら、どうぞご気軽に私へとご質問くださいませ。
「ご苦労だったわね」
いえいえ、曹操様を除いた全員が参加者となる以上、私は役目を果たさせていただきます。
また、私はこの催しを公平に審判する立場でもありますので、全員に目を行き渡らせていることもお忘れなく。
「えぇ、では・・・ 始めましょうか」
曹操様の言葉によって今、戦いの火蓋はきられ、それと同時に縛られていた縄から三名が解放される。
「さぁ! 年に一度の無礼講!!
思いっきり楽しみなさい!!」
「見つけたか!」
「いや、こっちには居なかったぞ!」
「チッ! 流石曹仁様達だ・・・・
だが、今日だけは一撃入れるぞ。羨ましいぐらいいちゃつきまくってる隊長に、今日という日を活かさないでいつ殴る?!」
「樹枝ちゃぁーーーん!
俺が君を守ってみせる!!」
「副隊長! 邪魔するなぁ!!」
「黙れ!
お前らを倒し、俺が樹枝ちゃんを守る!」
「茶屋の先に行ったらしいわ。向かいましょう!」
「えぇ!
見つけたらわかってるでしょうね?」
「勿論。協力してても早い者勝ちの恨みっこなし、でしょ?
たとえ親友のあなたでも、負けないんだから」
「上等よ!
あの方達と逢引きできるなんて夢のようなこと、生涯に一度だけでもいい記念になるもの!」
「公孫賛様と婚約しやがった、曹洪様はどこだーーーー!」
「俺だって、俺だって好きだったのに!!」
街を行き交う言葉の数々、いやはや怖いですね。
「あんたは呑気で羨ましいですねぇ!」
えぇ、私は追いかけられる立場ではありませんので。
「表情なんてないというのに、余裕ぶっているあなたが見えるようですね」
余裕ですから。
「「っ!」」
ほらほら、私へと殺意の視線を向けている暇があるのなら走った方がいいですよ?
「女装が似合うなんて、羨ましいんじゃーーー!」
女装希望の方とは・・・ 荀攸殿、あなたのお客さんのようですね。
「似合っても嬉しくねぇよ!
つーか! ならなんで、逢引き仮面なんだよ?!」
化粧の秘訣でも聞きたいんでしょうか?
「あんた、もう黙れ!」
「樹枝! 樟夏! 作戦1を決行する!!
樹枝は左へ、俺達はその先に回って援護に入る!!」
おやおや、短時間で作戦を練るとは流石魏の将ですね。
「気絶はいいんでしたよね? 無礼さん!」
はい、勿論。
「樟夏!」
曹仁殿が呼びかければ、曹洪殿が曹仁殿の手に飛び乗って屋根へと飛び上がり、両手には砂を掴んでいますね。
屋根へと上った曹洪殿へと手を借りて、曹仁殿も登れば、屋根の上の自由自在に走って、先程分かれた荀攸殿の元へと向かっていく。
鮮やかですねぇ。ですが、屋根の上というのは目立つもの。
「いたぞー! 屋根の上だ!!」
「ちぃっ!
樟夏、とりあえず樹枝を助ける!!」
必要ですかね?
ちょっと憂さ晴らしのごとく、迫りくる逢引き仮面の男どもをちぎっては投げしていますが・・・
「え?」
そう言って曹仁殿が視線を向けた先には、額あたりに怒りの印をつけた荀攸殿が相手を体術のみで地面へと倒している姿。
「・・・兄者、樹枝を囮にして逃げませんか?」
「・・・そんなこと出来るわけないだろ!
三人で生き延びるぞ!」
「今、迷いましたね? 兄者」
嬉々として相手を千切っては投げを繰り返すあの姿を見れば、誰であっても迷うかと思います。
そんな激戦を何度も繰り返し、時には互いを囮にしながら、追う側と追われる側の激しい攻防は続いていきます。
休憩など挟まれることもなく、多くの方が気絶や罠などにはまり、救護班へと回収されながらも制限時間の半分が過ぎていきました。
「で、どうして最初の時だけ僕達を逃がす手伝いをしたんです? 無礼さん」
周囲が囲まれた櫓からの逃走なんて不利すぎて楽しくないので、最初の時点であなた方を逃がすことは指示に含まれていたんですよ。
かといって、司馬姉妹の皆様の今回は参加者なので補助に入れません。
二周年記念番外、今回限りの空間転移です。
「姉者の指示ですか?」
いいえ、作者の指示です。
今回、あの方も嫉妬仮面を被って参加していますが、運動不足がたたって今頃はその辺で息切れして倒れているんじゃないでしょうか。
「二周年だからってはっちゃけすぎだろ・・・
多対三の鬼ごっこって・・・」
こんな時もいいでしょう。
それにいい加減義弟であるお二人の視点も多すぎて飽き・・・ ゲフンゲフン
「今、なんて言いかけた?!」
いいえ、何も。
もっとも、私の手助けなどなくても、皆さん勝手に逃げれたのでしょうけどね。
制限時間を半分ほど過ぎても、御三方は息切れもしてませんし。
「いや、精神的には結構きついけどな・・・
しかも、春蘭達は互いの本気で潰し合ってるし・・・」
それは当然でしょう。
お互い厄介になる相手なんて一目瞭然ですから。
それに今回は皆で共有は出来ませんから、本気で奪い合っているのですよ。
逃げている最中、激しい爆発音のような物が数度響いていたでしょう?
「あぁ・・・ ってまさか!」
ご明察。そちらの音が将の方々の試合の音となります。
今回は楽進殿有利ではありますが、元々の力がそれぞれ強いので勝敗は予測できませんね。
「本当に良い身分ですねぇ!」
審判ですから。
さて引き続き皆さんのご健闘を祈りますが、多対三という圧倒的不利な状況下・・・ 作者の意図がわかりますか?
「いや、どう見ても嫌がらせにしか見えませんが・・・ それに『りあ充』? でしたか?
兄者はわかりますが、どうして私までそれに該当するのかが・・・」
何をおっしゃいますやら。
可愛らしい婚約者が出来てからというもの、連合においてあなたが卑下する場面など皆無。挙句、口癖であったあの言葉は荀攸殿と別れて以降一度も口にしていないという不思議事態を招いているのは無自覚のようで。
「なんだと?!
この裏切り者がぁ!」
あー、こらこら。
曹洪殿に掴みかかろうとする、あなたもそうですからね。
「僕にそんな美味しいことなどありませんよ!」
ほー・・・ こちらは無自覚。
だそうですが賈詡さん、どう思われますか?
「はっ?
賈詡って・・・ 詠さん?!」
「へー・・・」
そう言いながら荀攸殿が振り向く先に居たのは、何故か仮面を手にした賈詡さんの姿。
眉間に皺が寄り、手が震えているのは何故でしょうね?
「こんな催し参加しないで助けてやろうと思ったけど・・・ やっぱり僕もこいつを一発殴ることにするわ。
無礼! 途中参加も可能よね?」
勿論、老若男女問わず、参加意思があり、指定通りの仮面を被っているのならば、この催しに参加することは認められます。
「ちょっ?!」
そんな助けを求めるような目で見られても困りますな、なにせ私は公平なる審判なので規定を破らなければ問題はありません。
『頑張って逃げてください』と追われる側に言うように、追う側にも『頑張って捕まえてください』というのが私の在るべき姿なのです。
「覚えてろーーーー!!」
いいえ、忘れます。
恨まれていることなんて、いちいち覚えていたら面倒じゃないですか。
「待ちなさいよ! 樹枝!!」
はい、本日のツンデレも頂きました。
いやはや、鈍感とはなんと罪深い。
「ハハハ・・・ 昔の自分を見ているみたいだよ」
「兄者にそんな頃があったなんて、想像も出来ませんがね・・・」
さて、余裕ぶってるお二人にも少々私から贈り物でもしましょうか。
「「え?」」
さぁ、種も仕掛けもございません。
そうして驚く彼らの足元に、突如穴が出現しました。
「うわっ!」
「ようやく来たわね、冬雲」
「か、華琳?!」
察しの良いあなたなら、私がここに落とした意図はわかりますね? 曹仁殿。
「あ、あのなぁ!」
なんてカッコつけてみせますが、そこにいる覇王様に脅されたなんてことはありませんからね!
首にあてられた大鎌が怖かったんじゃないんだからね!
「華琳・・・」
「あら? 主催者である私が美味しい所をさらっていくのが、おかしいことかしら?
それとも・・・ 不満でも?」
そう言って曹仁殿の上着から手を入れ、胸に直接触れていく覇王に嬉しそうに頬を染めて、試すように近づけられた顔へと吸い付くように唇は重ねられる。
「あるわけないだろ?
だって俺の心も体も全部華琳の物であり、魏の物なんだから」
「当たり前でしょう?」
「久しぶりに二人っきりだな」
・・・・これ以上、ここに居るのは野暮というもの。
馬に蹴られて死にたくも、地獄に落ちたくもないので退散するとしましょうか。
さて、視点を変えまして、こちらは曹洪殿です。
「あの・・・ これは一体・・・
そして、兄者はどこへ・・・?」
曹仁殿は曹操様の元へ転移させていただきました。
ちなみにその穴はあなたの奥方、公孫賛様による手製の罠でして・・・
「ぱ、白蓮が?!
というより、参加しているんですか!?」
いえ、最後まで参加を拒まれ、終いには『か、獲得なんてしなくても、樟夏はその・・・ 私の、婚約者だからな』なんて惚気られましたよ。
えぇ、正直やってられません。
「では、何故白蓮の罠が?」
何かしてくださいと言ったら、誰も嵌りそうもないこんな路地裏に落とし穴を作り、救護班の補助へと入ってしまわれたのです。
ですが、嵌りましたね。ププ。
「あ、あなたは・・・・」
ですが、これだけは面白くありませんし、他のお二人はそれぞれオチがついているので、あなた様にも一つだけオチをつけようかと。
「は?
次は一体何・・・ おぅ?!」
「え? あれ?
私はどこ? ここは誰?!」
自分が行方不明になるとは貴重な経験をありがとうございます。公孫賛様。
「は? 無礼?
って、樟夏?!」
自分の手の中であたふたする公孫賛殿へと向ける曹洪殿の目は優しく、顔はいつもよりもずっと穏やかになっていきます。
あー・・・っと、ここでもお邪魔になりそうな予感が。
「は? じゃ、邪魔なんてそんなことないぞ?!
なぁ、樟夏?」
「無礼さん、仮面はありますか?」
あー、ハイハイ。獲得仮面ですね、わかってますよ。この似た者兄弟共が。
「褒め言葉として受け取っておきましょう」
あーぁ、結局誰も彼もが美味しい目にあっていますね。やってらんないですよ、まったく。
嫉妬に狂った者に追われているにもかかわらず、それぞれの想い人と一緒に幸せのひとときを過ごすなんて、この夏が暑いのはきっと彼らの所為でしょうよ。
私としてはもう少しばかり痛い目にあってほしかったんですが、仕方がないですね。
二年前のこの日に外史の扉が開き、今に辿り着くまでのこの道に込められた願いはあの時から何も変わることはない。
そしてその願いは・・・
彼女達に笑っていてほしい、幸せになってほしいという細やかなものだったんでしょうね。
祝☆二周年!!
こちらでは少し違いますが、向こうで連載を始めた日であり、第一話と投稿した日。
『再臨』の誕生日です。




