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二月二日

昨日、ハーメルンの活動報告で投稿したものを練り直し、投稿しました。


二月二日『ツインテールの日』番外となります。



よろしくお願いします。

「二月二日、か・・・・」

 午後の鍛錬を終え、小休止を兼ねて城壁から城下を見下ろす。

 景色の良さと、ここで作った思い出もあってか、ついつい足を運んでしまう。

 今日は二月一日、天の世界で言う中国の旧正月で賑わいを見下ろしつつ、あのオタク文化が作り上げた名称を思い出す。

「でもさ・・・

 コレを言ったり、やったりしたら、俺を見る目が今後、いろいろな意味で厳しくなるような気がするんだよなぁ」

 それにこの国を治めている華琳と若干異なるとはいえ同じ髪型をする、というのも問題のような気がするんだよなぁ。

「冬雲、どうかしたのかしら?」

 噂をすれば影、慣れって怖い。

 影に気配がなくても、背後に突然立たれても、殺気が向けられるか、不意を打たれるかをしない限りは驚かなくなってきた。

「いや、俺がいたところにあった祭日ともいえない日が、明日だったことを思い出してさ」

「あなたのいた世界は、ずいぶん行事が多いのね。」

 呆れるような、羨むような声音。俺にもそれは苦笑するしかない。

 まぁ、世界中はともかくとして、俺の周りには娯楽として『○○の日』というのを楽しむくらいは平和だった。

「俺がいたところってさ、縁起担ぎや語呂合わせが多かったんだよ。

 『言葉には力が宿る』なーんて言って、土地名を付けたりな」

 そもそも毎日『先負』、『大安』、『友引』など決まっていたし、『毎日が記念日』を地で行くのが日本。だから、他国から入ってきた行事が変化して楽しむものになるのもむしろ必然だろう。

「それで?

 話を逸らしている気がするのだけれど、明日は何の日なのかしら?」

「・・・・呆れると思うぞ?」

「この二月(ふたつき)の間で多くの行事があったのだもの、これ以上呆れることはないわよ」

 ですよねー。

 和洋折衷、日本独自に変化した文化など、それこそ山のようにあったし、その次の日に行われる行事と、その次の行事も話してはある。呆れられても当然だよなぁ。

「ツインテールの日」

 隣に腰かけた華琳の髪に触れながら答えると、ジト目をして、『呆れるを通り越して少し引いている』といった顔をされた。

「俺が作ったわけじゃないぞ?!」

 ツインテールは華琳の髪方だからと言って、作るなんて権力もなければ、噂を流すように同好者たちの会を作ることなんてしてない。

「そこまでは思っていないけれど・・・・ 本当にあなたの世界は妙な日があるのね」

 否定が出来ない。

 むしろちゃんとした祝祭日より、現代はそういう語呂合わせと趣味に偏った日の方が多い気がする。

「まぁ、だよなぁ。

 それにあの世界の子どもにとって祝祭日なんて、義務になっていた学ぶことをサボる口実みたいなもんなんだよ」

「贅沢なものね」

「俺も今はそう思うよ」

 学ぶことが当たり前で、『知る』ということの楽しさを感じない。だというのに比較はされ、楽しくもないことに理不尽な差を見せつけられる。

 それがどれほど恵まれた環境なのかも知らずに、祝祭日という休みの口実を見つけては喜んでいた。

「さてっと、書簡仕事も残ってるし、俺はもう行くぞ。

 明日は久しぶりの休みだし、午前と午後はのんびり過ごすとするよ」

 立ち上がりつつ、華琳を見る。

 いつもと同じ二つに縛り、巻き付けられるような金の髪。それを飾るは紫というには少し鮮やかなリボン。華琳の美しさに俺は目を細めてしまった。

「えぇ、私はもうしばらくここに居るわ」

「そっか・・・・ じゃぁ」

 羽織っていた上着をかけ、それに華琳が少しだけ虚を突かれたように目を丸くしたのに俺はおもわず笑みをこぼした。

「二月はまだ冷える。

 華琳が風邪でも引いたら、桂花と春蘭を筆頭に城中が大騒ぎだ」

 筆頭軍師と、将軍が筆頭とはこれいかに。

 二人とも前よりは落ち着いて入るが、華琳のこととなると次元が違うしなぁ。まぁ、俺もだけど。

「あなたは騒いでくれないのかしら?」

 俺を試すように問いかけ、その顔に悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

 わかってるのに、聞いてるだろ。絶対。

「俺は話を聞いた瞬間、医者に走るさ。

 体が冷えきらないうちに戻ってくれよ、華琳」

「えぇ、ありがとう。冬雲」

 華琳のその言葉を背に聞き、俺は自分の部屋へと戻った。



 そう、あの時までは今回は何もしないよなとか、思ってたんだよ。

 流石に行事も立て込んでたし、天の行事に合わせて行動していたらそれこそ仕事が回らなくなる。

 そう思って俺はいつも通り軽い朝の体操を兼ねた訓練を行って朝を行っていた時、変化が訪れた。

「おはようございます。冬雲様」

「あぁ・・・ 白よぅ?」

 いつもとほぼ同じ頃合いに白陽が水桶と汗拭き用の布を持ってくる。

 だが、髪がいつもと違い、髪留めによって少し額を出すようにしていた。

「やはり、似合いませんか?」

「そんなことはない! 断じてない!!

 むしろ超似合ってる! だから今度、髪留めを買いに市に行こう!」

 が、せっかく綺麗なその姿が飾りも何もないために活かしきれていない。

くそっ、俺の馬鹿。白陽が近くにいすぎ、なおかつ物を欲しがらないからって、そう言った品を渡すことを忘れるなんて、不覚!

「・・・・」

 詰め寄った俺を呆然と見上げ、俺と目が合うとその顔が瞬時に真っ赤になった。

「あの・・・ そこまでしたいただかなくとも。

 私など着飾っても、木偶が服を着ているのと同じですから」

 今、凄く前の凪を思い出したな。

 なら、とるべき行動は一つ、無理にでも外に出そう。

 今度の休みにでも沙和たち連れて、服を選んでもらおう。俺には女物の服のこまごましたことはわからないからな。

「白陽は自覚と自信がなさ過ぎるんだよ。

 瞳も、髪も、誰に対してでも真剣にあろうとする心の在り方すら、綺麗なのに。

 それを他の者が知らないで、白陽を誤解したままなんてもったいない」

 言いながら、俺はそっと白陽の髪を撫で、青と黄の色の異なる美しい瞳を久しぶりに間近で見る。

「ほら、やっぱり綺麗だ」

「きょ、今日はこれで失礼します!」

 顔を真っ赤にしながらも、いつもと変わらない速さでその場から走り去ってしまった。

 白陽とは触れ合い程度は何度もしているが、こうしたやり取りは初めてだったかもしれない。そう考えるとなんだか俺の頬も熱くなってきて、濡れた布を顔に押し付けた。

 が、脳裏に浮かぶのは珍しく真っ赤にして照れる白陽の姿で、運動後であること以上にさっきの出来事が俺の体温を高くしている気がした。

「やれやれ、お兄さんは本当に女ったらしですねぇ」

「まったくだぜ!

 この色男が、爆発しちまえ!」

 聞き慣れたのんびりとした平坦な声と、その後に続くのは言ってる内容も声も喧しい宝譿の声だった。

「その女ったらしを惚れさせた奴らが何言って・・・」

 反論をしようと振り返ると、ツインテールの風がそこに立っていた。

 言葉を失い、手に持っていた布を落とす。

 まさか、白陽はツインテールの日を華琳に聞き、なおかつ自分の髪では結べないからあんなことをしたのか? だとするなら白陽、健気すぎるだろ?!

 今すぐに白陽を抱きしめに行きたい衝動に駆られながらも、風の似合いすぎているツインテールが俺の動きを封じてしまっている。

「おにーさーん? どこ行っているのですかー?

 帰ってきてくださいねー?」

「駄目だぜ、風。

 こいつぁ、本気で見惚れてやがる」

「それはそれは、照れてしまいますねー。いやん?」

 いつもと服装は一切変わらない。だというのに、どうして女性とは髪型一つ、衣服一つで魅力が異なるのだろうか?

 風のさらさらの髪を二つにまとめただけ、前髪は普段と変わらない。

 仕事や、生活を送るうえで人と接触しないなんて出来はしないし、今日のこの後仕事があるのなら、誰かに見せることになってしまう。

 だが、この姿を俺以外の男に見る。だと? 

 想像しただけで心がざわめき、自分勝手極まりないと自覚しているが見た奴を〆に走りたいな。

 心の奥底から湧き上って来る独占欲を押さえつけながら、俺は風を手招きして膝の上に乗せた。

「どうかしましたかぁ? お兄さん」

 わかっているような口振りで、俺はリボンをほどき、別の髪型へと変えていく。指に引っかかることはなく、それなのにさわり心地は猫の毛のように柔らかで、ずっと触っていたい衝動に駆られてしまう。

 髪の量が多いからいろいろと出来るし、とりえず大きな一本の三つ編みにしよう。

「これは俺だけにしか見せないでほしいんだよ。

 ていうか、見せたくない」

「独占欲、剥き出しかよ?!」

「俺だって、恋する一人の男だ。独占欲ぐらいあって当然だろ?」

 宝譿の直球なツッコミに俺はおもわず苦い顔をするが、とっさに思いついた反論(言い訳)を振りかざす。

「相手が多すぎる、ハーレム野郎だけどな!」

「どこでそんな言葉を拾ってきやがった?! この電波塔が!」

 俺、普段の生活になるべくカタカナも、日常的に使われてる英語もどきも使わないようにしてるにも拘らず、宝譿から飛び出したのは俺にとって最大の禁句単語(ワード)

「そうですよぉ、宝譿。

 お兄さんは、好意を持った複数の女性に囲まれているのではなく、お兄さんが好意を持った女性が我慢できなくなって傍に居るのですから。

 偶然、そこに放り投げられたわけでも、意味なく愛されているわけでもありません。あの鬼のようなしごきに耐えきり、今も努力する。そう出来た者だけが辿り着けるところがあるのです。

それに華琳様を始め、この陣営にいる誰もが優しさしかない者には惹かれはしませんよぉ?」

「褒められてる、のか?」

 若干、意味合い的に俺があっちこっちで女性を釣り上げてきたとも取れるぞ? 特に前半。

「褒めていますよ。

 お兄さんがお兄さんであったからこそ、風達は恋をして、傍に居たいと思ったのですからぁ~」

 会話をしながらも、俺の手は三つ編みを作っていく。単純作業だが、風の髪の長さでは時間がかかる。



 会話が途切れ、しばらくの沈黙と、その作業を風は何も言わず、されるがままにされていてくれた。



「やっと終わったな。

 風、もういいぞ?」

「ぐー・・・・」

 静かだと思ったら寝てるし、宝譿も風の腹のあたりで目を閉じて眠り、その姿はとても和む。

 時間が経ったとはいえ、まだ早朝。食堂が開くまでまだあるし、とりあえず風は部屋に送り届けないと駄目だな。

「冬雲殿、おはようございます」

「稟? 随分早いな?」

 風を両手で抱き上げ、立ち上がると機を見計らったかのように稟が現れた。

 いつもの髪型である結び方ではなく、髪を降ろした姿で。しかも衣服はいつもの文官服じゃなくて、何でチャイナドレスなんですか?

 赤を基調として、いっそ派手とすら言えるほど黄色や青、緑の花々が咲き誇る。そして、それが滅多に見ることのない稟の姿とあわさり、俺を魅了した。

 誰の仕込みだ?

 華琳か? 沙和か? どちらにせよ、グッジョブ!

「風を部屋まで送られるのなら、途中までご一緒してもよろしいでしょうか?」

「あぁ、勿論。

 その・・・ 髪型も、服も凄く似合ってるぞ? 稟」

「あ、ありがとうざいます・・・・」

 互いに顔を赤くしながら、稟は俺の隣でぴたりと寄り添おうとしたとき、突然手に抱いていた風が目を開き、にやりと笑った。

「奥手ですねぇ、稟ちゃんも、お兄さんも。

 見ているこちらが、じれったくなってしまうのですよ」

「風?! 聞いていたのですか?!

 というか、起きているのなら自分で歩きなさい!」

 風の言葉に稟が怒りで顔を真っ赤にし、風はそれに余裕の笑みを浮かべていた。

「せっかくのお兄さんの腕の中ですから、嫌ですねぇ。

 滅多にないのですよ、お兄さんのお姫様抱っこは」

「そんなことは知っています! ですから、羨ましいんです!」

 稟がその発言に気づいていないようで、風は俺へと目配せをしてくる。

 まったく風は、友達思いだよなぁ。

 風をおろし、油断しきっている稟を抱き上げるとその体は驚くほど軽かった。

「ちゃんと食事とってるのか? 稟。

 軽すぎて心配になっちまうぞ?」

「きゃっ? その突然すぎて・・・・ もう、きゅぅ」

 抱き上げられた稟は顔を真っ赤にして、鼻を押さえたり、とにかく顔を隠すようにして、そのまま俺の腕の中でぱたりとねむ・・・・ って気絶じゃね?!

「稟?!」

「あーぁー、嬉しさと恥ずかしさのあまり気絶してしまいましたねぇ。

 まぁ、鼻血を噴きださなくなった分だけ進歩したということで・・・

 このまま、稟ちゃんのお部屋に行って、今日は三人でのんびり過ごしませんかぁ? お兄さん」

 稟を倒れる主原因は間違いなく俺だが、それの背を押した風は悪びれることもなくそんな提案をしてくる。

 まぁ、断る理由はまったくないんだけどな。

「あぁ、今日は三人でのんびり過ごすか」

「ではでは、参りましょう」


 そうして俺の二月二日は始まり、穏やかに終わっていくのだった。


次は節分の日の番外を投稿する予定ですが、今週中に書けるといいですね・・・

蜀本編もひと段落つけたいですし、それでもリアルでテストが迫ってますし。

頑張ろうと思います。とりあえず次は節分です。



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