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突然ですが、結婚しました。

作者: 佐藤大介

突然ですが、結婚しました。


イヤイヤ、別に惚気が始まる訳じゃねえよ?なんせ、5年も付き合った彼女だからね?

そろそろキチンとしなければ、としっかり手順を踏みましたよ。浦安の某テーマパークでプロポーズ→承諾→結納→披露宴→ハワイへ新婚旅行→婚姻届提出と。

北海道出身の彼女の実家からは時々世界で一番上手い野菜や米や魚介類が届いてくるし、嫁はんは可愛らしい顔をしているし、性格も良いし、料理も上手いし、仕事もして稼いで来てくれるし、俺には勿体無い位出来た嫁はんなんですよ。

俺の両親とも仲良くやっているし、俺の実妹に関しては、妹をして「お兄ちゃん、離婚問題が持ち上がったら私は昌子さん(嫁はんの事)につくからね」なんて恐ろしい事を言わしめる程である。

ちょ、おま、何言ってんのぉぉぉおおお?やめてくんない。実の兄貴を強迫するために、中央の法科大学院まで出て、法律で飯食っている訳じゃあるめーよ?

まあ、家族の絶大な支持率を叩きだしているとしても、俺は、嫁はんに、色々言いたい事はあるのだ。

例えば―――そう、最近は他の男に熱をあげているのが気に入らない。

ミュージカル好きの嫁はんに誘われて、年末に映画を見に行きました。まあ、流石にミュージカル界の金字塔を打ち立てた名作の映画化だけあって、俺もほろりと来たよ。はっきり言えば、感動した。

だけど、その後の嫁はんの言動が気に入らん。アンジョルラスとかいう役に惚れたらしく、最近は何かというと『Do You Hear The People Sing?』を鼻歌で歌うから、俺の頭の中もそれが移ってしまった。気付くと、「フ フ フンフフンフフーン」とリズムをとっているではないか!お陰で、仕事先では『クールで孤高な課長』で通っている(んじゃないかと思っている)俺も、最近は随分と丸くなってきたのか、部下たちや、新人の子にも気さくに声をかけられる様になった。

まあ、仕事が順調にいくなら、それに越したことは無い。昔から若い女の子から声を掛けられると、最初は緊張してしまい、上手く話す事が出来なかった頃に比べると凄い進歩だ。なんせ、職場がアパレル関係な為、構成メンバーは女性の比が高い。

百貨店に勤める嫁はんとは、仕事で出会ったのだが、中高男子校出身で大学もこれまた共学とは名ばかりの女の子が少ないむさッ苦しい環境で育ったのだ。

本当に、出会った頃は、上手く話せないわ、鼻の下に変な汗かくわで、マジで嫌われないか、否、気持ち悪い人だと思われたら俺は一生結婚なんて出来ないと、壁と45度の三角定規になりながら必死になりましたよ。

嫁はんも、俺と付き合うまでは恋人がいなかったらしく、出会って1年間は「清く 正しく 美しく」などど俺の卒業した小学校の校訓の様なお付き合い。

ところが、今や「アンジョルラスが好き過ぎて、アーロン・トヴェイトが好きなのか、ラミン・カリムルーが好きなのか、もう分からないくらい好き」なんて事を臆面をなく俺に言う始末。

何たる、堕落!!

こんな事が許されて良いのか?

否、良い訳が無い!

だんだん、嫁はんの許せないところが鼻についてきた。

そうだ、ここぞとばかりに言ってやる!

うちの嫁は片付けが全く出来ない。クイックル■イパーを使おうが、掃除機ロボットが毎日せっせと綺麗にしてくれようと、この3LDKの新居に漂う生活感120%は一体何なのだ?誓って言うが、俺が1人で越して来たときはもっと綺麗だったぞ。もっと、こう、段ボールに囲まれていて、生活感の欠片も無かった!

それが、いまはどうだ?

狭い部屋に、細々とした物が溢れている!第一、嫁は、物を捨てると言う事が出来ないらしい。某テーマパークのお土産のお菓子が入っていた缶を未だ捨てられずにとってある。小さいのから、大きいのまで、全部捨てられないらしい。

では、何に使うのか?というと答えらないか、愚にもつかない答えをいう。

「いつか使うかもしれない」。

普段は聡明な嫁らしくない。それでも、空き缶の1つや2つは、中を覗いてみれば確かに中に物が入っている。それは、使用済み切手であったり、贈り物を包んでいたリボンであったり。嫁はんは、とっておいてあるリボンは自分が贈り物をするときに使うからという理由で絶対に捨てないのだ(しかし、悲しいかな。使っているのを見た事がない。何故なら、贈り物を買う時に既にギフト包装してくれているからなんだよ、ワトスン君)。

ちなみに、使用済み切手収集は嫁はんの趣味である。

普段はバインダーにファイルしてあるが、時間が無い時は、切り取ってミッキーとミニーちゃんが描かれている小さめの空き缶にまとめている。

俺には、この使用済み切手の収集という趣味がいまいち分からない。百歩譲っても、未使用切手だろう?それを、何だって使用済み切手なのかが分からないし、「この小さいのに、とっても綺麗で、素敵でしょ?」なんて言う、嫁はんのニッコニコな笑顔がまた分からん。それでも、嫁はんの熱烈な支持者である俺の親や妹も、嫁はんの切手収集の趣味を知ってからは、珍しい切手を張って郵便物を送って来るし、中には自分に来た手紙や小包の切手を切り取って送りつけてくるという忠誠ぶり。

これだけに飽き足らず、先述した愚妹などは、「お兄ちゃんに、昌子さんの爪の垢を煎じて飲ませたい」などとこちらへ攻撃を仕掛けてくる。

俺が一体何をしたよ?

今日だって日曜だと言うのに、仕事に行く嫁の為に一足先に朝起きて、朝ごはんの支度をして、洗濯物も済ませたと言うのに!!

これ程、出来た夫が他にいるだろうか?

元々、日曜日は一番好きな曜日だから昼まで寝ているなんて、言語道断。

毎週6:25分に起きて、顔を洗う。6:30からの聖闘士★矢を嗜み、7時頃起き出した嫁にご飯をよそい、ワカメと豆腐の味噌汁、焼鮭(大根おろし多め+味ポン)、温泉卵、海苔を用意しながら、一緒にソードアイスを見ながら食べる。7:30からは、キョウリュ■ジャーを見ながら嫁は着替えとメイク、俺は水筒にウーロン茶(日によって紅茶・緑茶・コーヒーなど)を用意し嫁はんのバッグに入れおいてあげる。8時前に送り出し、俺は悠々と仮面レイダー、プルキュア、トリーコ、ワンペースへと優雅な時間を満喫するわけだ。勿論この間は、洗濯機はフル稼働。10時過ぎごろ洗濯物を干して、食器を洗い、家の掃除をすれば、午前中で家事は片付く。

完ッ璧!

俺はこう見えて綺麗好きなのだ。いらないものはとっとと捨てられる。生理整頓の鬼なのだ。嫁はんと違うのだよ、嫁はんとは。俺のものは、全部必要な、意味のある、大切なものなのだ。

学生時代に留学したドイツで買い物をしたレシートの山や、色や形が綺麗なワインの空きビンや、おっと勿論、少年シャンプも最低2年分は捨てられない。本が好きだから、積み重ねられた未読の本がないと落ち着かない。それに、女には理解できないかもしれないけれど、音楽もやっぱレコードじゃなきゃ本当の良さは分からない。大枚叩いて買いまくっているレコードを嫁はんはいつも眼を細めてガン付けるけど、本心では羨ましがっているんじゃないかな。ここだけの話。


もちろん嫁はんの事は愛している。

が、もう少し片付けが上手くなって欲しいものだ。

ふぅ……やれやれ。


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