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魔法使いになれると聞いたらテンションアップしますよね?

「翔太殿は魔法に興味はありますかな?」 


 今日も日課となったピヨスライム狩りに出かけようとしたその時、ヤンバルさんが俺にそんな質問を投げ掛けてきた。


 自慢では無いが、俺はそういった妄想を過去にノート数冊分を書き綴るという黒歴史を抱えて生きているのだ。はっきり言って大好物である。


「……それは、興味はありますけど」


 飛び上がりたい程に上がったテンションを抑えつつ、俺はなるべく平静を装いつつ、ヤンバルさんに返事を返す。修行を始めてからこの三ヶ月。ヤンバルさんは御下がりにくれたショートソードでの戦い方を教えてくれるだけで、俺に魔法を教えてくれることは無かった。


 なんでも近接戦闘の基礎も無しに、強力な魔法を覚えても、冒険者としては三流もいいところだとヤンバルさんは熱く語っていたのだが、俺は最近では自分に魔法を使う才能が無いから、そんな言い方をして誤魔化しているのではないのかと勘ぐっていた。しかし、こんなことを聞いて来るということは、もしかしたらもしかするかもしれない。


「翔太殿は覚えが良いからのう。そろそろ魔法を教えても良い頃合じゃろうと思ったんじゃよ」


「ほ、本当ですか?」


「うむ。そういう訳で今日は狩りを休んで、このエッグワールドの魔法講座じゃ」


 ヤンバルさんの提案に俺は、両腕を天に突き出し、歓喜の叫びを上げた。その様子を見たヤンバルさんに若干引かれたが、そのショックを差し引いても、俺は元居た世界では使うことの叶わなかった魔法を使えるかもしれないという、事実に対しての嬉しさが大きいものだった。


「ところでヤンバルさん。俺でも魔法って使えるんですか?」


 ある程度の落ち着きを取り戻してから、俺は最大の懸念である質問をヤンバルさんにぶつける。そもそも魔法を習うことは良いのだが、元居た世界では魔法はほぼフィクション。過去の歴史では、魔法使いが居たかもしれないという話も幾つか残ってはいたりするが、それが事実かどうかは判断しようも無い。つまり俺の知る限り、元居た世界では魔法という概念は現実的な話では無かったのだ。


「何を言っとるんじゃ?日本人は例に漏れず何らかの魔法に特化しておるんじゃぞ?」


「え?」


 驚いた顔を見せるヤンバルさんに、俺もまた驚きの表情を返す。


「そういえば、翔太殿には、魔法に関してのことは何も教えてなかったから、知らないのも無理は無いかもしれんのう」


 ヤンバルさんは俺の反応を見て、肌色太陽な頭を軽く掻きながら、一つ咳払いをした。つまりヤンバルさんは俺が、日本人がこの世界で魔法を使えることを最初から知っていた訳だ。俺の方から全ての説明を聞く前に冒険者としての修行を申し出て、ひたすらに戦う術と、この世界の常識を覚えることに従事したため、魔法に関しては後回しとなってしまった部分も多々にあるが、それでも一言だけでも言っておいて欲しかった。


 ジト目で見る俺に対して、ヤンバルさんはもう一度咳払いをしてから、強引に魔法に関しての話を開始する。


「このエッグワールドには、魔素というエネルギーが空気中に満ちておる。この世界に生きる生物やモンスターはその魔素を自らの肉体に取り込み、自身の生体エネルギーと結合させて、一つの形として実体化させるのが基本的に魔法と呼ばれるものなんじゃよ」


「生体エネルギーって魔法を使う度に、体力が減るってことですか?」


「いいや。生体エネルギーは体力とは別物じゃ。分かり易く言えば気力といったところかのう」


 ヤンバルさんは気力の他にも、幾つかの例を出してくれた。それで分かったのはヤンバルさんが言う生体エネルギーとは、ゲームで言うところのMPみたいなものだということだ。


 この世界で満ちている魔素はほぼ無尽蔵で、尽きることは無いそうなのだが、生体エネルギーには限界が有り、魔素と結合させて魔法を発動させる度に、体の中の生体エネルギーは使った分だけ減ってしまうらしい。使い切っても死ぬことは無いらしいし、時間の経過と共に回復はするらしいのだが、使い果たすと完全に意識を失ってしまうので、魔法使いは自分の限界を常に把握することが重要なのだそうな。


「次に魔法の属性じゃ。魔法の属性は基本の四属性。火・水・風・土。それに、無。最後に、光・闇という特殊属性の全7属性から成っておるんじゃ」


「えっと、基本属性とか特殊属性は何となく分かるんですけど、無属性ってどういう系統なんですか?」


「それも順を追って説明しようかの。まず基本の四属性じゃが、この属性は魔法を使えるものならば、誰でも一種類は使える属性なんじゃよ。次に特殊属性の光と闇じゃ。これは基本属性と違い、使える者が極端に少ないんじゃが、特徴はどの魔法も強力な威力を誇るというものじゃ。そして最後に翔太殿が質問した無属性じゃが、これは今まで説明してきた6属性のどれにも属さないもので、基本的に魔法使いでなくても使える魔法が多いというのが特徴じゃのう」


 ヤンバルさんの魔法講座は夕飯の時間まで続いた。


 その魔法講座で覚えた魔法についての知識なのだが、まずは最初に説明された四属性。


 火・水・風・土の属性はこの世界では魔法使いであればどれか一つは扱うことの出来る属性で、逆を言えばこの四つのどれか一つを自在に扱うことが出来るのが、魔法使いになる為の条件となっているらしい。


 其々の属性には攻撃魔法と補助魔法がある。そして基本的に魔法使いはこの基本属性の内の一つしか扱えないのが常らしいのだが、中には二種類以上の属性を扱える魔法使いも居るそうだ。


 そしてこの基本属性を二つ以上持つ魔法使いだけが使える魔法に、複合魔法というものがある。


 例えば水と風の魔法を組み合わせて雷雲を作り出して、雷撃を繰り出したり、火と土を組み合わせて、堅い鉄の壁で攻撃を防いだりなど、一つの属性では成し得ない事象を起こしたり、少ない魔素で本来よりも優れた能力を発揮させたりといった応用が出来るらしい。


 次に特殊属性の光と闇についてなのだが、これは過去においても使える人の絶対数が少なすぎて、どういった魔法が使えるのかヤンバルさんでも良く分かっていないそうだ。ただ歴史上では一発の魔法が一国を滅ぼしたという言い伝えがあり、過去のエッグワールドに残る偉人の何人かはこの光と闇のどちらかの属性を持っていたのではとの噂が実しやかに言われているようである。


 最後に無属性についてだが、これは六つの属性に含まれず用途に至っては多岐に渡るとしか言いようが無い。


 そしてその魔法の多くが、戦闘用と言うよりも、生活に役立つ場合が多いというのも一つの特徴だろう。俺がこの世界に初めて来た日に、ヤンバルさんが瞬時に何も無かったはずのテーブルの上に、淹れたてのティーセットを出したりしたのも、この無属性の魔法に含まれるらしいのだ。ヤンバルさんが言うには、自分の衣類のポケットの中の空間を魔法で拡張して予め準備を整えておいたティーセットを入れて置いたとのことである。


 無属性とは一口に言っても、こういった空間を操るのを始め、身体能力を向上させたり、物の強度を上下させたり、遠くの物を浮かせたりと本当に使用用途は多く、難易度もピンからキリまで様々だ。


 なので無属性だけしか使えない人は、基本的には魔法使いとは呼ばないらしい。


 ところでこれから魔法を習う上で、自分の属性を知ることが第一の試練と呼ばれているそうだ。


 ちなみにヤンバルさんは基本四属性と無属性の五つの属性を扱えることが出来るらしい。ソコソコ名の知れた魔法使いだったとは本人から聞いていたけれど、ヤンバルさんは俺が思っている以上の天才なのではと、魔法について話を聞いた後、改めて思う。


 そして俺の使える魔法を調べた結果についてなのだが……。


 誰でも扱える無属性と、火・風という悪くは無いのだが、個人的に何と言って良いか分からない微妙な感じの結果となったのだった。

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