第四話
「……」
――魔王…もとい、ネビロスと亜種のリュイについていって早3日。リュイの我侭で今、俺たちは花畑に居るんだが……。
「わぁ…!凄く似合っているよ!!」
満面の笑みを浮かべてネビロスの頭から手を遠ざけたリュイ。彼女の頭には花冠が。
「そうか?ありがとう」
ニーラと話しているときにでは絶対に出てこない微笑を浮かべながら胡坐をかいて、立っているリュイを見上げた。彼の頭にも白い花冠。
「あの、ネビロスさん…?」
微妙な顔をしてネビロスに声をかけようとしたとき、リュイが駆け寄って座って、と合図をされた。ニーラは目が輝いているリュイに断る事もせずに大人しく座った。頭の上に乗せられる2人とおそろいの花冠。
「やっぱ、ニーラちゃんも似合ってる!!」
ニーラは、はぁ…と溜息をついた。ネビロスは遠くで奇襲の隙をうかがっていた魔物を射倒し、その場に寝転んだ。赤い髪の毛が白い花に映える。
「…だから俺にちゃんをつけるなと……」
一緒に風呂に入った時に女だとリュイにばれ、リュイがネビロスに言ったとき「端から分かっていた」と言葉が返ってきた。
「なんで?」
「性に合わん」
「じゃあ、ニーちゃん!」
『ラ』が抜けただけじゃん…と心の中で突っ込むがとりあえずスルー。
「俺と被るから却下だ」
不機嫌そうなネビロスの声が飛んできた。リュイは不満そうな顔をしてから再びニックネームを考える。
「ニーラって普通に呼んでくれれば良いよ」
「わかった!!」
「お前なんかへっぽこで十分だ」
「誰がへっぽこだ!!ロリコンのお前に言われたくない!!!」
数秒の無言の後、いびきが聞こえてきた。リュイがニーラに『ロリコン』の意味を聞くも、彼女が答えるわけも無く、適当にごまかした。
――それにしても、本当にネビロスはリュイのことを気に入っているな…。あのふざけた前髪もリュイが気に入っているから、という理由で結んでいるし。血縁関係の兄弟…ではないが、本当の兄弟に見えるな。これが魔王か……。
いつの間にかリュイは寝ているネビロスの隣に来て、その腕を伸ばさせて枕にして横になった。しばらくして聞こえてくる寝息。魔物に襲われたらどうするんだ、と思っていたニーラは欠片の周りを取り囲む薄い膜を見つけた。結界だ。ちなみにニーラはその中には入っていない。
「……俺にもかけてくれたって良いじゃんか…!」