第二十一話
「すみません、一度止まってください」
ネビロス達と離れたニーラとリュイは少し歩いた結界無いで槍をもった2人の男に行く道を憚れた。ニーラは繋いでいるリュイの手をしっかりと持つ。
「貴方のその背中のが聖剣か確認させていただきます。地面に置いて下さい」
聖剣は選ばれし持ち主、即ち勇者にしか持てない代物だ。他の人間が持とうとすれば重過ぎて持ち上がらず、大の男10人がかりでやっと運べるし、魔族なんかは即死だ(例外はいるが)。ニーラは大人しく聖剣を地面に置いた。一歩下がる様に指示され従えば、先程から何も喋ってない方の男が聖剣を持ち上げようとしたがピクリとも動かない。もう片方も試すが同じく持ち上がらない。
「本物ですね。お待ちしておりました、勇者様。ところでその子供は?結界に弾かれなかった物の、亜種のようですが」
リュイが小さく肩を跳ね上げた。鋭い全てを疑うような目がリュイを射る。それを遮るかのようにニーラが聖剣を拾ってから間に立った。
「魔物に連れ去られたところを保護し、この子の故郷まで送るだけだ。魔族の血も薄まり、既に人間と同じ能力に落ちているから危険は無い。国に入れてくれ」
男はじぃっとリュイを見る。リュイは今にも泣きそうだ。ニーラの嘘にだまされた男はリュイから視線を逸らした。
「……いいでしょう。ただし、監視を1人就けさせますがよろしいですかな?」
「構わない」
「では、入国を許可しましょう。この許可証を肌身離さず持っていてください。勇者様は万が一紛失されたとしても聖剣の有無で何とかなりますが、亜種の子は……」
男は二つの許可証をそれぞれに渡した。首に掛けなければいけない様で紐を首に通した。男が言い終わる前にニーラは手を出した。それ以上は言うな、と目で訴える。
「分かった。で、その監視とやらは何処で合流すればいいんだ?」
「門の前にも兵士がいるので、彼らに話しかけてください。監視者はそこにいます」
ではどうぞ、と道をあけられたので2人とも再び歩き出した。
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「巴か。毎度毎度ご苦労な事だな」
「今度はガーゴイルの子供のお守りですかな?保育士でも目指しているので」
皮肉たっぷりの言葉にスイレンが顔を顰める。ネビロスはそっとスイレンに結界をかけておいた。巴の背後にはネビロスの見たことの無い魔物ばかり。しかし強さはキマイラに匹敵するぐらいだろう。それぐらいの強さを持っているのならばネビロスが知らないわけが無いが、彼は知らなかった。
「知らない顔ばかりだな」
首を曲げてぼきり、と音を鳴らした。
「既に魔王ではない貴方に教える事など何もありませんよ!!さぁ、行け!!!」
巴がネビロスを指差した瞬間、巴の後ろに居た魔物達が襲い掛かってきた。その数5匹と少ないが少数精鋭、ネビロスの鳩尾に全員の武器が刺さった。しかし、血は一滴も出ない。
「…いい武器を使っているが、俺の皮膚はそう簡単に傷つける事はできない。それぐらい貴様なら知っているだろう、巴」
一応反撃するが楽にかわされる。この状態のネビロスでは敵わないと言う事だ。
「えぇ。知っておりますとも」
巴は余裕綽々に答えた。ネビロスは若干の違和感を感じる。じゃあなぜ、効かない攻撃をするのか、そう言いかけた瞬間、身体が動かなくなった。スイレンが背後で倒れる音がする。
「即効性の痺れ薬、もしくは筋肉弛緩剤か」
「……いやはや、結構な量を喰らっているのにまだ立てるとはさすがですな」
これには予想外だったらしく、巴が引き攣った笑みを浮かべている。しかし直ぐに先程までの表情に戻ると、種明かしをした。5匹の武器には強力な筋肉弛緩剤、つまり力が入らない毒が秘められている。かなり強力で、空気中にその毒を撒き散らしており、呼吸する事によって身体の中へ入るのだ。巴や5匹は既に解毒剤を飲んでいる。スイレンが倒れたのは足の筋肉も使えなくなった為だ。
「もう一つ言えば武器が皮膚に触れた事によって汗腺からも毒が入り込みますよ。貴方の皮膚は傷つけられませんから関係ないですが、あの武器によって傷つけられれば血液に乗って心臓まで行き、心臓を動かしている心筋まで止めますからね」
「なるほど。随分都合のいい毒だが、俺を動かなくして何になる?顔の筋肉を動かせると言う事は魔術は使えるということだ」
こんな風にな、と炎の息を噴出すネビロス。巴が杖を落とした。
「……あ」
「…阿呆だな、お前」




