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*第6夜*

星空の下で微笑みながら...


6.見えないプレゼント


そろそろ12月も終わりに近付く。

終わる前に、子供達にとっても大切な日がやってくる。

プレゼントを貰える日。

過去に一度、桂吾の純粋な夢をもろに打っ壊した事がある。

純粋にね...アイツが知らなすぎるから。


今夜は風が暖かい。不思議な夜。

空にはいっぱいの星達がダンスを踊る。

ダンスの曲には向いてない曲でゴメンな。


噴水のブロックに腰を下ろして彼女の隣で曲を奏でる。

リズムに乗って体を微妙に動かして微笑んでいる。

最近はタンバリンを使って一緒に曲をやってたりする。

まだまだ翠にはギターは弾けない。

物覚えはいいんだけどなぁ...。


「私本当に羽悠の詩が好き」

「そうか?」

「うん。自分で作詞作曲してるんでしょ?」

「まぁな...中3の終わり頃からだけどな、それまでは普通に歌手の曲を弾いて歌ってた」

「自分で作詞作曲が出来るなんて本当に凄いよ!詩人にもなれるんじゃない?」

「褒め言葉どうも。お世辞とも言うのかな」

「お世辞じゃないしっ!本当の事を私は言ってるの」


無機になって俺の肩をポカポカ叩く。

笑いながら痛い痛いと軽く抵抗する。

そう言っていても実は物凄く嬉しかったりする。


詩を作るのは好きだった。一度は小説に手を出したけど、ギターを弾いていると歌を作りたいと思っていた。

だから、小説はやめて作詞の道を選んだ。

作曲は...ただ何となく。

気紛れに弦を弾いてるとまたに曲になって来たり来なかったり。

大半は母さんに教わってるだけだけど。


俺の母さんはバイオリンニスト。

ピアニストでもあるが主はバイオリン。


これでも一応ピアノとバイオリンは出来る。

嗜み程度だけど...嗜みもしないか。


詩はその時思いついた言葉をノートに殴り書きして後で丁寧に修正する。

たったそれだけの事。


「そう言えばさ...明日クリスマスだね」

「そう言われてみれば...確かに」

「何か予定とかあるの?」

「何もない、夜はストリート。昼間は寝てるかな」

「ふぅーん」


彼女は首を縦に何回か振って俺を見て、少し恥かしげに言った。


「あのさ...私の為に曲を書いてくれないかな、明日のプレゼントとして」

「俺が翠の為に曲を?面倒...」

「作ってくれたら私からもちゃんとしたプレゼントあげるから」

「約束だな?」

「約束は守るよ」

「OK!明日楽しみにしてろよ?」

「うんっ!」


翠は微笑んで俺の腕を掴んで『ありがとうっ!』と。

照れながら顔を夜空に上げる。

まだ星達のダンスパーティーは続く。

曲はないのに踊り続ける。


ギターを片付け、帰る準備が整った。

俺は腰を上げて、彼女の方を向いて言う。


「送るぜ」

「あっいいよ、家近いから1人で帰れるってば」


断固拒否。

今まで一度も彼女を家まで送った事がない。

毎回毎回彼女が遠慮する...と言うよりも拒否をする。

俺が帰らないと彼女も後を向かない。

翠の後姿を見た事がない...。


今日こそは...。


「お前が拒否しても絶対に送ってく」

「...じゃあ途中まで」


観念したのか少し戸惑って答えを出す。

俺は手袋をしている翠の手を冷えた手でギュッと握って歩き出す。

勿論会話ない。無言。


もう緊張とか照れとかそんなもの何処かに飛んでいた。

総合病院が近付くにつれて段々と足取りが重くなって行く。

そして、立ち止まり...。


「此処で、すぐ其処が家だから」

「此処でいいのか?」

「うん」

「病院の近くなんだ...」

「うん、まぁね」


『じゃあね』と手を振って後姿を見せ、前を歩いて行く。

俺は翠の姿が見えなくなるまで見詰め続け見えなくなったのを確認すると重々しく後を振り返って歩き出す。

その時...。


「羽悠っ!」

「えっ」

「明日、絶対待ってるからねっ!」

「楽しみに待ってろっ!」

「ありがとう...」


消えた筈の姿がほんの少し見えて、明日の約束をする。


星達のダンスは終わっていた。

夜空の下で俺は明日の夢を見た...。


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