*第2夜*
眠りについて目覚める朝
2.昼の行動
夜はストリートライヴ...昼は極々普通の高校生。
でも学校へは行かない。行くのは定期テストの時だけ。
それでもいい点数が取れるからあら不思議。常に3位以内をキープ。
...らしい。
夜は活動。昼間は停止。
夜行性って言うのかな?こう言うの。
昼だってちゃんと動いてはいる。夜の為の作詞・作曲。
親は何も言わない。何にも...行って来ない。
出来の悪い息子に呆れたのかも知れない。
昨日の帰宅時刻は深夜1時。就寝時刻は1時ちょい過ぎ。起床時刻...10時...。
リズムの狂った生活。
けど俺にとってはこのリズムが正常。
ベッドに身を沈めて、ギターに手を伸ばす。
その時。枕の下に埋もれていた携帯電話が悲鳴を上げる。
誰だよ、と渋々電話を受ける。
「...ハイ...」
「もしー、俺!俺!」
「オレオレ詐欺?」
「んな訳ねぇーだろ!俺だよ、俺!」
「やっぱオレオレ詐欺じゃん」
「じゃねぇーつってんだろ!俺だよ!佐倉桂吾!」
「判ってるよ...煩いなぁ」
「言わせてんのは誰だよっ!」と電話の向うで激怒。
非常識な時間に電話を掛けて来たのは俺の友達、佐倉桂吾。
毎日学校に行かないので休み時間になると必ず電話かメールを入れる。
今日は電話だ。
極限られた時間の中で色々な内容を話す。
限られた時間と言っても他の時間にも入れてくるのでそう変わりはない。
悪い時は家にまで押しかけて来る...。
電話を受けて、アイツの雑談を聞き流すようにして耳に入れる。
右から入って左にバイバイ。
開いている片手を伸ばしてギターを手に取る。
「おっ!そろそろ先生が来る...から切る!じゃ」
「じゃ...」
自分がさよならを言えばすぐに電話を切るタイプの奴。
せっかく人が最後にさよならの一言ぐらい言ってやろうと思っているのに。
まぁいいやと携帯を閉じて、ベッドに放置する。
締め切ったカーテンを全開に。ベランダに出てアクビ...背伸び。
ふあぁ...と大口で大アクビ。
ふと思い出した事は...昨日の彼女の表情だった。
何度も何度も思い出す、昨日俺の歌を楽しそうに聴いてくれたあの表情。
何時もは滅多に思わない事を今思った。
早く夜になって...ストリートをしたい。