第4話 正しい勇者
第四話です。
今回は勇者視点。
彼は間違っていません。
ただ、“正しすぎる”だけです。
アルドは、違和感を覚えていた。
仲間を一人追放したというのに、胸が軽い。
本来なら迷いがあるはずだ。
あいつは長く共に戦った参謀だった。
だが今は、晴れやかですらある。
「これでよかったんだ」
口に出した瞬間、安心感が広がる。
――正解。
そんな言葉が、頭の奥に浮かぶ。
「アルド?」
ミレアが覗き込む。
「どうかしたの?」
「いや……なんでもない」
何かを忘れている気がする。
だが思い出そうとすると、霧がかかったように思考が逸れる。
代わりに、明確な指針が浮かぶ。
西へ向かえ。
魔王軍幹部を討て。
聖剣を覚醒させろ。
迷いがない。
まるで物語の筋書きがあるかのように。
「行こう」
アルドは歩き出す。
仲間たちも自然と続く。
正しい。
勇者は正しくあらねばならない。
夜。
野営地で聖剣を磨いていると、ふと記憶が揺らぐ。
崩れる城。
割れる空。
誰かの背中。
「……誰だ」
頭痛が走る。
次の瞬間、視界が白く染まった。
音のない空間。
そこに“声”が響く。
《補正を開始します》
「……誰だ!」
《逸脱値上昇。勇者の迷いを修正》
胸の奥が締め付けられる。
先ほどまでの疑問が、溶けるように消えていく。
追放は正しかった。
仲間を疑う必要はない。
魔王を倒せばすべて解決する。
《正常化完了》
視界が戻る。
焚き火の音。
虫の声。
「……俺は、勇者だ」
それでいい。
それが正しい。
遠くの森の奥で、何かが軋む音がした。
だがアルドは気づかない。
彼は“正しく”前に進む。
その正しさが、世界を壊すとも知らずに。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
補正という言葉が出ました。
勇者は選んでいるようで、選ばされている。
次回、魔王側の動きが明らかになります。
残り六十六日。




