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第3話 観測ログの番人

第三話です。


物語の裏側に少しだけ踏み込みます。

可愛い見た目の人物が出てきますが、

中身はだいぶ危険です。


今回も伏線は増えています。

王都を離れて三日。


 森の奥、誰にも使われていないはずの転移陣が淡く光っていた。


 一周目にはなかったはずの反応だ。


「……早いな」


 俺が近づいた瞬間、魔法陣が展開する。


 空間が歪み、白い光の中から“それ”は現れた。


 銀髪。

 透き通るような白い肌。

 華奢な体躯。


 どう見ても少女。


 だが違う。


「はじめまして、ではありませんね」


 声は澄んでいるが、わずかに低い。


 少年だ。


「久しぶりだな、ルシエル」


 彼――ルシエルは微笑む。


「ええ。あなたはまた失敗しました」


 痛いところを突く。


「今回は違う」


「皆さんそう言います」


 皆さん?


 その言葉に引っかかる。


「観測ログを確認しました。

 世界崩壊まで残り六十七日」


「縮んだな」


「あなたが早く動いたからでしょう」


 ルシエルは指先で空中をなぞる。

 光の文字列が現れ、消える。


「勇者は順調に補正されています。

 聖女は誤差を発生させました」


「誤差?」


「あなたと接触したことによる揺らぎです」


 小さく笑う。


「今回も世界を滅ぼしますか?」


「回収してからな」


「効率が悪い」


 即答。


 だがその瞳は、どこか楽しげだ。


「あなたは優しすぎる」


「違う。正しく終わらせたいだけだ」


「“正しさ”とは観測者の都合です」


 その言葉は鋭い。


 ルシエルは世界の記録管理者。

 物語のログを保持する存在。


 一周目、俺は彼を説得できなかった。


「今回は協力してもらう」


「拒否したら?」


「強制終了が早まる」


 沈黙。


 森の空気が重くなる。


 やがて、彼は肩をすくめた。


「……あなたはいつも、ずるい」


「褒め言葉か?」


「いいえ。事実です」


 ルシエルは一歩近づく。


 距離が異様に近い。


「滅ぼすと言いながら、救おうとする。

 そんな矛盾を抱えた人間を、私は嫌いではありません」


「なら手を貸せ」


「条件があります」


「言え」


「今回は、私も最後まで見届けます」


 観測者の立場を逸脱する宣言。


「立場が危うくなるぞ」


「世界が崩れるよりはましです」


 彼は笑った。


 可憐に。

 だがその奥に、冷たい理性を宿したまま。


「残り六十七日。

 伏線は九つ。

 致命的なものは三つ」


「ヒロイン、勇者の血筋、魔王の存在理由」


「正解」


 ルシエルは満足そうに頷く。


「では、回収を始めましょう。

 今回は――成功させましょう」


 風が止む。


 世界が、ほんのわずかに軋む音がした。


 六十七日。


 それまでに終わらせる。


 滅ぼすために。


 救うために。


ここまで読んでいただきありがとうございます。


観測ログという言葉が出ました。

気になる方は覚えておいてください。


世界は“誰か”に見られています。


次回、勇者側の補正が本格的に動きます。

歯車は止まりません。


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