第一章:追放と違和感 第1話 追放、予定通り
この作品は、よくある追放ものです。
主人公は復讐します。世界も滅ぼします。
たぶん救いはありません。
※なお、伏線は全部回収されます。
追放は、驚くほどあっさりしていた。
「お前はもう必要ない」
勇者の声は震えていない。
むしろ安心しているようにすら見えた。
ああ、そこは変わらないのか。
俺は小さく息を吐く。
「理由を聞いても?」
「足手まといだ。最近、戦闘でも結果を出していない」
嘘だ。
正確には、結果を“出さなかった”。
勇者の背後で、ヒロインがこちらを見る。
ほんの一瞬だけ、目が揺れた。
やはり覚えていないらしい。
この世界が、もう一度目だということを。
城門の外へ放り出される。
石畳の感触。夕暮れの空。
この構図も、台詞も、空の色さえも既視感がある。
崩壊カウントは、すでに始まっている。
前回は七十二日目で世界が割れた。
原因は単純だ。
伏線未回収。
魔王の出自。勇者の血筋。
ヒロインの失われた記憶。
王の隠蔽。
そして――俺の役割。
回収されない因果は歪みとなり、
歪みはやがて物語そのものを壊す。
あのとき、俺は間に合わなかった。
だから今回は違う。
「さて」
俺は城を振り返る。
追放は必要なイベントだ。
主人公が舞台裏に回るための、必須フラグ。
滅ぼす。
そう宣言することでしか、救えない。
世界を一度、終わらせる。
破綻したルートを強制終了させる。
そのためにまずやることは一つ。
「未回収の回収だ」
風が吹く。
遠くで勇者パーティーの歓声が上がる。
俺がいなくなったことで、物語は順調に進んでいるように見えるだろう。
だが、それが一番危険だ。
順調な物語ほど、崩れたときの反動は大きい。
俺は歩き出す。
まずはヒロインの記憶。
次に魔王の封印。
そして勇者の“本当の使命”。
全部回収する。
滅ぼすために。
――救うために。
第1話を読んでいただきありがとうございます。
よくある追放ものに見えたかもしれません。
だいたい合っています。
ただし、この物語は「追放されたから始まる話」ではありません。
「追放しなければ始まらない話」です。
伏線はもういくつか置いてあります。
気づいてもいいですし、気づかなくても問題ありません。
そのうち全部回収します。
たぶん。
ブックマークや感想をいただけると、
世界の崩壊カウントが少しだけ遅れます。




