第三十四節：お前を圧して打つ！
方源は耳を傾けず、一心両用で行動していた。
一方で元石から天然真元を吸収し、もう一方で空窍の様子を注意深く観察していた。
空窍内で一度低下した真元海面は、天然真元の注入が続くにつれ、ゆっくりと上昇し始めていた。
上昇スピードは緩慢だったが、方源は焦っていなかった。
修行とは積み重ねの上に成り立つもので、焦っても仕方がない。
本当に焦っているのは、むしろ屋外にいる中年の家奴だった。
約30分後、方源の青銅真元海は再び四成四の限界に達した。
だがこれで終わりではなかった。
現在の真元海は翠緑色を呈しており、これは一転初階の青銅真元に過ぎない。
方源が先に空窍の壁を温養するために使った真元は、初階真元ではなく、酒虫で精錬された中階真元だった。
「酒虫」
方源の思いが動くと、元海中の酒虫はたちまち躍動し、空中に浮かび、白い団子のように縮こまった。
シュッ。
一成の初階真元が動かされ、酒虫の体内に投入されると、瞬く間に吸い尽くされてしまった。
すると、酒虫の体表から馥郁とした霧状の酒気が発散し、一つの塊に凝縮された。
方源は再び一成の真元を動かし、この酒霧の中に投入した。
酒霧が完全に消費されると、元の一成の初階真元は体積が半分に縮小し、同時に色が翠緑色から蒼緑色へと変化した。
これが中階真元だった。
「普通の学員が修行を進めるときは一転初階の真元を使うが、俺は中階真元を使う。効率は少なくとも2倍以上高い。同時に中階真元で月光盤を駆動すれば、発生する月刃も初階真元でのものより圧倒的に強力になる」
元海全体が精錬されて一転中階真元になるまで、方源は目を開けなかった。
修行には時間の概念がなく、今や夜明け時刻になっていた。
空は純粋な黒ではなく、深い黒藍色をしていた。
月は既に隠れ、残りわずかな星だけが輝いていた。
門はほぼ一晩中開け放しになっており、木製の扉の下の角は湿って黒い水あとを残していた。
学堂の宿舍の欠点はここにある。普通の吊脚竹楼のように快適ではなく、直接地面に建てられているため湿気が多いのだ。
気づくと、方源も体に冷気が包み込むのを感じた。長時間座禅を組んでいたため、両足は少し痺れていた。
合わせていた右手を開くと、灰白色の石粉がこぼれ落ちた。
これは元石の天然真元が完全に吸収された後の残りカスだった。
「一晩の修行で、俺は計3つの元石を消費した」
方源は心の中で計算していた。
彼自身は丙等の資質しかないが、修行スピードを追求するため、常に元石で真元を補充していた。さらに重要なのは、酒虫を使って中階真元を精錬している点だ。
これが元石の消費量を大幅に増やしていた。
「昨日また一筆稼いだが、一晩で3つも元石を使う。これでは見た目は多くても、長期的な修行では持たない…だが修行のスピードと効率を追求する以上、代価は払わなければならない」
方源は再び屋外を見た。
高碗という健闘な家奴が、今や隅にしゃがみ込み、体を丸めて眠っているようだった。
「あの二転女蟲師はもう立ち去ったようだ。この高碗を残して俺を看守させてるのか。フフ」
方源の口元に冷笑が浮かび、彼はベッドから降りて静かに手足を動かし始めた。
体が暖まると、彼は宿舍を出た。
「野郎め、ようやく出てきたか。さあ、素直に降参して俺について来い。お嬢様に頭を下げて謝罪しろ」
高碗は耳を動かして方源の足音を捉え、すばやく立ち上がった。
彼の体は巨躯で、身長は方源の2倍近くあった。
筋肉隆々とし、吊り眉の下に細い目じりが残忍な光を放ち、飢えた鬣狗のようだった。
方源は無表情のまま、彼に近づいていった。
「野郎め、早く出てきてくれればよかったのに。今さら出てきて、俺がお前のためにどれだけ苦労したか知ってるか？」
高碗はほくそ笑みながら歩み寄り、意気消沈した様子だった。
その瞬間、方源は突然低い声で叫び、一気に跳び上がって両拳を高碗に向けて突き出した。
「クソ野郎、死にものぐらい！」
高碗の顔が歪み、満腹の怒りを爆発させ、砂鉢大の拳を方源に向けて振り下ろした。
この拳は力強く、空気を切って風切り音を立てていた。
方源の目は清冽な水のように冷静で、拳が迫るのを見て足元を踏み変え、高碗の側にすり抜けた。
指を伸ばし、高碗の腰の部分を蹴ろうとした。
高碗は腰を引いて防御し、方源の蹴りは左前腕に当たってしまった。
方源は指が鉄板を蹴ったような痛みと痺れを感じた。
「この高碗は凡人武芸の頂点にいる。俺は今月光盤しか使えず、他の蟲は補助できない。拳足だけでは相手になれない！」
方源の目が一閃し、即座に攻撃をやめて数歩後退し、距離を取った。
古月山荘では、古月族の者だけが蟲師として修行する資格がある。
その他の外姓者は、修行資質の有無に関わらず、开窍大典に参加する資格はない。
だがこれらの凡人は、拳足の武芸を修行することはできる。
眼前の高碗もそうだ。彼は蟲師ではないが、拳足を苦練しており、基礎は非常にしっかりしている。さらに中年という凡人にとって最も体力がある時期にある。
方源は月光盤以外に戦闘力がなく、体は15歳の少年に過ぎない。力、俊敏さ、耐久力のどれも高碗に敵わない。
高碗のような武人は、一転初階の蟲師を殺すだけの力がある。中階蟲師でも一定の脅威を与えられる。
「この野郎はひどく陰険だ！」
方源が距離を取ったのを見て、高碗の心に残虐性が芽生えた。
腰は人体の要害で、力を入れて蹴られれば致命的なダメージを受ける。力が強ければ命にも関わる。
高碗は中庭でほぼ一晩過ごし、体は寒気と湿気に包まれて反応が遅れていた。先ほどの一撃では、方源の攻撃を僅かに防いだだけだった。
幸い彼は平時からお世辞ばかりではなく苦練を怠らず、危急時には身体の本能が頭脳の反応より先に動き、危うく方源の攻撃を防いだのだ。
「もう油断できない。この野郎は狼藉者で、攻撃は凶悪だ。小少爺が2度も彼に負けたのも当然だ」
高碗は額の冷たい汗を拭き、先ほどの軽視を払拭し、方源を完全に重視するようになった。
「この野郎を捕まえれば、大手柄が取れる。お嬢様から必ず賞賜がある！一転初階の月刃など、ただの刀に過ぎない。要害に当たらなければ、皮膚を切る程度の軽傷だ」
そう思い、高碗の心は熱くなり、鉄製の鋏のような両手を伸ばして方源に飛びかかった。
パンパンパン！
方源は全く恐れずに高碗に迎え撃ち、近接格闘を展開した。拳足がぶつかり、攻防が入れ替わる音が連続して響いた。
学員たちを襲撃するときは手の平で制圧していたが、今回は高碗と戦うため、彼は手加減をしなかった。
時に指で目を突き、喉を蹴り、時に手の平の根元で顎を打ち、肘で後頭部を突き、膝で顔を突き、腕で腰を打つ。
高碗は汗だくになり、喘ぎながら戦っていた。
方源の攻撃はすべて高碗の要害を狙い、手段は凶悪で、まるで高碗を殺そうとしているようだった。
高碗は凡人で、蟲師のように身体を鉄壁にすることはできない。これが凡人武芸の限界だ。
逆に高碗は方源を殺すことができない。
方源は古月族の者で、彼を殺せば高碗は全族の怒りを買い、絶対に処刑される。その時漠家も最初に彼を始末するだろう。
だから彼の目的は生け捕りで、生け捕りの過程で方源に苦しみを与えたいだけだ。
一方は顧慮があり、一方は殺意を抱いている。結果的に戦いは方源が高碗を圧して打つ形になっていた。
