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大いなる愛を持つ仙尊  作者: 无名之辈


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第一巻 魔性不滅 第一節 身を捨てて魔心なお悔いなし

私は無数の小説を読んできたが、心の中には鬱屈がたまり続けている。

それは、見た主人公たちがほとんど運命に恵まれ、堂々とした態度で、高潔な品格を持っているからだ。

一方、悪役たちはほとんど愚かで狂乱、醜悪で、名前は響き渡っているものの、実は紙の虎である。

見た目は華やかで威勢が良いように見えても、主人公に会うとすぐ意気消沈してしまう。

そこで、心の中で思うようになった——本物の大悪役を見たい。

この悪役は独創的で、孤高で暗黒、殺伐果断で、決して足をひるませない。

自分の悪を決して隠さず、虚偽の善は一秒たりとも持たない。

その姿は一見しただけで極めて邪悪で、魔気が迫り、殺意が充満している。

最も得意とすることは、規則を踏み潰し、名門正道を斬り捨てることだ。

彼は独りで、全世界を敵に回し、恐怖を万物の生霊に広めていく。

彼こそが邪派の大宗師である——時には傲慢不遜で覇道的、時には陰険狡猾、時には冷酷無情。

彼は頂点に孤高に佇み、世の中を邪視し、彼に挑戦するすべての勇者は惨めな結末を迎える。

「方源、おとなしく春秋蟬を手渡せ! あなたに痛みを少なくさせてやる!」

方老魔ほうろうま! 抵抗するな! 今日こそ、我々正道諸派が連合し、お前の魔窟を踏み潰す! ここは既に天羅地網てんらくちもうを敷き詰めている。今度こそ、必ずお前を首と体に分ける!」

「方源、この該死がいしな魔头! 春秋蟬を錬成するため、千万人の命を奪ったな! お前は既に滔々たる罪業ざいごうを犯し、許しがたく、罄竹難書けいちくなんしょだ!」

「魔头! 三百年前、お前は我を侮辱し、貞操ていそうを奪い、一家を惨殺し、九族きゅうぞくを殲滅した! その時から、お前の肉を食べ、血を飲みたいと思ってきた! 今日こそ、お前を生不如死せいふるすいの境遇に追い込む!!」

……

方源は破れた緑色の大袍だいほうを身にまとい、髪を乱し、全身に血をまみれ、周囲を見回した。

山風が血まみれの袍をなびかせ、戦旗のようにざわめく音を立てた。

鮮やかな赤い血が、身上の数百の傷口から溢れ出ている。ただ立っているだけで、方源の足元には既に大きな血溜まりができていた。

敵が四方を囲み、生き残る道は既にない。

大局は定まり、今日こそ死ぬ運命だ。

方源は情勢を見透かしていたが、たとえ死が眼前に迫っても、依然として顔色一つ変えず、表情は平穏だった。

彼の目光は幽玄ゆうげんとし、古井戸の深潭のように、相変わらず底知れなかった。

彼を攻め囲む正道の群雄は、非ずとも一門の長者か尊い地位にある者、あるいは四方に名を轟かせる少年英傑だ。此刻、しっかりと方源を包囲し、一部は咆哮し、一部は冷笑し、一部は目を細めて警戒の光を宿し、一部は傷口を押さえて恐れおののいて見つめていた。

彼らは手を出さなかった——方源の最期の反撃を恐れていたからだ。

このように緊張な対立が三時間続き、夕日が西に沈み、落日の余韻が山辺の晚霞ばんかを燃やし、一瞬、火のように絢爛とした。

ずっと彫刻のように静かだった方源が、ゆっくりと身を返した。

群雄はたちまち騒ぎだし、一斉に一歩後退した。

此刻、方源の足元の灰白色の山石は、既に血で暗赤色に染まっていた。失血过多で蒼白になった顔が、晚霞に照らされ、忽然として艶やかな光彩を添えた。

この青い山と落日を眺め、方源は柔らかく笑った:「青山落日せいざんらくじつ秋月春風しゅうげつしゅんふう。まさに朝は青い髪で、暮れは雪のように白くなる。是是非非ぜぜひひ、成功も失敗も、振り返れば空しいものだ。」

この言葉を話す時、眼前には忽然と前世の地球での種々の光景が浮かんできた。

彼は元々地球の華夏の学生であり、巡り合わせの縁でこの世界に転生した。

三百年間を転々と漂泊し、世の中を二百年余り�縦横に駆け抜けた。五百余年の悠々たる時が、瞬きする間に過ぎ去った。

心の奥に深く埋もれていた多くの記憶が、此刻、鮮やかに蘇り、目の前に生き生きと再現されている。

「結局は失敗したのか。」方源は心の中で嘆き、少し感慨深くはあったが、後悔はしていない。

この結果は、彼も早已に予見していた。当初選択した時から、心の準備はできていた。

いわゆる魔道とは、善業を積まず、殺人放火をすることだ。天地に容れられず、世の中を敵に回しても、なお情を任せて縦横に進むことだ。

「もし剛練成した春秋蟬が効くなら、来世もまた邪魔をする!」そう思いながら、方源は思わず大声で笑い出した。

「老魔、何を笑っている!」

「皆、用心せよ! 魔头は死に臨んで反撃するぞ!」

「早く春秋蟬を手渡せ!!」

群雄が迫ってくると同時に、ドンという音がして、方源は悍然と自爆した。

……

春雨が細密に降り注ぎ、そっと青茅山を滋やかにしている。

夜は既に更け、細かな涼しい風が小雨をはらんで吹いている。

青茅山は暗くない。山腹から山麓にかけて、無数の蛍のような微かな光が点在し、まるで輝かしい光の帯をまとっているかのようだ。

これらの光は、一轩轩の高床式の吊り楼から漏れている。万灯がと言えないまでも、数千軒の規模はある。

これは青茅山にある古月山寨で、広大で静かな山々に濃厚な人の気配を添えている。

古月山寨の最も中心には、堂々とした輝かしい楼閣がある。此刻、祭祀大典が行われているため、さらに灯火が輝き、華やかである。

「列祖列宗の加護を請う。今回の啓蒙大典けいもうたいてんで、資質優れた少年たちが多数輩出し、家族に新しい血と希望をもたらすことを願う!」古月族長は中年の見た目で、両鬢に少し白髪が見え、潔白で厳粛な祭祀用の服装を身にまとい、黄褐色の床に跪き、上半身を起こし、手を合わせ、目を閉じて心から祈っている。

彼は高い黒漆の卓台前に向かっている。卓台は三層になっており、先祖の位牌が祀られている。位牌の両側には赤銅の香炉が置かれ、香りの煙がうっすらと立ち上っている。

彼の背後にも、同じように十数人が跪いている。彼らは広い白い祭祀服を着ており、いずれも家族の元老や取り仕切り役で、各方面の権力を掌握している。

祈りを終えると、古月族長が率先して屈んで、両手を平らに敷き、掌を床にしっかりと押しつけて頭を下げた。額が茶色の床に当たり、そっと「ポンポン」と音がした。

背後の元老たちは皆厳粛な表情を浮かべ、黙って彼に倣った。

一時、一族の祠堂の中は、額が床に当たるささやかな音だけが響き渡った。

大典が終了すると、众人はゆっくりと床から立ち上がり、静かに厳粛な祠堂から出ていった。

廊下では、元老たちは黙って一息つき、雰囲気が一転して緩んだ。

議論の声がだんだん高まってきた。

「時間の経つのは本当に早いね。あっという間に、一年が過ぎてしまった。」

「前回の啓蒙大典は昨日のことのように、まだ鮮明に思い出せるよ。」

「明日が一年に一度の啓蒙大典だ。今年はどんな家族の新しい血が輩出されるだろうか?」

「はあ、甲等の資質を持つ少年が出てくれるといいのだが。我々古月一族は、もう三年もそんな天才が出ていない。」

「その通りだ。白家寨や熊家寨はここ数年、天才が相次いで出ている。特に白家の白凝氷は、天資が恐ろしいほど優れている。」

誰かが白凝氷の名前を挙げたと思うと、元老たちの顔に自然と一筋の憂いが浮かんだ。

この子の資質は極めて優れており、わずか二年で三転蠱師まで修行を積んだ。若い世代の中では、間違いなくトップクラスだ。年上の世代でさえ、この新進気鋭のプレッシャーを感じていた。

日を経ていけば、彼は必ず白家寨の中心的な存在になるだろう。少なくとも一人前の強者になるはずだ。この点について疑う人は誰もいなかった。

「だが、今年啓蒙大典に参加する少年の中にも、希望はないわけではない。」

「そうだ。方の一門から天才少年が出ている。三ヶ月で話せるようになり、四ヶ月で歩けるようになった。五歳の時には詩や詞を詠むことができ、頭がいいし、才能にあふれている。惜しむらくは両親が早く亡くなり、今は母方の叔父と叔母に養育されている。」

「うん、早慧で、しかも大きな志を持っている。ここ数年、彼が作った『将敬酒しょうけいきゅう』『詠梅えいばい』『江城子こうじょうし』も聞いたことがある。本当に天才だ!」

古月族長は最後に一族の祠堂から出て、ゆっくりと戸を閉めると、廊下で元老たちの議論の声が聞こえてきた。

瞬く間に、元老たちが此刻議論しているのは、古月方源こつげつ ほうげんという少年だと知った。

一族の長として、優れた実力を持つ子弟たちに自然と注目している。そして古月方源は、若い世代の中で最も優れ、輝かしい存在だった。

経験によれば、幼い頃から見たことを忘れない、あるいは成人並みの力を持つなど、天赋の異禀を持つ者は、どれも優れた修行資質を備えている。

「もしこの子が甲等の資質を持つと判明すれば、しっかりと育成すれば、白凝氷はくねいひょうに敵わないとも限らない。たとえ乙等の資質であっても、将来必ず一人前の存在になり、古月一族の旗印となるだろう。だが、このような早慧な子が乙等の資質とは思えず、甲等である可能性が極めて高い。」この思いが生まれると、古月族長の口角が自然と少し上がり、ほんのりと笑みを浮かべた。

すぐに、咳を一つして諸元老に言った:「諸君、時刻が遅い。明日の啓蒙大典のため、今晩は必ずゆっくり休んで、精神を養ってください。」

元老たちはこの話を聞いて、皆少し唖然とした。お互いを見る目に、ほんの一筋の警戒心が隠されていた。

族長の言葉は含蓄的だったが、誰もがその真意を深く理解している。

毎年、これらの天才な後輩を争い取るため、元老たちは顔を紅潮させ、流血までするほど争っている。

確かに、十分に精力を養い、明日こそ一争しようと思うのだ。

特にその古月方源は、甲等の資質である可能性が非常に高い。しかも両親が早く亡くなり、方の一門に残された孤児の一人だ。もし自分の一門に引き入れ、しっかり育成すれば、自らの一門が百年間繁栄し続けることを保証できる!

「だが、丑い話は先に言っておく。争うなら堂々と争うべきで、陰謀策を弄して家族の団結を損なうことは許さない。諸元老、必ず心に刻んでください!」族長は厳しい口調で注意した。

「不敢です、不敢です。」

「必ず心に刻みます。」

「これで失礼します。族長閣下、お止まりください。」

元老たちは思い思いに心を込め、一々引き上げた。

やがて、長い廊下は寂しくなった。春雨が斜めに窓から吹き込み、族長はゆっくりと足を運んで窓辺に立った。

すると、口いっぱいに清新で湿った山の空気が入り、心まで沁みるようだった。

ここは閣楼の三階で、族長が見下ろすと、古月山寨の大半が一望できた。

此刻は深夜だが、寨の大半の家にまだ灯火が点っており、普段とは大きく違っていた。

明日が啓蒙大典で、それは一人一人の切身の利益にかかわる。興奮と緊張の雰囲気が族人たちの心を包み、自然と多くの人が寝付けないのだ。

「これが家族の未来の希望だろう。」眼中に点々とした灯火が映り込み、族長は深くため息をついた。

その時、同じように一対の明るい瞳が、静かに深夜の点々とした灯火を見つめ、複雑な思いで満ちていた。

「古月山寨……これは五百年前?! 春秋蟬しゅんしゅうせん、本当に効果があったのか……」方源は目光を幽ませ、窓辺に立ち、雨風が身に打ち付けるのを任せていた。

春秋蟬の働きは、時を逆転させることだ。十大奇蠱の中で第七位にランクインするだけあり、もちろん並大抵のものではない。

簡単に言えば、それは生まれ変わりだ。

「春秋蟬を使って生まれ変わった……五百年前に戻ってきた!」方源は手を伸ばし、自分の若々しくて幼さが残る蒼白な手のひらをしっかりと見つめ、それからゆっくりと握り締め、この真実感を力いっぱい感じ取った。

耳元には小雨が窓戸に当たるささやかな音が響き、彼はゆっくりと目を閉じ、しばらくして開けると、ため息をついた:「五百年の経験……まるで夢のようだな。」

だが彼ははっきりと知っている——これは決して夢ではない。

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